繕廻玉のその先へ
「早速始めるわね」
「やりますかー。にしてもこんなに……もったいないなぁ……」
そうは言ってもしっかり手は動かすニコラ師匠。どっちの師匠もそうだけど、やる事はしっかりやってくれるからなぁ……
「「せーの!」」
10個の宝石が魔法陣の上に置かれて、二人が魔法陣に向かって魔力を流すと、上に置かれていた宝石がドロドロに溶けて1つに集まっていく。あぁ……綺麗な色だった宝石の色が混ざって行って色合いが……
「やっぱり10個はちょっと難しいわね……」
「もう少し出力を上げる?」
「そうね。もう少し出力を上げないと、10個を纏めるのは難しいかも……」
僕に対して話しかけてるって感じではないな。とりあえず邪魔しない様にしておこう
「うわっ!なにこれ!?」
「マズイわね……魔力が漏れてるわ」
「じゃあ、これでどうですかね?」
なんか魔力が漏れてるらしいから魔法陣と2人も一緒に全体を深淵で包む。多分、これなら多少は魔力が漏れにくくなるとは思うんだけど、どうかな?
「わぁ……やっぱりアンタ本当に人間?」
「凄いわね……こんな事も出来るなんて。でもこれなら何とか形に出来そうだわ」
深淵に僕の魔力を纏わせる事で、物理的な壁と魔力的な壁を用意する事で逃げにくいだろうし、これなら何とかなるだろうと思ったけど、ニコラ師匠には後で、目の前でフラーメルさんにだけお菓子をあげる刑に処すか
「クズ宝石8つまでならやった事はあったけど、しっかりした宝石10個だとここまで難しくなるのね。これは興味深いわ……」
繕廻玉自体修理用っていう、結構専門的なアイテムだし、しかも修理だとしても再生させるというのは割と無いだろう。それに、一回作っちゃったら普通に何回でも使えそうだし、作った事がある人とか作る機会もあんまり無いのかも?
「アンタ武器使わないし、こんなの作って意味あるの?」
「出来る事を増やす為に作ってもらってるんだよ。他の人の武器防具の修理とかを出来る様にね」
「ふーん……そうなんだ」
「今はまだ集中しなさい。まだどうなるか分からないわ。完全に完成するまでは気を抜かないの」
「はーい」
まだ完成はしていないから気を抜かないフラーメルさんはホント頼りになるなぁ……ニコラ師匠にも何かチラつかせればもう少しやる気を出してくれたりするかな?
「頑張ってくれれば、ここにパンケーキが……」
「しゃ!本気出すぞー!」
ホントにこの師匠達はさぁ……
「あら、随分魔力が増えたじゃない。これだけ出来るなら何とかなりそうだわ」
さぁ、上手く行くかなぁ?
「来た来た来た!これ来たー!」
大分興奮してるみたいだけど、これは上手く行ってるのかな?まぁ反応的に失敗しそうな雰囲気ではなさそうだ
「ふぅ、何とかなったわ。このドームのお陰で何とか魔力が分散し過ぎないで何とか形に出来た……はずよ」
んー、なんだ?何か言い淀んでるな?
「何か、ありました?」
「うーん、やっぱりこれは普通の繕廻玉ではないかも……性能を見る感じ、繕廻玉とは言えない性能をしているわ。これなら別の名の方が良いかも……」
「通常の繕廻玉に比べて、どういった性能になったんですか?」
これはなんとなくだけど、僕がこの完成品を手に取って見てしまったら、このアイテムは繕廻玉として確定してしまうかもしれない。でも、僕が見る前に新しい物として名付けてもらえれば、これは繕廻玉ではなく、新アイテムとして認められる可能性がある。だから、僕ではなく、フラーメルさんに見てもらう事が大事だ
「そうね。通常の物は自分の体力や魔力を使って装備の欠けた部分の修復が出来るのだけど、これはその変換効率と修復速度が上がっているわ。それに……多分、これで修理と言うか、装備再生をしたら何かしら追加効果が発生するかもしれないわね」
「おー……えぇ?大分変わってますね?」
んー、待てよ?これって、実は繕廻玉本来の能力はこれくらいある物なんじゃないかな?
「ええ、これはかなり凄い物よ。もしかすると減ってしまった耐久値の上限とかも少量であれば回復する事が出来るかもしれないわ」
耐久値の上限回復……それはまた中々のヤベー能力なのでは?ある意味耐久値がある装備を無限に使用出来る様になるんじゃないか?
「クズ宝石じゃなくて、ちゃんとした大きい宝石を使えば何かしらの能力を追加出来るってみるのが良いかも……それをあれだけ使ったんだからそりゃあとんでもない能力が付いてても不思議じゃないでしょ?そ、それよりもさぁ?」
「へい。あ、フラーメルさんもどうぞ。お疲れ様です」
パンケーキを2つ出して、2人に渡す
「性能的には繕廻玉とは完全に別物っぽいですね」
「まぁ、繕廻玉と言うよりは全開玉?」
「え、あぁ……漢字違いか。全開玉……いやぁ、もしかしたら、この世の全ての宝石を使った物こそ全開かなぁって思いますから、これはどうするべきかなぁ……何か付けるなら良い名前あります?」
こういう時は任せた方が良いかな?
「そうね……これは修復の為の道具ではあるけど、ある意味修理する度に色々な能力が付与されるかもしれないから、輪転玉とかどう?」
輪転玉かぁ。結構良いかも




