ご招待
「こちらが、その素材になります!」
「おぉ……本当に岩っぽい。これなら確かに火山地帯で落ちていても岩と間違えるかも……」
タンケさんが持って来たのは2m位の大きさがありそうな岩っぽい色合いをした本当に風船みたいな形をした物だった
「キチンと調べたところ。名称はジャニバルーン。旅する風船と言われる魔物でして、風を使って世界各地に旅をするらしく、特に危険性は無い魔物です。そして、生まれてから時間が経つにつれてこの体表の色合いが変わるそうです。生まれたばかりと年老いたジャニバルーンは休憩する為に地面に降りた時に周囲の存在にバレない様に岩のフリをする為にこんな色合いなんだそうです」
ほほう。普通に興味深い生態してるなぁ?
「という事は飛んでいる時は何か移動の為に動いている器官とかありそうですね」
「そうなんですよ!それと、風船の下の部分で風を掴んで移動するので、疲れた時に休む為に降りますが、生まれたばかりと年老いた時は飛び立つのにも時間が掛かるので隠密性が高いみたいです」
なるほどなぁ……飛び立つ時間を稼ぐ為に隠密性を上げてるのか
『ジャニバルーンの老皮 を入手しました』
『ジャニバルーンの老皮 年老いたジャニバルーンの皮。長年の経験もあり、岩場での隠密性能はかなり高い』
積み重ねた経験でより岩らしさが出て分かりにくくなってるのか。これはマントの素材としても柔らかくて凄く良い
「ありがとうございます。これがあれば僕の作りたい物を作れるかもしれません」
「いえいえ、こちらも何回も助けてもらってますから。この位、なんて事は有りませんよ!」
「そう言って貰えると助かります。そういえばタンケ隊長って何かしらの技術に興味ってありますか?」
一応聞いてみよう
「技術に興味……ですか?」
「はい。今度、僕達で自分達が作った物を持ち寄って、技術の交流会みたいな事をしようって話が進んでるんです。なので、タンケ隊長も良かったら来ないかなって……もしかしたら何か冒険とか探検に役立つ物が出て来るかもしれませんよ?」
タンケ隊長への恩返し案として、こみケの話を出す。これで参加してもらえればプレイヤーだけじゃなく、NPCも一緒に楽しめるかもしれない
「それは面白そうですね!何か自分で作った物があればそれを見せるみたいな事で良いのですか?」
「はい。それこそ、そこに置いてあるオブジェみたいな物もタンケ隊長が作ったのなら技術として発表するみたいな形で良いと思います。まぁ、発表と言っても露店に並べてる様な感じで、来てくれた人と話をするみたいな物ですかね?まぁ、出店せずに技術を見て回るだけも可能にしておけば、それこそ掘り出し物を探す感覚に近い事は出来るかもしれません」
タンケ隊長はNPCだから出店せずに、見て回るだけが出来る様にこっちで招待するって形にすれば参加のハードルはかなり下がるか
「なるほどなるほど!それもある意味探検みたいな物ですね!」
「はい。如何でしょう?」
「それは是非参加したいですね!流石に見せられそうな物は無いので、見て回るだけにしたいのですが……」
「分かりました。招待しますね!」
よしよし、これでタンケ隊長に恩返し的な事も出来たと言って良いだろう
「ではこの皮は頂きます!これで僕も発表する為の作品が作れそうです!」
「はい!これがどんな風になるのか楽しみにさせてもらいます!」
タンケ隊長から皮を受け取り仕舞う
「それじゃあお茶も美味しかったです。そろそろ帰ろうと思うんですが、これどうやって帰れるんですかね?」
「あ、帰るのであればそのドアを開ければ帰れますよ」
「え、それってあの雪の中にですか?」
入った所に出るのは世の摂理だが、流石に今からあそこに戻るのはちょっとマズイぞ?いや、クオンが居るからまだ帰れるか……
「安心してください!こんな事もあろうかとシクサームの街の中に扉の出口を作っておいたので、帰りは一瞬です!拠点となる街に扉を置き、お宝を求めて冒険と探索をして、ダンジョンに入っても【エスケープパッド】で外に出られますし、この家を通して街に戻る事も出来ます。だから帰りも安心してください」
おぉ、それでタンケ隊長は神出鬼没な感じだったのか。どうりで中々出会わない訳だ。タンケ隊長に出会う為には何処かお宝に向かって移動している時くらいしか出会えないって事だろう。帰りは一気に家まで飛ぶし、しかもその家でさえ、多分これは何処にあるかも分からない状況だ。あそこに行けば必ず出会えるって場所が無いからこそ、このエンカウント率の低さなのか
「分かりました。でも、タンケさんも一度一緒に来てくれませんかね?」
「むむ?何かありましたか?」
「この扉で繋げられるなら僕の空島にタンケ隊長用の場所も用意しますから。というかそうしないと、さっき言った技術発表会を見られないんで……」
「その空島でやるって事なんですね!分かりました行きましょう!」
そして、シクサームに一度飛び、そこから一緒に空島に向かう事にした




