点てちゃう人
「魔蟲の森も久しぶりだなぁ……確かに警戒しちゃうけど、こっちから手を出さないで穏やかな心で居れば向こうもそんなに敵対して来ない様な気もしますねぇ」
「いや、あの……その……」
「ん?」
目の前をデカいムカデが横切って行ったけど、そこまで気にしなくて良いと思う。そもそも虫除けの匂い袋も持ってるんだし、警戒しなくても良いよね?
「いやはや、これがですか……」
「おっと、止まってください。多分この辺、何かの巣が地面の下にあるみたいで、下手にここを歩くと多分地面が落ちます」
ここは迂回した方が良いかな?いや、多分これなら突っ切った方が早いかも
「えっと、どうしましょう?迂回をするか、一応……このまま進む方法もありますけど……」
「それならここを突っ切った方が早いのでは?」
「じゃあ、失礼しますね?」
「ふぇ?」
リッキューさんを持ち上げて背中から線深淵で周りの木や、地面に突き刺しながら前に進む。これならこの巣の地帯を進む事が出来るし、巣から何か出てきたとしても、線深淵で対処する事も可能だ
「ななななっ!?」
「こうしないとちょっと進めないので……もう少しお待ちください」
えーと、オーラ的に近くに反応は無いから奇襲は多分されないかな?とりあえずは木に刺した方で体重を支えて、地面の方は安全確認が主だけど、もう少し進まないと危ないよな
「た、た、た……点っちゃうー!」
「へ?」
急に腕の中でなんだ!?
「こんなの野点ちゃうー!」
「ふぁ!?」
急に茶碗と茶筅を取り出して抹茶を作り出すリッキューさん。激しく動いてないから抹茶がこぼれる様な事は無いけども……これはやっぱりハスバさんのフレンドだけあるなぁ?
「えっと……とりあえずもう問題無いので降ろしますけど……大丈夫ですか?」
「はぁ、はぁ、はぁ、ごくっ……ふぅ……うむ、良い出来だ」
あ、落ち着いたのかな?落ち着かせる為に野点をして出来たのを飲んで落ち着かせる……いやはや凄い落ち着かせ方だなぁ……
「えっと、この先直進で良いんですよね」
「あ、あぁ……このまま進んで行けば問題無い。先程は失礼した。一杯如何かな?」
「あ、今は良いかな……まずはコトブキチャノキを採りに行きましょう。それが採れてからお茶にしましょう」
そういうのは目標のアイテムをしっかり確保してからの方が良いだろう。お茶の木を何とか回収して空島に持ち帰って育てたいよなぁ……それが出来ればリッキューさんにとっても悪い話じゃないだろうし
「おっ、景色が変わって来た。ここかな?」
森を進んで行くと、木がほぼ無い所に出てきた。そして目の前に崖
「あっ、アレだ!」
リッキューさんが崖の中腹辺りに何個か生えてる小さめの木を指差す。あれかぁ……確かにアレを取りに行くのは大変だなぁ
「何か採取する際に気を付ける事とかありますか?」
単純に取りにくいだけなのか、それとも採取する時に何か必要な手順とかがあるのかは知っておきたい
「葉を取る時は可能な限り素早く……」
「あ、そっちじゃなくて、コトブキチャノキを木ごと採るのに何か気を付ける必要があるのかなって」
「え、あ、えっと……取った後は速やかに水の中に入れる必要があるので、こちらの水桶の中に……」
「なるほどね。じゃあこれで良いか」
深淵をドリル状にして、コトブキチャノキが生えている周りの岩場を掘削して取れた瞬間泡沫バッグにコトブキチャノキを仕舞う
「これで問題無いかな」
「あえっ……あぁ問題無い。これで採取出来た……うっそぉ、こんな簡単に、というか普通に崖を歩いて登るって……」
コトブキチャノキがなんでこの時期しかないのかは分からないけど、とりあえず確保は出来たからやるべき事は出来たかな?
「因みに、このコトブキチャノキってなんで、この時期しか取れないんです?」
「あぁ、コトブキチャノキは一定まで成長するとメチャドクガという虫によって食べられてしまうんだ。但し、そのメチャドクガによってコトブキチャノキは他の場所で新たに芽吹く事になるからコトブキチャノキを見つけられる事自体凄くめでたいと言われているんだ」
なるほど、今はまだ食べられてないけど、多分今が食べられるかどうかギリギリというラインなのか。となると、さっさと逃走する方が良さそうだな
「じゃ、メチャドクガにバレる前に逃げましょう。名前から察するにも凄い毒を持ってそうですし。こういう時に欲張ってもっと持って行こうとしたら絶対襲われると思うんで」
こういう時に引き際を間違うと絶対面倒な事になるから1つ確保出来たら即撤退するべきだろう
「ん?今の手際ならもう一つ位楽に行けるのでは?」
「そういうのならご自分でどうぞ。因みにこの木は差し上げますがまだ欲しいのであれば、そこから先は自己責任でよろしくお願いします」
「あっ、なんでもないです……」
「分かれば良いです。さ、帰りますよー」
「あっ!またさっきの……」
「もう面倒何でここから持って行きますねー」
「あっ、あー!また点っちゃうー!」
この人結構面白いなぁ……




