フライングメタラーと遊ぼう
「鍵が開いたみたいだし、早速開けてみますか」
重たいその扉をゆっくりと開く。この中には何が有るんだろう?
「え、まさか……」
扉を開くと、白銀の球体があった。この球体はいったい……
「ぐにょにょ!ぐーにょ!」
「あ、ちょっと」
扉が開いた事でさっきまで一緒に遊んでいた少し暗い色合いのフライングメタラーがその球体を包み込む
「ぐーにょぉ!」
「うおっ、眩し!」
球体を取り込んだフライングメタラーはその体を発光させ、光で姿は見えなくなる。だが、一応オーラでその形が徐々に変わっていく様は何とか知覚出来る
「終わった?」
「ぐ、ぐにょ……あ、あー……」
おいおい、マジか?人型に近い状態だけどまさか……
「あ、あいがとー」
「ど、どういたしまして?」
あの状態から喋れる様になっちゃったよ
「えっと、もしかして、さっきの球が君の物だったの?」
「そうあよー」
「そうかー。なんでこの中にあったんだろう……」
まさか封印されてたとかそういう物じゃないよな?
「君って今何かしたい事とかある?」
とりあえず意思の疎通が楽になったから何がしたいのか聞いてみる
「いまはー……もうすおしあそいたいー!」
「そうかー。じゃあもう少し遊ぼうか」
姿が変わり、人型になったからさっきよりも遊びの幅は増えるし、体を動かす事で、使い方が分かってくれば喋り方も少しずつ良くなるかもしれない
「それで、次はどんな事で遊ぼうか?」
「おあかせー」
お任せ……かな?
「そうだな。それじゃあ、だるまさんがころんだとかが良いかな?僕がこの壁に向いてだるまさんがころんだって言うから、最後のだって言った瞬間に動きを止めて。そしたらまた後ろを向いてだるまさんがころんだって言うから、また近付いて、僕にバレない様に接近出来たら最後にタッチして終わり。分かった?」
「わあったー」
よしよし、それじゃあ早速やってみよう
「行くよーだるまさんがころんだ」
「……」
ちゃんと止まってるな。僕の言ったルールをしっかり理解する知能もあると言うのは流石だ
「オッケー。だるまさんがころんだ」
「……」
小さいから進むのは遅めだけど、しっかり近寄りつつ、動かない様にしている
「それじゃあ……だるまさんが、転んだ!」
「……!」
緩急を付けたらちょっと止まり切れてなかったけど、まぁ最初はこんな物だろうし、見逃してあげよう
「はい、だるまさんがころん、だ!」
「……」
緩急を警戒して少ししか進まない。良いね。賢いじゃないか
「だるまさんがころんだ」
「……」
「ん?」
結構近くまで来たけど、なんだか少し縦長になって来た。小さい方が動きやすいと思うんだけどな……
「だるまさんがころんだ」
「……」
ほう?面白い。そう来たか。ならやれる物ならやってみろ
「だるまさんがー」
掛かって来いと言わんばかりの溜めを作り、一気に僕らの距離を詰める
「ころんー」
「……!」
「だ。はい、君の負けだ」
「な……ぜ……」
さっきまで楽しく遊んでいた仲だが、流石に僕を殺そうと考えてるなら話は別だ。自身の形状を変化して包丁のっぽい部分を作り、それで僕を刺そうとしていた。それはタッチじゃないねぇ?
「確かに君は最初遊んだ時はもっと純粋だった。それから人の形状を取り、もう一度遊ぶ時、確実に君にはさっきよりも知性を感じたが、やってる最中になーんか悪い感情も混じってるなぁって感じたんだよねぇ?」
「……」
いや、普通にあの状況で縦長になるのは怪し過ぎる。一見友好的に見せかけて襲って来る典型にも見えたぞ?
「それに、あの球を吸収してから急に知性が出た感じだったし、もしかして君ってなんかの実験で人間の体を捨てたとかそう言う系?」
「なっ!?何故分かった!」
おぉ、流暢に喋れるじゃん
「別に、何となくそんな感じかと。永遠の命とか言って失敗したパターンの奴かなって」
「ふっ……笑いたければ笑え。人間の体を捨て、永遠に生きる。そんな幻想を掴もうとして夢破れた者だ。生き物としても中途半端で万が一の時の為に取っておいた固体化した魂も幼児化した思考では扉も開けられず、このまま朽ち果てるまでどうしようもないと思って居た所にお前が来た。体を乗っ取ってやろうと思ってもそれも出来なかった。殺すなら殺せ。それで楽になる」
なんか勝手に話してるけど、別に僕としては殺すつもりは無い
「結局の所、どうしたいんです?人に戻りたいのか、それとも、その体をどうにかしたいのか」
「ん?襲った俺を殺さないのか?」
「まぁ、やろうと思えばいつでも出来るでしょうけど、それよりも僕はその経緯の方が気になるんで」
こうなるまで生にしがみつくって、人の身を捨ててまでやりたい事でもあったんじゃないのか?まさかただ死にたくなくてこんな大胆な事をしたのか?
「経緯……経緯か。俺は……」
おっ、これは聞き出せるのか?
「俺はスライムの研究をしていて、スライムの多様な変化についてそれはもう惹き付けられる様に研究に没頭していた。だが、沢山研究したくても病に侵された俺の体は待ってはくれなかった」
ほほう!そういう系でしたか!




