お似合いの乗り物
「それじゃあ僕は行くね?皆、またね!」
「また来てくださいねー」
「またの…お越しを…」
「今度来た時には立派な先輩にもなりますよ!」
「……」
皆が僕を見送ってくれる。あのドリアードの娘もモニクにべったりだ。これなら大丈夫そうだね
「それじゃあまずはセカンドラに戻るかなぁ……あっ、ダイコーンさんが居たらちょっと協力してもらおう」
一応まだ白ローブが追跡されている可能性はあるし、この修道服で出歩くのもちょっと嫌だ。僕は別に教会の人間じゃ無いから修道服を着ているせいで余計な面倒事に巻き込まれる可能性も無くは無い。となると白ローブの上にウルフポンチョだが、ウルフポンチョはミリアさんにあげちゃったから残っているのはシロクマコスチュームだけだ。シロクマコスチュームを使ってセカンドラに行くならやっぱり召喚獣のフリが使えるダイコーンさんと一緒に街に入るのが一番安全な気がする。僕街に入ろうとするだけでなんでこんな事考えてるんだろう?
『ダイコーンさん、今お暇でしたらセカンドラの街に来てくれませんか?他の人と面倒を起こさない恰好はあのシロクマの恰好しか無くて……』
メッセージをダイコーンさんに送る。フレンド欄でオンラインなのは確認済みだから返事が来るまでとりあえず進もう。霧の森を越えても荒野が広がってるからセカンドラに着くまで結構時間が掛かるし……
セカンドラにガイドを合わせて霧の森を突破する。紫電ボードをフルスロットルで使えばトレントが気が付いても、ゾンビが気が付いても僕を捉えるよりも先に逃走出来る。流石に霧の森を出るまでだけどこれでかなり時間を短縮出来る。荒野は……人が居たら【擬態】で何とか誤魔化せるかな?多分居ないだろうけど
「おっ?返事がもう帰って来た」
ダイコーンさんからのメッセージだ
『あの教会から出てきたのかな?迎えに行くのは構わないぞ?面白い物も入手したからそれも見せたい。ひょっとしてまだ荒野かい?』
見せたい物ってなんだろう?
『はい、今荒野と霧の森の境目です。待っていても良いですか?』
ダイコーンさんが来てくれるなら待っていよう。霧と森があれば普通の人なら僕の姿を見つける事は絶対に出来ないと思うし
『あぁ、迎えに行くから待っていてくれ』
ダイコーンさんのメッセージを貰って僕は霧の森の方に少し戻り、迎えを隠れて待つ事にした
「ヒャッハー!」
暫くするとブロロロロ……と妙な音と共に聞いた事のある声が聞こえてきた。テンション高いなぁ?
とりあえずシロクマコスチュームに着替えて、霧の森から荒野の方に出る
「うわっ!?何ですか!?その世紀末というか近未来的なバイクは!?」
「ヒャッハー!迎えに来たぜぇ!こんにゃく!」
まるで狂気でMAXなゴテゴテの改造をされたバイクが地面から若干浮いてこっちに走って来た、そしてドリフトしながら僕の前に止まった。ホバーバイクって奴だろうか?
「もしかして見せたい物って……」
「そうさ!新しい街に行ったらマウント屋って所があって、そこで売ってたコレを色々と追加費用を払って改良してもらったんだぜぇ?」
まぁ、ダイコーンさんの恰好とこのバイクは似合い過ぎてる。これは運命の出会いと言っても過言では無いだろう
「これ、いくらくらいしたんです?」
「……聞きたいか?」
「いえ、止めておきます……」
めっちゃ掛かってそうなのは雰囲気から察する。何にお金を掛けるかとかはその人次第だけどダイコーンさんのお金の掛け方は結構良い使い方な気がする。まぁ僕は掛けるお金は無いんですけどね?
「追加オプションでパーツを追加して、はんぺん用にサイドカーも後付け出来る様にしてもらってな?人もちゃんと乗れるサイズだから安心してくれ」
ダイコーンさんがメニューを操作すると、バイクの横部分に青いポリゴンが集まり、集束するとサイドカーがバイクに装備された
「おぉ……これ乗っても良いんですか?」
「まぁまだ人は乗せた事は無いが、多分大丈夫だろう。乗ってくれ」
現実だとサイドカーって普通免許でも乗れるんだっけ?まぁダイコーンさんは二輪も普通の免許も持ってそうだし、例え事故ったとしてもゲームの中ならまだ受け身とか取れば大丈夫そうな気がする
「おっ、大丈夫かな?」
人間も乗れるサイズとは言ってたけどシロクマコスチュームだと結構ギリギリだ。まぁスッポリ嵌まってるから落ちる事は無いと思えば良いかな?
「よっしゃ、乗ったな?それじゃあ行くぜ!」
バイクのアクセルをふかすダイコーンさん。うおぉぉ、加速が凄い……
ブロロロロ……とエンジンの音を鳴らしながら荒野を走るバイク。人とすれ違ったけど、めっちゃ驚いてたなぁ……
「やはり、2人になるとMPの消費も大きいな……」
「あ、MP消費して運転してるんですか?それって僕もMPを出す事出来ます?」
乗せてもらっているからMPを出すくらいはさせて欲しい
「……どうやら出来るみたいだ。少しMPを出してもらっても良いか?」
サイドカーの中に操縦桿みたいな物出てきた。これを握ればMPをバイクに流す事が出来るんだろう
「それじゃあここからは僕がMPを出しますね?」
バーを握り、MPを流す。こういう所でも呪枷の消費MP-50%が効いているのかなんか全然吸われている気がしない。もっと多くMPを流そう
「「うおっ!?」」
MPを多く流したらバイクが更に加速した。やばいやばい、視界がスローになっている。速過ぎだ
「とりあえず僕だけのMPで何とかなりそうなんでMPは任せてください」
「わ、分かった……」
そこからはある程度落ち着いた速度で走ってセカンドラの街に辿り着いた