デビュー戦
「では、トーナメント第一回戦。開始します」
「おぉ……あ、どうも。よろしくお願いします」
「「「「げぇっ!?」」」」
そこまで引かなくても良いんじゃないかな……
「では、チームスクエアフェニックス。フレイミングゴーレム対ハチ。クオン顔合わせです」
ほぉ、炎で体を覆ってるのか。結構地属性系が主体っぽいゴーレム相手だと厳しい様な気もするけど……火力が高ければ勝てるのかな?
「え……」
「ナニアレ?」
「人……だよね?」
「えっ、NPCってルール違反じゃ……」
まぁそう言われても仕方ないよねぇ……
「オーブさん。クオンは僕が作った生命体ですが、ルール違反ですか?」
「いえ、確かにそちらの個体名クオンはプレイヤーハチが創り出した生命体です。なのでクリエイターズバトルフェスタのルールに抵触はしていません」
まぁ、ここでダメならそもそもダメなんだけどね
「なので、このまま10分間のインターバルを取ります。お互いに戦う相手を観察したり、換装したり、時間を有効にご活用ください」
オーブさん自体が10分タイマーになり、色々出来る自由時間が始まった
「という訳で、一応相手のゴーレムの様子を見てくるから。クオンも相手に何か聞かれたりしたら、自分の不利にならない程度の事なら喋って良いからね」
「分かりました。会話は拒否しない程度に頑張ります」
「ほーい」
さてさて、フレイミングゴーレム君がどんな奴か近くでしっかり見てみよう
「あ、クオンは受け答え出来るので、もし何か聞きたい事があれば聞いてみてください。答えられる範囲なら答えてくれるはずなので」
「「「「えっ……」」」」
「ほぉ……これはもしかしてカーボンウッドが主体になってるのかな?これなら確かに俊敏性と防御力もある程度確保しつつ、炎を纏って攻撃する事でダメージの底上げも狙えるか。ほほぉ、面白い作りになってるなぁ……」
フレイミングゴーレムの周りを歩きながら見て、弱点になりそうなポイントの確認や、隠し武装とかが無いかをチェックする。両腕に何か仕込まれてるなぁ?これは結構厄介な武装になるかもしれない。【察気術】で近ければこの辺を見れるのも結構助かる。この情報を持ってクオンに知らせるかどうかは後で決めるとして……
「どんな武装を持ってるの!」
「状況に応じて変更するので、余り詳しい事は言えませんが、近距離から遠距離まで対応は可能です」
「どのくらい強いの!」
「マスターには負ける位かと思います」
「本当にあの人に造られたの?」
「はい。マスターはクオンの生みの親です。クオンの為に様々な貴重な素材を使用して頂いたと記録されています」
「マスターの事はどのくらい好きなの?」
「お友達も居ますが、お友達よりも好きです」
「「きゃー!ご馳走様!」」
なんか向こうの質問タイムがおかしな事になってるなぁ?
「こういう関係性好きだわぁ……」
「マスターと従者……アリですねぇ!」
「これは新しい本出そう……」
「ネタの供給源が素晴らしい……」
「あの、そろそろ時間ですけど、最終調整とか大丈夫ですか?」
(クオン、一応相手のフレイミングゴーレムの攻撃方法と弱点っぽい情報は手に入れたけど聞く?)
(はい。情報は共有しておきたいです)
(オッケー。じゃあ教えるね。コアらしき物があるのは頭部で、あの両手に仕込み武器っぽい物を確認したから、間合いを詰める時とか腕をこっちに向けてきたりしたら注意ね)
(了解しました)
こっちは調整する事無いから良いけど……向こうはそれで良いのかな
「あの目と目で通じ合ってる感じ……」
「勝っても負けても眼福……」
「いや、流石に勝つつもりで頑張ろうぜ?」
「一応、間に合わせとはいえ、それなりに良い物は出来たと思いますから……」
大きい声で言うつもりは無いけど、間に合わせで出来た物にクオンが負けるのは絶対に良くないよなぁ?
「クオン。リミッターはどうする?」
「このままで構いません」
リミッターは外さない……50%の出力で問題無いと。ひゅ~
「お時間になりました。それではトーナメント1回戦。開始します」
「【アンチノミーフォース】」
「「「「え?」」」」
開始の合図とほぼ同時にクオンが【アンチノミーフォース】で加速。その手には大太刀状態の如意・暴が握られていて、斥力によりクオンが地面から浮き上がり、5m近いゴーレムの頭まで浮き上がり横薙ぎ一閃。フレイミングゴーレムの頭は上下に真っ二つとなり、ずり落ちて、ゴーレム本体も倒れる。まだリミッター外してないし、魔法も使ってないんですが……
「フレイミングゴーレムの機能停止を確認。勝者クオン」
「マスター。一発で決めてやりました。えっへん」
「う、うーん……いや、偉い!一発で決めれるなんて流石クオンだ!偉い!」
確かにお披露目と言ったのは僕だ。これに関しては胸を張ってるクオンは何も悪くない。ちゃんとやるべき事をやったんだから褒めてあげよう
「「「「うっそー……」」」」
「では、勝利チームは転送致しますので、少々お待ちください」
「ありがとうございました」
「あっ、対戦ありがとうございましたー」
クオンが相手に礼をしている。おっとっと、危ない危ない。ちゃんとお礼が言えるクオンとお礼も言えない僕になっては良くない。転送前ギリギリだけど、一応僕も挨拶出来た




