ギリギリブートキャンプ
「ありがとうございましたー」
「こちらこそ。イベント楽しみにしています」
オーブさんに見送られて戻ってくる
「さて、どうするクオン?残り時間は短い。どこまで出来るかは分からない。それでもアレの習得が出来るかやってみるかい?」
「はい。マスターのお陰で今はかなり余裕があります。少なくとも叩きつける位は出来る様になりたいです」
「オッケー!それじゃあ行ってみるか!アビス様ー!」
今日も遅くまでやっちゃう事になるけど、関係無い。今がやるべき時!
「「「遅いぞ!」」」
「わぁ……そんな楽しみにしてくれてたんですか?」
「ここが、マスターの特訓の場……」
「見てたぞー?何故もっと早く来ないんだいハチ君!」
「そうだぞ。自身で操り切れない深淵を持っているのは危険なのだ」
「おう、早く来い。教えてやる」
なんだろう。アビス様もニャラ様もクタルファ様もやっぱり皆教えるのが好きなのかな?
「すみません。時間が無いので、本当に基礎の部分だけをクオンに教えたいんですが……」
「ハチ君ハチ君。それで良いのかい?」
それで良いのか……勿論、出来る事なら基礎的な事以外にも色々出来て欲しい。でもそれは流石に厳しい気が……
「クオン」
「はい、マスター」
「君の事。信じるよ?」
「分かりました。信じてください」
常識的に考えれば無理なのかもしれないが、そんな常識は他の人達が考えたただの諦め。クオンはそんな常識の枠に当てはめて考えるのが間違いだ。無理だったら慰めれば良いし、出来たら褒めれば良い。クオンなら出来ると信じて送り出してみるしかない
「じゃあ、アビス様。超特急になりますが、クオンの事を頼んでいいですか?」
「あぁ、任せろ」
「ニャラ様、クタルファ様。クオンが頑張っている間、僕の事も特訓してください」
「ほほぉ!2人でやっちゃって良いのかい!」
「随分な自信だな?デカい事を言うと後から……」
「時間が惜しいので早くやりましょう!」
「お、おう……」
クオンの強化関連で色々やったとはいえ、ほぼ雑魚狩りみたいな物だったし、張り合いはあんまり無かった。確かにイベントは目の前だけど、これでクオンに更なる強化が仕込めるのであれば、突貫でもやらないのは勿体無い。どうせ基礎を教わっている間は僕に出来る事は少ない。なら、僕は僕で自分を強化した方が良いだろう
「ハチ、ヤミィも居るのだろう?出せ」
「だってさ?」
「えぇ!私もですかぁ!?」
そうだ。今は皆帰ってきてるからヤミィさんも居るから特訓に巻き込まれてもらおう
「クオンがやるんだから、深淵使いの先輩としてお手本とかその程度じゃないかな?」
「ま、まぁそのくらいなら……」
「何を言っている?勿論ビシバシやるに決まって居るだろう?」
「ひにゃー!」
あら残念……僕はニャラ様とクタルファ様と特訓するから止められないなぁ
「という訳で、クオン。一緒にやってくれる人も居るから安心して習得を頑張って!」
「はい。絶対に形にして見せます。今なら【マスターレプリケート】も相まって出来る気がします」
深淵操作は身体能力と言うよりかは、精神的と言うか演算能力的な方面の力が必要だろうし、リミッターで調整したクオンなら出来ない事は無いだろう
「そうだねぇ……ハチ君が前にやったワープの奴。今回はあれを更に強化してみるかぁ」
「あぁ、あれですか。確かに全然使ってないんでちょっと感覚を掴みなおす為にも丁度良いですね」
予備動作が要るけど、指定地点に短距離ワープ出来るのは普通に強い。【ディジャヴ】もワープはするけど、アレは3秒前に居た地点にワープだから戻る事は出来ても進む事は出来ないから、この使い分けみたいなのも出来ると攻め方にも更なる変化をもたらす事が出来るだろう
「大体アレも発動するまでに大分時間も掛かっちゃいますし、戦闘時に使えるかと言ったら……」
空間の距離をぶち壊すってあの時は必死だったから出来たとも言える位不安定な技。戦術と言うか、戦法には組み込めないから今まで使ってないと言って良い。でも、これをちゃんと戦闘に組み込めるようになれば確実に強いだろう
「そうだねぇ……ハチ君が距離って概念を破壊するには相当の集中力が必要で、それは戦闘中には出来ないと」
「サラッと言ってるが、なんで人間が距離の概念を破壊してるんだよ」
「いや、あの時はなんか出来ちゃって……」
ワープが使えるセーレさんに色々コツを聞いて、形にしてみようとした結果がアレだったし、本当に説明しろと言われたら出来ちゃったからやっただけとしか言えないんだよなぁ……
「それならクタに攻撃してもらって、ワープで避ければ良いじゃん良いじゃん!クタの巨体で攻撃すればハチ君だって避け切れないんじゃな~い?」
「んー、衝撃を上手く逃がせばクタルファ様の体を走って避けるみたいな事は出来ちゃうかもしれませんが、特訓なら確かにクタルファ様の攻撃なら避けられないから良いと言えば良いかも……」
「正気か?避け損なったら死ぬぞ?」
「え?普通そうじゃないですか。だから必死にやって、死なない為に物にする。その為のクタルファ様の協力なのでは?」
「うっひょ~この感じこの感じィ!久々で良いよぉ!」
死ぬ気でやらなきゃ力にならないでしょ……この命を懸ける緊張感無くして上達なんて無いだろうに




