どこ行くクラゲ
「綺麗だけど……ん?」
なんかあのクラゲ……めっちゃ他の生き物に齧られてない?
「あのクラゲってもしかして生態系の中でも大分下の部類か?」
大分小さい魚とかにも傘の部分を齧られてるけど抵抗らしい抵抗はしていない。逆にその魚を食べようとする感じもなさそうだし、抵抗する手段を持っていないのかもしれない
「おぉ、再生してる……」
クラゲを齧っていた魚が居なくなったら、齧られていた部分を再生して元通りの姿に戻るクラゲ……いや、中の宝石がさっきは赤だったのに、青に変わってる。これって再生する度に宝石が変わったりする可能性もある?
「普通に興味深いなぁ……」
まさかの食べられない様に抵抗するんじゃなくて、再生する事で、食べられた事実を上書きするというか……さっきから大きな生物を見ないからその辺も影響しているのかもしれない。面白い生態だなぁ?
「でも、クラゲだし、やっぱり意思の疎通とかは無理かなぁ?」
まぁ、言語とか喋れそうな感じではないよなぁ……
「む?なんだアレ……」
ジュエリーフィッシュがなんか他の所に比べるとかなり群れている気がする。あれは何だろう?ちょっと泳いで行ってみよう
「おぉ……凄い。色々宝石が見える……」
ジュエリーフィッシュの集団。ダイヤ、ルビー、サファイヤ、等々、色んな色の宝石が見える。このジュエリーフィッシュ達から宝石が採れると知られたら、乱獲されそうでちょっと怖いな……
「いや、なんか……なんかあの中に違うの居ないか?」
あのジュエリーフィッシュの集団の中に何か違う奴が居る気がする。確認してみるか?
「ちょっと失礼~。もしかしてなんか隠してるのかな……えっ、えっとぉ……失礼しましたぁ~」
オーラ的に集団の中心に何か周りのジュエリーフィッシュよりも強力そうな、気配を感じたので手でジュエリーフィッシュを掻き分けて中に何か居るのか覗いてみたら……クラゲっぽいけど、クラゲじゃない何かと目が合った
「……」
「やっべ、出てきた……なんだコレ?」
ジュエリーフィッシュ達の中から何か形が微妙に違うのが出てきた。クラゲの足部分がそこらへんの奴と違ってヒョロヒョロじゃなくて、結構太いな……目が合ったと思ったけど、あれは傘の部分の模様だったのか
「おぉ?な、な、な、なんだ?」
「……」
なんか触手で体をペタペタ触られてる。宇宙人との遭遇みたいだな……どうしよう。下手に動けばコミュニケーション方法が分からないで暴れるとかもあり得るし、とりあえず相手が満足するまでこのままにしておこうか。もし僕を害するというか、攻撃行動をしてきたら申し訳ないが、拘束するしかない
「ちょ、くすぐった……そ、そこは、やめーい!」
「くすぐった……やめ……」
おっ?なんか僕の言葉を真似してきたぞ?
「おぉ……これはもしかして僕の真似をしてる?こんにちは」
「こーにちは」
おー、徐々に姿が人の形に近くなってきた。もう少しで形が定まりそうだ
「僕はハチ。君の名前は?」
形状が纏まったのか、変化が止まったので聞いてみる。クラゲの帽子とスカートみたいな形状を纏った感じだ。いやぁ、誰もが羨む透き通る肌(物理)ですよ?
「名前……クラリ」
クラリ……クラゲとジュエリーフィッシュから取ってるのかな?まぁその辺は分からないけど名前が付いてるならこれからはそう呼んだ方が良いのかな
「えっと、クラリさん。この辺に居るクラゲ達の持ってる宝石が欲しいんですんが……あんまり倒すとかはしたくはないなって……」
どうかなぁ?これで上手く行くかどうか……
「石?これ?」
「わぁ……」
クラリさんのスカートの裾部分に色んな宝石が並んで出てきた。しかも石って言ってるし、多分価値が分かってないタイプだこれ
「そう、それなんだけど……」
「……」
僕の顔と宝石を見比べて、黙るクラリさん。まぁ、こっちから何も提供してないし、そりゃあ止まるのも無理はない
「そうだなぁ……何か欲しい物とかあるかな?それと交換っていうのはどう?」
「交換……分かった。なら、もう少し触る」
そう言って、顔やらお腹やらをペタペタ触ってくる。これで良いのであればまぁ、楽と言えば楽かもしれないけど……
「これは、何の意味があるのかな?」
「ここじゃない、新しい所に行く。だから、色々知りたい」
ここじゃない新しい所……何処に行くんだろう?多分、この地底湖?で良いのか分からないけど、ここから何処か別の所に行くって言うのはかなり難しい気がする。もしかしてジュエリーフィッシュって生態が蜂に似て分蜂的な事でもするのか?それでクラリさんに付いて来たのがこのクラゲ達みたいな事とか……流石にそれは無いかな?
「新しい所ねぇ……それはやっぱり水の中じゃなきゃ難しいかな?」
「水の外があるの?」
あ、いやまぁそれもそうか。普通に考えてこんな地底の更に下の閉鎖的な空間で生きて来たクラリさんが外の世界なんて知っている訳が無い。陸上なんて知識が無くても不思議でも何でもなかった
「まぁ、水の外から僕が来た訳で……」
「その知らない所。行ってみたい」
「うーん、僕は構わないけど、連れ出して良い物か……」
「この石、時間が経てば、何個も取れる。これあげるから、行きたい」
まぁ、取引としては問題は無い……かな?




