クオン(と小規模チーム)の為に
「相手の攻撃をブラインドにして奇襲……良いねぇ。それに多分深淵もちょっと使ってたな?」
リミッターを掛けているからこそ使いやすくなっている深淵も併せて、素早く穴を掘り、土は深淵にしまっておいてって所かな。アレがもし如意・暴じゃなくて、フィフスターだったらドラゴン戦車は横転してからのジリジリと攻められる事もあった訳だ。クオンの一撃がドラゴン戦車に対しての致命傷なのは誰の目から見ても明らかだ
「まだやりますか?これ以上は不毛かと」
確かに、相手のゴーレムを完全破壊したとしても、次の試合の時に完全復活するならこれ以上壊す必要もない。相手の同意を得られれば棄権する事が出来るというルールがちゃんと機能しているかどうかも確認と言うか、試合中にギブアップ出来る事をちゃんと明確にしていないとクオンのトーナメント途中離脱計画がとん挫してしまう
「クオンも生きているので、不必要な破壊は好まないんですよ。まだやると言うのであれば、命令しますが……」
「いや、これは我々の負けだ。というかヤバ過ぎるだろあれ……」
「あんな存在を造るってどうなってるんだよ……」
「あの武器とかも何なんだよ……」
「俺らのゴーレムと格が違い過ぎないか?」
たとえドラゴンの素材を使っていたとしても、まだクオンには勝てないだろう。クオンにもドラゴンの素材も入ってるしなぁ?
「では、勝利チームは転送致しますので、少々お待ちください」
「「お疲れ様でしたー」」
まぁ、クオンと同格の存在が出てくる事の方があってたまるかって話なんだけどね
「よしよし、ちゃんと棄権は出来るみたいだね。これならトーナメント棄権からのバトルロイヤルに行けそうだね」
「このまま勝ち続けて小規模チームトーナメントの決勝で棄権する事でより難しい戦闘経験を行い、実戦における武装の確認をして、今後の戦闘に活かす為ですね」
イベントでの最終目標は優勝だけど、そこに到達するまでにどうにか戦闘回数を増やす為の手段として棄権が必要なのだ。これから先に行くにつれて、多分だけど僕をメタる様な所が出てくる可能性を考えると、クオンの存在は絶対に必要だ。クオンには僕にはない魔法攻撃と武器による安定した遠距離攻撃手段がある。対多数戦闘の経験があれば絶対にクオンの能力は活きて来るし、それに何より今まで歪みに歪んでいた僕の補助術士としての本来の戦い方も出来る様になるだろう
「このイベントで勿論勝てれば良いけど、大事なのはその先だからね」
イベントでクオンが僕じゃない相手の攻撃によって追い詰められて、その結果新しい攻撃方法とか覚えられたら嬉しいよね
「クオン頑張ります!次の相手はどんな姿をしているんでしょう……」
確かに、燃えるゴーレムにドラゴン戦車と来たら、次は何が来るかなぁ?やっぱり関わってる人数が少ないと、完成品もそこまでサイズが大きいとは言えないし、流石にゲヘちゃんクラスが何体も居るとも思えない。というかそんなサイズのゴーレムがポコポコ居たらチェルシーさんとかが情報を持ってない訳がない。あの時に他のチームにそういったのがあると匂わせとかも特にしてなかったと思うし、早々そんな奴は居ないとは思いたいが……
「第3回戦。この試合の勝者は小規模チームの決勝へと駒を進めます」
「これの次が決勝?早くないですか?」
「はい。小規模チームは参加者が少なく、旅人の方々も生産系での繋がりもあるようで、大規模、中規模チームがとても多く……観客の皆様の要望も考慮しまして、大規模チームと中規模チームをブロック分けし、大規模チームAブロックの勝者。Bブロックの勝者。中規模チームAブロックの勝者。Bブロックの勝者を出す事になりました。イベントの盛況を考えた結果の直前の判断なのと、小規模チームに特に変更点が無い為。通知が遅れてしまい申し訳ありません」
まぁ、言いたい事は分かる。絶対大規模、中規模、小規模、敗者復活の4チームで決勝って実質、大規模チーム2つになると言っても過言ではないだろう。なら決勝の上がるチーム数を増やして盛り上がりを求めるのも分かる。小規模チームが侮られてしまうのも無理はない
「クオン。どうする?」
「どうするとは?」
「多分だけど、小規模チーム戦でクオンの攻撃を耐えて、反撃に出られる様な奴が居るかどうかと聞かれたら……ちょっと厳しいかもしれない。まだ、クオンはリミッターを1つも外してないでしょ?だったら、小規模チームで戦い続けてもクオンの成長に繋がるかと言ったら、ちょっと僕は首を縦には振れないかな……」
確かに、僕が弱点とか相手の特徴みたいな情報を集めてクオンが戦闘するという方法で、クオンが強くなるかと言ったら、自分で弱点を見つけてる訳では無いから、観察眼的な事は養われていないのかもしれない。そもそもクオンがここで戦闘しても50%の状態で決勝まで行けちゃうならそれこそやらなくても変わらないのでは?とも思えてしまう。言い方は悪いけどレベル帯が違う感じ……
「だから、ちょっと早いけど、もうリタイアしても良いかなって」
「確かに、ほぼ一撃で倒せてしまっては意味がありません。分かりました。棄権しましょう」
という事で、小規模チームの優勝者が誰になるかは分からないけど、中規模チームや大規模チームが作った奴らとの戦闘にもう焦点を合わせて良いだろう




