複座式深淵
「『『『『『なんだ!?』』』』』」
クオンが下がって結界から脱出し、僕に近付いて来たら深淵で掴まれた。えっ!どういう事!?
(オーブさんに操縦系統に関して質問した所、途中での変更も可能。乗り込みも可能と返答を頂きました。なので、マスターにも一緒に戦って頂きたいのです)
「いや、それは分かったけど……なんでおんぶの形に?」
僕がクオンをおんぶしている状態で深淵の中に居る。見た目はこの形的に外見は深淵の球体かな?
(クオンは深淵を分かった気でいました。ですが、深淵の記憶と自分が使う深淵では大きな隔たりを感じます。まだ……まだ先がある気がします)
クオンにしてみれば僕の記憶があるとしても、ここまでちゃんと使うのは初めてだろうし、扱い切れないとしても仕方ないと思う。でもクオンもその先を見たいという探究心はあるみたいだ
(どう違うのか知りたい……となれば、マスターに使ってもらうのが一番感覚的にも分かりやすいです)
「感覚的に知りたいから密着してる方が分かりやすい的な?」
そういう解釈が一番近いかな……
「言いたい事は分かったけど、流石にこれはちょっと戦い難いかな……」
自分自身の肉体を使って戦う訳じゃ無いから気にするなと言われたらそれまでだけど、これから戦闘します!って時に背中に人一人背負った状態で戦うって言うのはメンタル的にあまり良くない。訓練じゃなく実戦なら自身に掛かる負荷は出来れば軽減しておきたい
(そうは言いつつも、既に攻撃を弾いていませんか?)
「まぁ……これに関してはある意味慣れみたいな物かな。今までずっと使って来たから使えと言われたら使えるみたいな……」
僕はここから更に先に進む為に一度捨てた物だけど、問題無く使用出来る。僕達を守る深淵球体に対する攻撃はさっきから深淵で打ち払っているけど、もう自分の物じゃないのに自由に扱えるって不思議な感覚だなぁ?
「ってそうだクオン。これじゃあダメだよ。僕も一緒に戦いたかったけど、ここはクオンの為の場なんだから、クオンが主体にならないと。ほらほら、前後交代!この深淵を人型にでもして相手を倒そう!僕は触手を使ってサポートするからさ」
(確かに……そちらの方が良いかもしれません。深淵本体はこちらで操作します。触手に関してはマスターにお任せします。向こうが複数で操作するならこちらも複座式で行きましょう)
クオンと僕の位置を入れ替え、深淵に座る。おっ、良いなこれ。メインパイロットがクオンでサブパイロットが僕みたいだ。よし、直感でサポートを……冗談はこの辺にしておいて、向こうが複数で1機を操るならこっちも機体の操作と武装の操作を別にして戦おう。久々に深淵戦闘術をお見せしようじゃないか
『今、ハチ君を取り込んだよな?』
『明らかに攻撃を弾く触手の動きのキレが変わった。間違いなく入ってる』
『あの弱化結界で捉えたと思ったのにまだ先があるなんて……』
『アハッ!凄い!凄い凄い!あんなのどーやって倒したら良いんだろう!』
『厄介度の上昇がとんでもないわ……』
なんか色々言われてるねぇ?それじゃあそろそろこっちの逆襲タイムだ!
『来るぞ!』
決して余裕があると言える程広くはない。だが、コンパクトだからこそ動きやすい。それに、僕達は別に体を動かす必要もそこまで無い。思考が出来れば深淵を動かせるからこれで充分だ。正直今の僕達の外見がどうなっているかはあまり分からない。クオンも必要に応じて二足歩行したり四足歩行したりするからまじで最初の球体に手足っぽいのが生えただけなのかもしれない。でもこれで充分だ。弾が打てれば何でも良い銃みたいな動ければその形はどうでも良い。動ける事が重要なのだ。そしてその足回りはクオンが担当しているから、僕は相手からの攻撃を迎撃しつつ、致命打になる様な攻撃を打ち込んでいけば良い
(なるほど!【マスターレプリケート】の使用と実際に同じ深淵を動かしてマスターとの操作の違いが分かってきました!)
一応譲渡した形になってるからこの深淵の持ち主はクオンで、それを僕が操作してるという状態になってるだろうから、クオンに深淵の使い方の直接指導みたいになってると思えばこれは中々良い教材じゃないかな?
「こうしてサイズに違いを出す事で、実際は同じ威力だとしても、不意打ちの一撃の細い線深淵での攻撃を通す事も出来るよ」
(なるほど~!)
『ぐっ……なんておかしい攻撃だ。見えないし魔法でもない……』
まぁ、深淵も人によっては理外の代物だし、訳の分からなさで相手の思考リソースを奪えるからやり得なんだよなぁこれ
「もしこっちの方を練習してみたいって事だったらいつでも変わるから、クオンがやりたい様にやって学びたい事を見つけてね」
(今の感覚を忘れないうちに攻撃をしてみたいです!)
「オッケー!それじゃあ席チェンジ!」
内部の深淵を弄ったのか、僕とクオンの位置が時計周りに入れ替わる。よし、ここからは足回りで翻弄してやろう!




