(過去×未来)+今
「っ!」
頭の中を電流が駆け巡る様に、衝撃が走る
「……出た」
両手から白と黒のオーラが出て来た。間違いない。これはあの時使った物だ
「この感覚……絶対逃がすな……」
パラドキネシスを展開する事が出来た。でもこのままではまたぶつかって消失してしまう。だからこそ……
「僕の力を抑えろ……力を出しつつ、閉じ込める……」
過去と未来の力を現在の力で包み込む。逃がさない様に、ぶつからない様に、過去と未来を繋げる現在の力で干渉を防ぐ
「今の目標は……この力を出し続けて……少しでも、この感覚を……覚える!」
追い込まれた時に使える力は強力ではあるんだろうけど、使いこなせるかどうかは話が別だ。だから僕がやるのはパラドキネシスをぶつけて相手を消滅させるのではなく、左右別々に使って白と黒の能力をしっかり使用する事を目標として動こう
「黒は攻撃的……白は守備的……」
大体の性能としては黒が攻撃性能が高め、白は守備性能が高めという事は分かってる。ここから更に色々探る為には気絶なんてしてられない。知りたい。もっと知りたい。この力は他にどんな力が有るんだ?
「刺突、斬撃、打撃……繊細さもしっかりある。やっぱり、黒のオーラは深淵と同じ……いや、違う?」
一旦黒のオーラを使う為に、黒側の真淵を解き、使用してみたけど……もしかして
「これは……試してみるか」
黒のオーラを使った攻撃は確かに強力ではある。が、これってオーラだし、敵の攻撃を受け止める事も敵自体を透過する事も出来る
「多分……こう?あれ?」
その辺の攻撃して来る触手を相手に黒のオーラを使った攻撃をする。ただ、少し力の入れ方が良くなかったのか、手前の触手は透過して、奥の触手を吹き飛ばした
「思ってたのと、違う動きが……」
透過と攻撃が同時に発動した?いやでもこれは……
「今のは……」
黒の力は深淵に似ているけど、これはやっぱり少し違うみたいだ。この透過する力。これってつまり
「防御……無視?」
攻撃とすり抜けが可能であれば敵の防御を無視した攻撃が可能になるだろう。そして、僕には称号の【オーガン・ブレイカー】が有るから、部位破壊的な事もしやすくなってるから、内臓破壊に更なる磨きが掛かるかもしれない
「というか今、頭痛がそこまで酷くない……?」
確かニャラ様によってここの強度が上がっているハズなのに、多少軽減されてる気がするのは……白の力のお陰か?何か吸われてる感覚も軽減されている気もするし、これはドレイン系に耐性とかもあるのか?
「僕が死ぬ可能性もあるけど……やってみる価値はある。【アビスフォーム】の感覚もまだ覚えてる……一歩進む覚悟を持て」
白と黒が交わってしまえば消滅してしまう。でも、これが出来れば僕もまた新しい1歩が踏み出せる気がする
「僕なら、出来る!」
右半身に黒いオーラを、左半身に白いオーラを纏わせる。そして、その白と黒のオーラが交わらない様に体の正中線を通す様に真淵で区切る
「意識はしっかりと、思考は止めずに、白と黒の力を活かすんだ。片方だけ使うなんてもったいない!」
黒いオーラを纏って触手をぶん殴り、白のオーラで防御。まずはこれが基本の運用。これは変わりない
「でも、今の状況なら……あれが出来るだろう」
黒のオーラと白のオーラ。その2つを手から伸ばし、触手の中にまで伸ばし、力を入れる
「装甲を無視した内部への攻撃。それと、オーラの硬質化というか、敵内部で防御する事による捕縛……あとは……マルチタスクの意識を更に高めて……」
左右のオーラの維持に加えてオーラが交わらない様に真淵も使う。このマルチタスクに更に加えて……
「ぐはっ……まだダメ……か」
更に追加の事をしようと思ったけど、その前にオーラの区切りに漏れが発生してしまい、背中のほんの一部が消滅した。これが頭だったり、心臓付近だったら一発アウトだっただろう。今回は運が良かった……
「ってー!苦ぇー!」
背中の一部が消滅した事で、左右に展開していたオーラが霧散してしまい、それまで抑えていた負荷が一気に来た感覚を最後に気を失ったみたいだが、戻って来た時も背中の一部が消滅した状態だったので、すぐに野戦生薬を飲んで回復する。【レスト】や【バリアント細胞】で傷はすぐに修復出来るだろうけど、ある意味戒めの為にもここは野戦生薬で回復する
「ちょいちょい、ハチ君。怪我するなんていったいどんな事を……」
「モルガ師匠!なんか掴めた気がします!でも、今の僕じゃまだ完全には扱えない。またニコラ師匠と一緒に僕の訓練に付き合ってくれますか?」
「まぁまぁ、それは良いけど……いったい何をしてるんだい?」
「力の再確認。ですかね?」
ピンチの時しか使えない。なのに、使用したらよりピンチになるかもしれない力。だけど、形勢逆転する位の強力さも秘めている。こんなの使いこなせる様に努力しないと勿体無い!完全じゃなくても今の僕はパラドキネシスを扱える様になってきている。僕にはまだこんな力が眠っていたんだ!
「ちょいちょい落ち着いて。それはそうと、お客さんが来てるよ」
「え、分かりました。行ってきます」
折角訓練を楽しんでたのになぁ……




