決闘開始
「待ちくたびれちゃったぁ……」
「約束の時間まで後少しねぇ?」
「頼むから大事にしないでくれよ……」
ホフマンの料理実験場で待つ2人。もしハチが時間に遅れたら大変な事になっていただろう
「お待たせしました。準備し終わったんでやりましょう」
「「「は?」」」
そこに現れたのは顔の見えない謎のシスター。否、修道服を身に纏ったハチだ
「どうかしました?やるんでしょう?」
「その恰好……戦えるの?」
「僕とか言ってたけど……女の子だったの?」
「あぁ……えぇ?」
三者三様ってまさにこの事だろうか?
「僕は男ですよ?これはそういう恰好なだけですけど」
「バカにしてる……っていう訳じゃ無さそうね?」
「はい、寧ろ2人を相手に戦うならこっちの方が良いんで」
「ふーん?それそんなに強い装備なのー?」
僕の攻撃力はDEX依存なのでオーブ・ローブの方が攻撃力は上だが、搭載されているスキルが今回の戦いにおいて有用だと判断したから聖女の戦闘用修道服を選んだ。オーブさんの所で練習もしたし、色々やっておいた
「とりあえず決闘システムを使えば良いんですよね?」
オーブさんの所で聞いたシステムでプレイヤー同士で揉め事があった時に解決する手段の一つとして別空間で決闘出来るシステムがあると聞き、ヘルプも見てしっかり理解した
「ええ、それで良いわ。2対1だから変則決闘になるけど」
「ルールは僕が決めても良いですか?」
「場外負けだけは無しにしてー!面白くなーい!」
キリアさん、あのイベントでの負け方が相当嫌だったんだな……
「分かりました。場外負けは無しにします。こういうルールでどうですか?」
『制限時間10分、HPが1になれば負け(デッドガード採用)、フィールド範囲限定(直径20m)回復アイテム使用不可、アイテムやGの移動無し』
「ふーん?制限時間10分って短くない?」
「2対1なら僕が耐久勝ち出来る様にしても良いかなって、不満なら消しますけど?」
「いえ、流石にそれくらい無かったら2対1なんて不公平だわ」
「時間切れで終わっちゃうのは面白くなーい!でもお姉ちゃんと2人なら10分あれば大丈夫!」
制限時間10分は一応僕に有利になるようにしたけど実際の所本当に通したかった条件は回復アイテム使用不可とフィールド範囲限定。これが通るなら僕にかなり有利に働くぞ?
「他に条件で何かありますか?」
「私達はこの条件で貴方を倒せば勝ち。貴方は狭いフィールドで10分間生き残るか私達を倒せば勝ち。そう言う事ね?」
「そう言う事です」
「私はそれでオッケー!早くやろう?」
よし!やったぜ
「それじゃあ決闘を始めますね?光に手を当ててください」
決闘をする準備として僕の目の前とキリエさん達の前に光の玉が現れる。この光に触れる事で別空間に行けるんだけど、要するにこの光はチーム分けみたいな物だ。決闘する相手を選ぶシステムだけど触れた相手が飛べるから2人で触れば2人チームになれるから複数人で決闘する時にも便利だ
「準備オッケー!やっとリベンジだー!」
「絶対に勝つわ」
「それじゃあ決闘システム。起動!」
光の玉に3人が吸い込まれ、白い空間に飛ばされる。僕がいつもお世話になっている場所とそっくり……というかやっぱりこういう地形組み換えとかする事になるとこの空間が一番楽なんだろう
「場外は無しなんで周りは透明な壁で覆われてます。これで場外負けは無いよ?」
「やったー!」
うん、ああいう無邪気な笑顔は可愛いと思う。だけど得物を持っているせいで猟奇的に見えちゃう
「それじゃあスタートしますよ?」
「いつでも良いわ」
「今度は負けない!」
空中に光の玉が3つ。まるでレースのスタートシグナルの様に左から順番に緑色に光り、3つ目が光ったと同時に僕達の間にガラスが割れた様なエフェクトが発生する。実際にはスタート前に攻撃出来ない様にバリアが本当に張られていたみたいだからそのバリアが割れたんだろう
「自分から2対1と決めたんだから私達を楽しませてよ?」
キリエさんが銃を両手に持ち、僕に向かって発砲する
「前回とは違うよー!」
両手に持ったフランキスカをクロスさせて刃の部分を僕に向けてキリアさんが走り寄ってくる
前衛と後衛。この姉妹なら何も言わずに前方を走る妹に当てない様に僕を牽制する銃弾を、後方からの援護射撃をする姉の邪魔をしない様に左右にフェイントを混ぜつつ接近する事が出来るんだろう。真後ろからの援護射撃と言われても結構怖いと思うけど姉妹で信用しているからこそキリアさんの肘の下を通ってくる様なスレスレの援護射撃が来る。これは下手な回避行動をしたら斧で狩られるし、最低限で躱そうとしても僕を動かす様な場所に次の1発が飛んで来るだろう
「前回と違うのは僕もですよ」
今までの僕ならこの状況で【受け流し】で対処しようとして手数負けするヴィジョンが見えたけど今は違う
「【精神防壁】」
左腕を前に出す。すると僕の正面で飛んで来た弾が全て弾かれる
「ガード系のスキル……」
キリエさんが即座に今ので銃弾をガードされたからどう援護、または攻撃を当てるか考えているみたいだ
「そーれっ!」
Xの字で僕を斬る様にフランキスカを振るうキリアさん。だが、僕の前の透明な盾でその攻撃は阻まれる
「それ、見た事無い!いっぱい攻撃したら壊れるかな?」
片方のフランキスカを逆手持ちにして回転を始めるキリアさん
「【旋斧】!」
この前のPVで見た5人をキルしていたあの技。それで僕の【精神防壁】を突破しようとしてくる。残念だけどそれはさせないよ?
「【受け流し】」
「うわっ!」
空中に浮いた盾を僕の腕に移動させてそのまま受け流す。すると受け流された事でキリアさんはバランスを崩してこけてしまう。やっぱりあの技回転するから軸をずらされるとバランス崩すんだな
「【クイックバレット】」
こけたキリアさんに追撃を入れられない様に連続で弾を僕に向かって発砲してくるキリエさん。僕を動けない様に撃つだけだから止まって防壁で弾を受ける
「どうやらそれで10分耐えようって感じかしら?」
「まぁ、それもプランの1つですね」
精神防壁で攻撃を10分間いなし続けても良いけど、これの本領は防ぐだけじゃ無いんだなぁ?




