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誘導の紙

「え、なんで……」

「……」

 脅かし役の人に聞かれない様に小声で菖蒲さんに伝える

「多分こういうのって、先の人は特に何も無くて、後の人が怖い目に遭うみたいな物だと思いますよ?」

「なるほど!じゃあお先に……うひゃあっ!」

 なんか可愛い声出ちゃってるなぁ?


「今!いまいま、手に何か触れました!」

「まさかぁ、別に何かある訳無いじゃないですかぁ。どうせこんにゃくか何かでしょ?」

 あえて、大きめの声で言って、思いっきり自分でフラグを立てて行く。こうしておけばさっきよりもっと驚かそうとしてくるだろう


「わぁ!」

 箱の中に手を入れると、僕の手を色んな方向から掴まれる。これは中々に怖いな。まぁ、心の準備をしていたし、そう仕向けたんだからある程度は想定していたが、この手に伝わる感じから察するに、箱の中で2人に手を掴まれたってとこかな?じゃ、握手し返しておこうかな


「確かにこれは怖いですね……」

 握手した後、手の中に何か紙を渡された感覚が有り、そのまま手を箱から押し出された。なんだろう?と見てみたら、『祝』と書かれた紙が手渡されていたみたいだ。なんでぇ?そこ『呪』じゃないの?これ絶対間違えて書いたでしょ……


「な、何を手渡されたんですか?」

「いや、普通に怖い紙を渡されたので、見ない方が良いですよ。あ、もう出口みたいですね」

 箱から手を出すと、目の前の門は開いた。あ、これで終わりか。まぁ、教室を使ってここまで雰囲気出すだけでも凄いから、短いけど中々に恐怖心は煽られたと思う。これは面白かったな


「お疲れ様でしたー」

「あ、もうですか?結構短かったですね……」

「そうですね。でも、お化け屋敷としてはこれは普通に面白かったので、僕は満足ですね」

 門を出ると教室のもう一つの出入り口に繋がっているのか、係の人みたいなのが、立っていた。あと横にアルコール消毒のボトルも用意されてるし、さっきの触られたのが嫌な人向けの対処もされてるなぁ……


「すみません、この貰った紙って……」

「紙?そんな物渡してたっけ……あ、持ち帰って結構ですよ」

「えっ……」

 おぉ、これは上手い演出だ。お化け屋敷とかでそんな所に脅かし要素置いてないみたいな、後からアレはマジ物だったんじゃないかと思わせる演出をこうやって仕込んで来るか。ただ、係の人の目が泳いでいてバレバレな所以外は良いな


「その紙は後で捨てましょう……」

「あぁ一応、あっちで屋台とかやってますけど、そこにゴミ箱とかあるんで、もし、捨てるんでしたらそっちにどうぞ!」

「そうしましょう!」

 いやぁ、これは二段階で上手い。お化け屋敷の恐怖演出と、ゴミ捨てを促しながら多分、屋台への誘導も込みでやっているとは……凄いな。これは中々に商売上手だ。さっきまで目が泳いでいたのに、今の屋台への誘導はこっちを向いてスラスラと言っていた。これは流されるしかないな


「じゃあ、屋台の方に行ってみましょうか」

「そうですね!」

 いやぁ、どうしよう。菖蒲さんが賛同ボットみたいになってしまった。まぁ、否定されないならそのまま屋台の方も見て回ろう




「あ、ゴミ捨て場。ちゃんと分別されてますね。で、この辺の屋台と。ふむふむ、確かに良い誘導だ」

 ゴミ捨て場に一番近い所に3組の屋台が出ている。ちゃんと考えられてるなぁ?


「何かやるか、食べて行きますか?」

「そうですね。あ、でもそろそろ菖蒲さんも他のお友達と遊びたいでしょうし、この辺でもう大丈夫ですよ。ありがとうございました!」

「えっ」

 ゲーム内とかでも一緒に遊んでいるから、普通に一緒に遊んでいたけど、菖蒲さんは学校では人気者なのだから、当然一緒に回ろうと言っている人も多いだろう。それなのに、僕のカモフラージュの為にずっと一緒に歩いてもらうのは良くないだろうし、この辺で菖蒲さんは自由にしないと。じゃないと、なんか後ろに居る、男装女子集団にリンチに遭うかもしれない。とりあえずこの場を離れよう。これもリスク管理だ!


「それじゃ、また!」

 この屋台通りなら、菖蒲さんをその場に置いて、僕だけ移動する事も楽だろう。あの、男装集団が菖蒲さんと合流すれば、注目はそっちに集まるだろうし、メイド1人と男装執事数人なら皆の注目は執事に向かい、周囲に溶け込みやすくなるだろう。良いぞ。時間も経過して、盛り上がって頭に猫耳のカチューシャとか付けてる人とかも増えて来たし、メイド服という、明らかに浮く恰好も、多少は馴染んで来た気がする


「っていうか、普通にメイド服男子を見かけるな……なんだ?着替え禁止令でも出たのか?」

 スマホを見てみると、『着替えしないで、そのまま楽しもう!』みたいなノリで書かれた文が、結構あり、結果として、同調圧力的な物になって着替えてない人が多いのかもしれない。まぁ、その恰好は普通に話のネタにもなるし、お祭り気分ならそれもオッケーみたいな感じで、許容されてるのかもしれない。お陰で僕を見ても周りの人は驚く感じも無いし、ラッキーだな。このまま残りは1人で楽しむとしよう!



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― 新着の感想 ―
[良い点] 目が泳ぐ理由が本当に(紙?何それ知らん、怖・・・)の可能性を諦めない
[一言] ほう、いい誘導だ、参考になるなあ? と言うか、菖蒲嬢あっさり逃げられるの巻w ハチくん様の逃走術に追い付ける女生徒無しなのだ!
[良い点] 敗因:影人くんの腕に抱きついて拘束しなかった事。 まぁ、必要恋愛力が足りてなかったかぁ…。
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