師匠二号の本気
「普通に錬金術師よりも鍛冶師の方が作りたいと思うんですけど……」
インゴットなんて錬金術師よりも鍛冶師が作りたいと思うけど……
「錬金術師でも鍛冶師でも、己の力を高めつつ、世の役に立てば良いだろう?」
「カッコいい……」
「ふふん!そうだろう!」
役に立つ立たないは一旦置いておくとして、己を高める為に新しい素材にチャレンジするその姿勢は本当にカッコいいと思う。僕もそういう所は今後も見習って行かないとなぁ……
「ニコラ師匠のそういう所は尊敬します!」
「あぁ、尊敬して……ん?なんか引っ掛かる言い方だな?」
「そうですかね?とにかく錬金するんですよね?なら行きましょう。ボルカさんもありがとうございました。落ち着くまでは好きに居てくれて良いですから」
「あぁ、お言葉に甘えさせてもらう」
とりあえずこれで、ドラニウムストーンの利用法が生まれたし、早速ニコラ師匠に任せてみよう
「ところで、ドラニウムストーンはニコラ師匠に一旦預けますけど、他に必要な物って何かあるんですか?」
「そうだな……これを使って反転錬金では良い物を作るのは少し難しいだろうから、やはり良質な金属は必要だ。それ以外の物は揃っていると言って良い。てな訳でハチ。確かミスリルあったよな!ちょっと頼めないか?」
「分かりました。それじゃあちょっと行ってきます」
まじでオートマトン島は僕にとっての生産拠点と言っても良い。ミスリルが使い放題ってやっぱりぶっ壊れと言っても良いよなぁ……
「はい、持ってきました。ピュアミスリルの量産体制もある程度出来て来たらしいので、ピュアミスリルを貰ってきました」
「これは……失敗したら私のせいだねぇ?」
「そりゃあそうでしょう。失敗したらせっかくオートマトン島の皆が丹精込めて作ったピュアミスリルが全部……あぁ、皆悲しむなぁ?」
「ハチ、そのプレッシャーの掛け方はズルくない?」
まぁ分かってて僕に頼んで来たんだろうけど
「え、だってニコラ師匠がこの程度で失敗する訳無いじゃないですか。僕は師匠の事信じてますから」
「だからぁ!更にプレッシャーを掛けないでよ!でも、やってやるからね!」
やる気は充分。ニコラ師匠達の部屋で錬金するみたいだし、ついて行こう
「ハチ、クオン教えた事全部覚える!凄い!」
「マスター。マイさんから新たな知見が沢山得られます!凄い!」
教えて凄いと教わって凄いかぁ……いやぁ2人共可愛いなぁ?
「2人共、これから錬金術で新しい金属を作るみたいなんだけど、どう?一緒に見て行かない?」
「行く」
「行きます」
ギャラリーが増えたねぇ?
「さて、それじゃあ始めるわよ!このスーパー大錬金術師のニコラ様の手によって、この素材達は更なる高みに駆け上がるのよ!はっ!」
「「「えぇ!?」」」
豪快。頭に浮かんだのはその一言だ。普通に両手に素材を抱えて錬金釜に全部同時にぶっ込んだぞ?
「そう!普通は何回かき混ぜて、温度が何度でなんて色々しなきゃいけないけど、今のこの私にはそんな常識は関係ない!ハチのお陰で色んな存在と伝手が出来たから色々と凄い物が出来上がっているのだ!」
なるほど、ニコラ師匠はニコラ師匠で伝手を作って、色々集めて何か作ったらしい。それのお陰でまたなんか進化してるみたいだけど、成功するなら何でも良い
「ドラニウムストーンとピュアミスリルかぁ……どんな物になるんだろう?」
他にもなんか色々入れてたけど、多分安定剤みたいな扱いでメインの素材っぽくなかったし、基本的にはこの2つで行くんだろうけど……そう言えばピュアミスリルのインゴット持って来た分全部入れちゃってたけど……比率的にドラニウムストーンが1のピュアミスリル10程度だけど……比率的にその位が良いんだろうか?なんとなく1:1が良いんじゃないかと思ってしまうけど……
「まぁそこで見ているが良い。多分ハチの事だから比率が良くないんじゃないかと思ってるかもしれないけど、素材本来の力を引き出す為の比率というのもあるんだ。大きさが一緒だからと言って、それが同等の量とは限らない。同じ大きさに見えても素材が違えば重さは違うし、密度も変わってくる。だから今回の私のこの比率がベストだと感じたからこの量を投入した」
ペットボトルいっぱいの水とペットボトルいっぱいの水銀とでは重さが違うから、重さを合わせる為には水の方を増やさないとつり合いが取れないとかそういう感じか。だとしたら、この差があっても不思議じゃない。なんだろう。クオン関連の事を進めようとする時の師匠達が突然有能で眩しく見える……
「なるほど、なら信じて待つしか僕には出来ませんね」
「あぁ、凄いのが出来る予定だから待ってろよ!」
うぉ……魔力の渦みたいなのが巻き起こってる。これは凄い。やっぱ本気を出すと師匠達って本当に凄い人達なんだなぁ……いっつもはおやつを貪ってるだけのごくつぶ……こほん。いつもはコンディションを整えてただけなんだなぁ?
「出来た!」
その言葉と同時に鍋から爆発音と煙が出て、煙が晴れた頃には釜の中に色んな色に煌めく10個のインゴットが並んでいた




