最強に頼れる人
「あっ、ハチさん!今お時間大丈夫ですか?」
「あれ、チェルシーさん。どうかしましたか?何かあるならメッセージをくれたら良かったのに……」
「あの、ハチさん……メッセージ送ってます……」
「ん?あっ……」
しまった。普通にメッセージ来てるわ。時間的に特訓してる最中だから……これは、やっちまったなぁ?
「まぁ、ハチさんは色々やってますから応答出来ない事はあるでしょうから気にしてませんが……」
「いやぁすみません。えっと……イベントに関してですよね?」
見逃したメッセージを確認すると、『イベントについてのご相談』と書いていたので、そういう事だろう
「はい、もうすぐ始まるので、開会式とかどうするのかなぁって……」
「あぁ、開会式は……いや、堅苦しい挨拶とかはやらない方が良いかな。どうせならちょっとしたお楽しみが有る位の方が良いですよね?」
整理券みたいなの配ってその番号で福引みたいな事をしたら良いかな?
「え、お楽しみってハチさんが直々に戦うとかそういう……」
「なんでそんなバトルジャンキー思考なんですかね……普通に表向きは整理券配布みたいな事をして、その番号を使った宝くじじゃないですけど、番号が当たった人にはミスリルプレゼントとかそのくらいの軽い奴で……」
「あの、ハチさん。ミスリルプレゼントは全然軽くないです……」
「え?」
「え?」
うっそ、今のミスリルとか割と無限資源に近い扱いなんだけど……
「良いですかハチさん。現状ではプレイヤー全体の平均レベルが上昇しています。これはまぁゲームとして当然の事です」
それはそう。そのゲームをやる人達全員が「俺は低レベルクリアを目指すぜ!」みたいな人でもない限り、レベル制のゲームでプレイ時間に応じてレベルが上がるのは当然の事だ
「それはそうだね」
「そうなってくると、装備品も切り替わって来るものです。最初は皆鋼の剣とかでキャッキャ言ってましたが、すぐに魔法剣だの、よりレアな鉱石や魔物武器を使う様になってきます」
それもそうだ。RPGで先の街に進んだら前の街よりも良い武器が売ってて買い換えて強くなる。これもまた「俺は初期装備でクリアを目指すぜ!」みたいな人でも無ければ武器防具の更新をするのも当然の事だ
「確かに」
「それで、今ミスリルって下の方はミスリル武器の為にお金を貯めてるし、上の方は素材として利用する為に集めてたりするんですよ」
僕の所はミスリルを建材に使ってるなぁ……
「あぁ、そんな状況でミスリルをただで何人も入手出来たらマズイって事ですか」
「下手すると暴動……いや、ハチさんの居るこの島で暴動を起こす事は無理か。意外と何とかなるかも?いやでも、地上に戻ってからが危険になるかも……」
となると、ミスリルを送るにしても何かしらの方法で隠して渡す方法が良いのか
「よし、それじゃあ開会式でのくじの報酬はお人形ポーチにしておきましょう。雲毛を使ったふわふわなお人形ポーチとその中にミスリルを突っ込んでおけば外からじゃ分からないでしょう」
雲毛のポーチ……一応、あの人にも協力要請を出してみるか。時間無いけど、断られたら、オートマトン島の紡績機とか使って何とかしよう
「なんか時代劇の山吹色のお菓子みたいな発想ですね……」
「まぁ、別に賄賂を渡す相手でも無いですけど……ちょっとメロにゃんさんにポーチを作れるか依頼してきます」
依頼する前に一旦紡績機とか使ってから行こう。手土産は大事だ
「これまたビッグな人が……」
「それじゃ!行ってきます!」
さて、軽くイメージしたデザイン画を持っていざメロにゃんさんの下へ!
「こんちわー」
「あらぁ!ハッちゃんじゃない!いらっしゃい」
おぉ、今日はピッチピチの真っ赤なチャイナドレスか。ムキムキの筋肉とのコラボレーションでまた破壊力が高い漢女スタイルだ
「メロにゃんさん。ちょっとご相談したい事があるんですけど……」
「あら、今日はどんなご依頼かしら?」
「ちょっとザックリした物にはなっちゃうんですが、こんな感じで雲毛のふわふわさを活かした羊のポーチって製作可能ですかね?」
クラウディアシープをそのまま小さくした様なポーチ。人は選ぶだろうけど、見た目的には結構可愛いと思う
「あらあら、これまた可愛らしいデザインね。まぁ、出来るわね。いくつ欲しいのかしら?」
「とりあえず10個程欲しいんですけど……僕が開催するイベントのオープニングイベントでビンゴの商品みたいにしようかと思って……割と急ぎなんですが、どうかお願い出来ますかね」
「10個……ハッちゃんの所から雲毛を回してもらえるとして、確かイベントって本当にあとすぐだったわよね……いっつもギリギリで掛けこむのは感心しないけど、頼ってもらえるのは嬉しいわ。良いわ、それ受けるわ」
いやぁ、服飾関係でこれ程助かる人も居ない。やっぱり度胸も愛嬌も備えたメロにゃんさんは最強だなぁ
「そんなメロにゃんさんには一応、僕の所で作った布をプレゼントしますよ。まだ試作品なんですけどね?」
そういって、ミスリル糸と雲毛で作った柔らかさと丈夫さを兼ね備えたハイブリッドクロスを渡す。流石にバニシングクロスは見えないからダメだけどね
「な、ナニコレぇ!?」
いやぁ、喜んでもらえて何より




