制約戦
「この辺ね。さぁ、どうかな?」
偽食の宝呪と呪いの宝珠。その2つが共鳴している様な気もする。さて、どうなるかな?
「おぉ……」
2つの宝珠が宙に浮き、地面から紫色の禍々しい気配を吸っていく。それと同時に凶具の他の皆も人化して、手を向けて何か出している。こっちもまた何とも禍々しい黒っぽいオーラを放出してるなぁ……
「どうなるどうなる……?」
あの宝呪がどういう変化を起こすのか。モノとレジーの時と何か違いがあるのか。その辺も気になるなぁ
「「「グルルルル……」」」
「ん?」
何かが近寄って来る気配。凶具を作ってる最中だけど、なんだ?
「「「グワゥ!」」」
「うわマジか!?ここで来ちゃう?」
地獄に居ても何ら不思議ではない存在だが、いざ対峙するとデカいし、中々に威圧感がある。それに、この場で襲われたとしても倒していいのかちょっと微妙ではある
「3つ首の地獄の番犬と言えば、君だよなぁ?」
地獄の番犬であるケルベロスが僕らの所にやって来た
「でも君は入口に居るべきでしょ!?」
地獄の番犬は冥界の入口とかに居るのが普通じゃないのか?
「あれ、そう言えばメリアさんから貰った狭間の通行手形で見た犬小屋みたいな冥界の門ってもしかしてケルベロスの死神さんとかの可能性もあったのかな?」
「「「グワァァ!」」」
うっひゃ~。このケルベロスは話が通じないタイプかぁ……これはどうしよう?倒す事を目的にした方が良いのか、あっちが完了するまで時間稼ぎをした方が良いのか……
「悪いけど、皆の安全を優先させてもらうよ!」
多分、時間稼ぎをしようとするんじゃなくて本気で倒しに行く気持ちで行かないとダメだろうな。甘い考えは捨てよう
「一歩も退かない」
ただの【受け流し】ではダメだ。僕の後ろに攻撃は行かせない。なんだか皆黒いオーラを出してる間は動けないみたいだから僕がこのケルベロスから守らなければ他の誰も守れない
「今はそれは、ダメ」
「え?」
シスター服で【精神防壁】を出そうとしたらモノさんに止められた。もしかして、この凶具製作中って聖属性とかNGだったりするのか?
「今回は、ダメ」
「了解です」
モノさん曰く、今回はダメらしい。地形的に何かやって良い事と悪い事とかあるのかもしれない。で、今回はシスター服はダメと……これ結構難しくないか?シスター服の【精神防壁】が使用禁止となると、防御がかなり厳しい事になると思うんだけど……
「やるしかないよな」
今まで頼っていたシスター服に頼らない防御……新しい挑戦か
「吹っ飛ばされてもすぐに戻る……!」
例えあの前足で吹き飛ばされてもすぐに皆の前に戻らないと守り切れない。これはちょっと今までとまた違った難しさがあるな……
「「「グアゥ!」」」
相手の噛み付き攻撃に対して、中央の顎にアッパー。だが、これではまだ止まらない。両サイドから迫る噛み付きは【ダブルジャンプ】を使って躱す。後ろに流せないのなら上に向かって流せば良い
「ほらこっちだ!」
「「「ギャウ!」」」
【ラフライダー】の効果でケルベロスの体を走り、背後にあるごつい首輪に繋がった千切れた鎖を掴んでロデオだ
「頭が3つあろうと、骨格の基本が犬なら上は向けないってな?【ジェミニ】」
中央の頭、左の頭、右の頭を頭の上を飛び交って、他の頭で自身を攻撃させる。ついでに分身する事で僕の次に何処に飛んで来るかとかも混乱させる
「「ほらほら!【イリュジオ】」」
幻覚も混ぜて、体の周りを飛び交う。きっとハエとか蚊みたいに鬱陶しいだろう。だがそれで良い。まずは完全に僕に狙いを絞らせてからだ
「一応……ダメージ自体は入ってるっぽいけど……まだ足りない。【スコピオ】【ダメージトリガービート】」
ダメージを受けてランダムにステータスが上がる【スコピオ】に、ポリゴナルリングのダメージを受けると5秒毎に全ステータスが上昇する【ダメージトリガービート】連続攻撃で威力が上がる【ヒットボルテージ】も良いが、やっぱり回避と一撃が大事な僕にとっては全ステータスが上がるこっちの方が良い
「コイツ……さては自動回復か耐性持ちか?」
地獄の番犬ケルベロスを幾ら殴っても全然倒れる気配がない。結構良い一撃は入れてると思うんだが……自動回復か、物理に耐性でも無ければこのタフさは通常のボス以上の強さだろう
「なら、こっちか!」
服装を執事服に変更して、攻撃に属性を乗せてみる。これなら物理耐性があったとしても多少は通る様になるハズ……
「……これ、変わってるか?」
雷、炎、氷、風。属性を変えて攻撃しているけど、あんまり入ってる感じはない。マズいぞ……ここに来て負けイベみたいな奴が来てしまったのか?絶対に勝てない存在がシステム的に作り出される……もしかして僕に対するお仕置きか?
「「「グルルゥ……フシュゥゥゥ……」」」
遂に僕を無視して皆の方を向き、3つの口を開いて、何かを発射しようとするケルベロス。止めろ
「撃たせるかぁぁぁ!」
絶対にあの攻撃は撃たせない。その為に……
「「絶対に守る(殺す)」」
相反する想いを籠めて、中央の口に目掛けて飛び込んだ




