漏れ出る恐怖
「ていうか、お前。さっき結構良い一撃が入れられてたと思うが、本当に大丈夫なのか?」
「はい。全然大丈夫ですよ?」
僕が殴られた所を見て心配してくれたみたいだが、しっかり受け流してるから問題無い
「あぁ、殴った俺が言うのもなんだが、コイツにまるでダメージを入れられた気がしない……どうなってんだ?」
「問題無いならさっさと済ませちまおうぜ」
確かに、今はさっさと情報収集をした方が良いだろう。装備が無いから恐怖付与とかは出来ないが、まぁ何とか出来るかな?
「さ、それじゃあ尋問しますか」
「「「おう!」」」
さてさて、お話を聞かせてもらおうじゃないか
「……う、うぅ、俺はいったい……」
「よう、お目覚めか?」
「おうおう、起きんのがおせぇなぁ?」
「ちぇっ、あとちょっとで爪を剥ぐ所だったんだがなぁ?」
演技か本物か分かんないなぁ……
「お前らどうやって……」
「質問するのは俺達だぜぇ?」
「今のお前は俺達に喋るしかない」
「まぁ、喋らなかったら拷問するだけだぜ」
とりあえずこの3人に任せておけば良いかな
「なっ、何故だ?アレが無い……」
「あ、これですか?危ないから取っておきましたよ。あと僕は回復魔法が使えるんで情報を吐かずに死ねるとは思わないでくださいね?いやぁ、魔法って便利だなぁ?あ、爪が何枚集まるかチャレンジしてみます?多分爪の再生も出来ると思うので、20枚以上を目標に頑張りましょう!」
取り外した毒を見せびらかして相手を牽制する。抵抗は無駄だと思わせる為にちょっと狂気的な立ち回りをしてみる
「「「「……」」」」
いや、なんで皆で黙るん?せっかく合わせたのに……
「そ、そうだぜ?こいつはやると言ったらやるぜぇ?さぁ、爪が何枚剥がされる事になるかなぁ!」
「あぁ、知っている事は話した方が良いぞ。俺達が何かする間はまだ良いが、コイツと2人で話をさせても良いんだぞ」
「ま、待ってくれ!喋る!喋るからそれだけは勘弁してくれ!」
おかしいなぁ?話が進むから良いハズなんだけど、ちょっとイラっとするなぁ……
「喋る!全部喋る!だからソイツをこれ以上こっちに……俺の傍に近寄るなぁ!」
「あんな拷問を楽しそうな顔で進めるとかコイツ底知れねぇな……」
別に拷問は好きじゃないし、ロールプレイなんだが……まぁ怖がってくれたならそれだけしっかりロールプレイ出来てたって事で良しとしよう
「じゃあまずは俺らの武器や防具は何処に隠してある」
「上の階の金庫に仕舞ってある。番号が分からなければ開けられないから例えここから抜け出せたとしても丸腰のまま……37564だ!」
言い淀みそうになったので、一歩近づいたら喋り出した。なるほどね。じゃあ喋ったし半歩下がろう
「お前らの人数は」
「それは……20……いや32!32人だ!」
一瞬でも言い淀んだら一歩また一歩と近寄り、脅しを掛ける。下がる量は一回の回答に付き半歩だけ。さっさと答えないとどんな目に遭うか……僕もよく分からないぞ
「他に何か聞きたい事はあるか?」
「お、おう……そうだな……」
「何か?他に有るか?」
「そうですねぇ……何も無いなら……」
「うわぁぁ!ここは防音が効いてるから外に声が伝わり辛い!そこの監房区画から出る所に2人待機してる!儀式の為にお前達を戦わせる場所もあって、これからお前達にそれをさせるつもりだった!」
手をワキワキさせながら少し速度を上げて近寄ると勝手に情報を出してくれた。なるほどね。何らかの儀式の為に集めたと。白ローブと因縁があったからそこらへんの白ローブを着た一人の人間はここに連れてこられてなんかの儀式の為に戦いを強要されるって事なのか。なるほどねぇ……となると、多分この儀式はあんまり関係ないかもしれないけど、白ローブに関しては完全に僕のせいな気がするし、ちゃんと自分の尻拭いは自分でしようか
「その儀式って言うのは他の奴らも集まるのか?」
「あ、あぁ……我ら全員で見届ける必要がある」
「これって、つまり一網打尽に出来るって事では?」
「装備を回収して儀式の準備をしている所に突っ込んで全員倒すって事か!」
「それは面白そうだぜ……乗った!」
「装備を回収してここから脱出したとしても、この組織が生きていればまた他の犠牲者が生まれないとも限らない。正義の味方って柄じゃないが、ここで壊滅させておいた方が良いかもしれないな」
確かに。僕らが脱出してここの事を通報とかすれば兵は来てくれるかもしれない。でも、残党が居たらまた同じ事が繰り返される可能性はある。なら、ここで潰しておく方が皆の為にもなるだろう
「ま、お前は情報提供者だから殺しはしないが、衛兵には突き出す。その後の処遇はそっちに任せよう」
「ありがとうございます……実は、あの薬を使って自殺とかしたくなくて……」
おっ?こいつそんなに信者というか狂信的では無いのか?
「あの、この組織を潰す為に協力するならこの人は減刑されるとかそういうのってあるんですか?」
「あぁ、それはあるな。そうだ。今この場で決めろ。俺達の側に付くか、そのまま組織と一緒に潰されるか。選べ」
司法取引的な事があるならそれを使ってコイツを内部協力者にしてしまおう




