第二の……
「別にいつも試されてますから問題無いですよ。それじゃあそろそろ戻ってまた色々と準備をしないと……」
『あぁ、それについてなんだがな?俺は絶対さっきの報酬は断るって踏んでもう一つ報酬を用意してたんだ。そっちからは見えないが、胃をやられたスタッフ達がここに居るんだが……賭けをしていてな?』
「え?」
おっと、その賭けって今の話を聞いてる限りだと間違いなく更に胃にダメージが入る案件なのでは?
『賭けは俺の勝ちって事で、君には新しい空島を進呈しよう』
「えっ!2つ目ですか!?」
まさかの空島2つ目?
『今度こみケとかやるんだろう?だったら、今使ってる空島には見せられない存在も多いだろうし、新しい場所が有った方が楽なんじゃないか?』
「それは確かに……」
イベントを開くと考えたら、新しい人が来る可能性もあるし、区分けをどうするか結構困ってた。その辺を考えると、この提案は結構ありがたいが……
「サイズ的にはどのくらいの物を?」
『まぁ、今回進呈しようと思ってるのは今の島よりはかなり小さい物だ。それに、この島はお前さんが好きなプラクティスゾーンを切り取った様な物で、色々と調整が出来る!』
「おぉ!良いんですか!」
プラクティスゾーンと同じ。それはつまり、操作次第でその島の環境を変化させる事が出来るって訳だ。これがあれば今まで空島に来た事無かった人でも、このニュー空島の方で集まってこみケを行うって形にすれば問題も起こらない様に出来るだろう
『こういう方が嬉しいだろう?』
「はい!これでこれから人を集めて何かするってなったとしても、その島を使用すれば良くなった訳ですからかなり助かります!流石ですね!」
僕が必要な物を分かってるなぁ……
『てな訳で、これからも俺達以外の刺激をプレイヤーに与えてくれ。そんじゃあまた今度な!』
『エリアオブオクタヘドロン を入手しました』
『エリアオブオクタヘドロン レアリティ ユニーク 運営からの贈り物。内部に疑似プラクティスゾーンを形成する超巨大アイテム。所有者が保持している土地に紐付けて運用する事が可能』
「ありがとうございました!」
土地に紐付けて運用可能?これってもしかして空島に紐付けすれば、この土地も浮いて衛星みたいな状態にする事も可能なのか?それに紐付けであれば、泉でワープする先をこっち側に選択する事も可能なのでは……これは早速戻って試してみないと!
「ほら見たろ?あの楽しそうな顔。確かに俺達はバランスを考えなきゃいけない立場ではある。が、あそこまで他の人を盛り上げようとしてくれてる奴を狙い撃ちにしてナーフしなきゃいけないって言うのはどうだ?お前が提示した条件を俺はしっかりと伝えたが、むしろ胃薬でも渡してくれってよ?」
「うぐぐ……」
「おっ?どうしたどうした?また腹いてぇのか?難しく考えっからそうなんだろ」
「マジハチ君天使じゃん……」
「AIもそりゃあ贔屓してもおかしくないねぇ?」
2人の会話を見ていた運営の他の人も今後の調整等を考える為に見ていた様だ
「大体さぁ?私達は仕事として日々調整やら修正やらして、イベントも出すって感じだけど、ハチ君は楽しんでるとは言え無給であれだけの事をしてるんだぜぇ?あんな事してもあの子に発生する金銭は0。胃薬を買う金すら発生しないのに、事故でほぼ全身不随の状態から助けてくれた。だから恩返しも含めての盛り上げ役を買って出てくれてる。正直私も直接お礼を言いたかったなぁ」
「あぁ、それに関しては確かに頭が上がらない。だが……」
普通にイベントを進行するうえでどういう結果になるかは本当に参加する当人次第と言っても良い。下手な運営をしてしまえば、戦闘系イベントで全員が同じ装備で同じ技しか出さない状態の戦闘を見せられるなんて事になってもおかしくない。だが、それをあえて崩し、その装備や技に絞って対策をするのも、はたまた自分が好きなデザインや動きの技を使うのも選ぶのはプレイヤーだ。そんな中でハチ君はあえての悪役を買って出て、ヒーローを生み出し、盛り上がりを作り、自身もしっかりと存在感を証明している
「ハチ君が悪役をしてくれているお陰である意味それを越えようとする勢力や、むしろハチ君と共に戦いたいと思う勢力も生まれる。そして周りではそれを利用してお金を稼ごうとする人も出てくれば、関わらないで自分のペースで遊ぶ者も居る。多種多様な遊び方を生み出す為の1つの種なんだよ。ハチ君は」
「ですが、さっきのはある意味身内贔屓の様な物なのでは……」
「いやいや、何を言ってるんだい。ハチ君はちゃんと報酬を受け取っただけだろう?こいつのな?」
「なるほど……確かにそう言われてしまえば反論は出来ませんね」
見せられたのは運営からの感謝状。あのイベントで一番高い無意味なアイテムではあったが、裏の真意に気が付けば誰にでも報酬は獲得可能だと言いたいのだろう
「まぁ、交換したのはハチ君だけみたいだったけどねぇ?」
誰にでも出来る手段だから贔屓ではない。そう言いたいんだろうし、実際そうだ。そして、これのお陰でハチ君が個人でイベントを開催して全体の幸福に貢献出来る様になったのだからその選択は間違っていなかったのだろう




