不完全の理由
「「おぉ……」」
すっげぇ、今この島ってこんな感じになってたんだ……
「いや、なぜハチ君まで驚いているんじゃ?」
「僕もここ使ったのは初めてなのと、今の島ってこんな状態だったんだなぁって。これまた凄い状態だなぁ?」
大分キッチリと区画分けもされてるし、自然もあるけど、隠しきれない部分もあるなぁ……
「し、島と言っていた……よな?」
「まぁ、最初はただの島だったんですけど、色々と考えた結果。最終防衛ラインとして島自体をオートマトンにして逃げられる様にって、提案したら本当に出来ちゃった奴ですね」
「……」
絶句しちゃったよ
「のう、過剰戦力って言葉は知っておるかのう?」
「まだ足りないと思ってるからヨーランさんに協力を頼んだって事覚えてます?そもそも、この子が起動してしまった時点でこの島はおしまいと言っても良いんです」
島が起動してしまえば確実に崩れてしまう物や使えなくなる物は出てしまうだろう。空島も巨大戦艦で起動させてしまえば上の物は全て無くなると言っても良い。だから状態としては似ているけど、この最終手段を使ってしまうという事は今までの暮らしを全て消すと言っても良い物だ
「皆の暮らしを守る為に、この最終手段を使わない為にヨーランさんの技術を学びたいんです」
「そうか……」
オートマトン達の武装がその場で変更する事が出来るなら、戦える相手だって増えるだろう。大型武装をその場で取り出して使用する事だって出来るなら、機動力だって上がるだろうし、機動力が上がれば戦闘能力だって向上する
「そうだな。アイテムバッグの本質は物を運ぶ事。その物が食べ物であったり、素材であったり、武器であったり……使う者によって使い方が変わるだけ。こちらがとやかく言うのもお門違いか。それに、今回教えるのもアイテムバッグとは名ばかりの物だからな」
そういえば不完全なアイテムバッグって言ってたっけ
「そうそう、気になってたんですけど、その今回教えてもらえるアイテムバッグと普通のアイテムバッグってどう違うのかそろそろ教えてもらえませんか?」
未だにどういう違いがあるのか分からないからそろそろ教えて欲しい
「そうじゃな……アイテムバッグとは異空間に物を仕舞うからある意味防犯にも役立つのじゃ。だが、今回教える物はその点では少し心配がある物じゃが……ここなら何の問題も無いじゃろう」
なるほど……盗まれる心配が無いとかの話を聞く限り、アイテムが何処かのタイミングで盗られる可能性もあるのか
「こちらで何か準備する事とかありますか?」
「今の所特には無いのう。まずはどういう理屈かだけを教えよう」
教わるにしても、まずはどういう原理なのかとかを知りたい
「今回教える物は繋ぐ所は異空間ではない。倉庫と袋を繋ぐのだ」
ほう?それは中々便利じゃないか?
「今便利だと思ったじゃろう?じゃが、話はそう簡単ではない。物を入れる場所が有っても手が届かない。港町の倉庫と袋を繋いだとしても、その倉庫に手を入れられるのは片手だけじゃ。手の届く範囲に物があったとしても倉庫全体の物を掴める訳ではない。勿論、アイテムバッグと同じく時間の影響は受けるから食べ物等を入れていても冷めるし腐る」
「なるほど……だから、繋ぐ所はこの世界の何処かと繋ぐけど、それはあくまで通り道を作るだけで思ったほど便利じゃないと言いたいんですね?」
確かに、インベントリとかアイテムバッグって欲しい物を取れるけど、仕舞っている所まで腕を伸ばして取るというよりは、欲しい物の方が手の届く範囲まで来て取れるって感じなのかもしれない。それが出来ないとなると、中々使い勝手は悪いと言うのも納得だ
「そうじゃな」
「となると、この島の武器庫と不完全なアイテムバッグを繋げば一応は武装の交換が可能ですよね?」
「じゃから、手が届かないと……」
「ここに居るオートマトン達は皆が繋がってます。だから、戦場で欲しい物があったとしたら、武器庫に待機しているオートマトン達が欲しい物を送る事が出来ます」
倉庫内に手が届かないのであれば、倉庫側で欲しい物を突っ込めば良い
「なるほど……それならばアイテムバッグと同等……いや、アイテムバッグから自動で出す事も可能になるやもしれん。そうなると不完全なアイテムバッグとアイテムバッグの実用性が反転するやも……」
皆が繋がっているオートマトン達だからこそ出来る連携。戦う時は島全体で戦うのがオートマトン流って事に出来るかも
「なるほど……そのような事が可能になるのであれば、我々の兵力運用計画も更に新しいパターンが可能になるかもしれません。そうですね……例えばですが、このような形式等如何でしょう」
そう言って、オートマトンさんが操作して魔力プロジェクターで何か映し出す
「これは?」
「剣や銃と言った武装がこちらの回転体に入っています。必要に応じてこれを回転させ、必要な武装を繋いだ先に射出するといった装置になります」
なるほど……これは面白い装置だな
「どの程度そのアイテムバッグが作れるのか分かりませんが、作れる数が戦力増強に繋がる可能性があります。が、あまりに多すぎると良くないかもしれません」
「ほう……素晴らしい。力の危うさまでしっかり理解しているとは……これはしっかりと伝授せねば礼儀を尽くせぬな。是非君達にも教えさせてくれぬか?」
おぉ、オートマトンさんがヨーランさんの信用を勝ち取った




