ミニハプニング
「えっと、流石にその恰好で来るのはどうかと……」
「あ、ごめんなさい。外の呼び込みの時間が終わったので、その足で来ちゃいました」
うーん、それを言われると僕は何も言えない。呼び込みが終わったその足ですぐに来るとは……でも、普通に僕らは一応、賄いみたいな感じで食べられるはずだけど……まぁ、沢山食べたければお金を払って食べてくれというだけなんだけど……
「えっと、どうします?何か欲しい物はありますか?」
「それじゃあ、オムライスを1つ……」
「ケチャップ絵はどうします?」
「あ、それは別に……もうそろそろ時間ですよね?」
「まぁ、そうですね。そろそろ交代の時間です」
時間的には確かにもうそろそろ交代の時間だ。となると、フリーになるから色々見て回れるはずだ
「でしたら、後で来て欲しいんですが、大丈夫ですか?」
「あ、はい。分かりました」
何か他で手が足りない所とかあるのかな?終わったらそういう所の支援とかに行って手伝いに行くのもアリだな
「うーん……」
「ん?他に何かありましたか?」
「いえ……」
「そうですか。でしたら注文はオムライス1つという事で」
注文を通してこれで終わりかな。いやぁ、中々忙しかったけど、いい経験出来たかもしれない。驚くお客さんは居たけども、やっぱり、普段からスク水忍者頭巾とか、世紀末モヒカンとかを見ているから割と普通に対処出来た気がする。いやぁ、感謝感謝……いや、感謝か?慣れって怖いなぁ……
「はい、オムライス完成。残りが結構少ないかも……」
マジ?結構出たなぁ……オムライス完売も近いのか
「了解です。補充だったら、2階の角の準備室……いや、取ってきますか?」
「あぁ、あそこね。じゃあ取ってくるからそのままホールやってて!」
残り時間を荷物運びで終わらせよう作戦は流石にダメだったか。まぁ、残り時間も短いし、お仕事はしっかりやろう
「はい、お疲れさん。交代するよー」
「あ、ありがとうございます。じゃあ、後はよろしくお願いします」
菖蒲さんへオムライスを運んだりして、その後も仕事をこなして遂に交代の時間となった。これで自由時間だ
「ふぅ、さてと……」
「影人君」
「あ、菖蒲さん。どうしました?」
「えっと……ちょっと言い難いんだけど……」
ん?何だろう?何か言い難いって何が有るかな?
「もう少し、その恰好で居てくれる……かな?」
「ん?もう僕の担当時間は終わったから着替えても良いんじゃ……」
さっさと着替えて普通に見て回りたいんだけど……
「えっと……その……」
何だろう。何か隠してる感じだな?
「ん-、もしかして、僕のバッグに何か?」
着替えを待って欲しいと言われたら、何かこの恰好での仕事が残っているか、着替えを入れた僕のバッグに何かあったかの2択って所だろう。で、単純な仕事の手伝いであれば、態々この恰好で行く必要は無いだろうし、やっぱりバッグに何かあったと思うべきだろう
「その……影人君のバッグに飲み物が掛かっちゃって……」
「え?菖蒲さんが掛けたんですか?」
「違う違う!その場には居たけど、私じゃなくて、ちょっとした事故で、クラスの男子がカップのジュースを溢しちゃって……謝ろうとはしてたんだけど、丁度、係の時間が来ちゃって今は動けないから、私が現状の説明とかも込みで来たの。勝手だけど、先生の許可は得て、今は影人君の服を家庭科室の洗濯機と乾燥機で洗ってる最中だから少し着替えは待って欲しいって事で……」
あれまぁ、まぁ、カップのジュースとなれば、お祭りよろしく絶対シロップを混ぜたサイダーみたいのだろうから、放置すれば凄まじい色の染みになる事は火を見るよりも明らかだろうし、洗濯してもらえてるのはラッキーだ。むしろその判断を出来る菖蒲さんがその場に居た事を喜んだ方が良いだろう
「因みに、どういった事故だったんです?」
「ジュースを飲んでる時に呼ばれて、振り返った時に人とぶつかって、ジュースを落とした……って感じだったかな」
あー、それはやっちまった奴ですねぇ……聞いてる限りワザとではなさそうだし、バッグも確か服位しか入ってないハズだから服だけ何とか出来れば問題無いか
「じゃ、一応、見て回るついでにその人の所に行くだけ行ってみますか」
「一応……私も一緒に歩けば少しは目立たないかなって……」
あぁ、だから菖蒲さんは着替えてなかったのか。僕が一人でメイド服だと浮くから……いや、普通に学校でも人気で、しかも今男装している菖蒲さんと一緒に歩くというのは逆に目立つのでは?
「いや、でも……うーん……」
「もしかして、ダメ。ですか?」
「いや、そんな事は無いですよ?」
そんな良心から来る提案を断れる訳無いんだよなぁ……
「えっと、じゃあ、悪目立ちしない様に一緒に歩いてもらえると助かります……」
「分かりました!じゃあ一緒に色々見て回りましょう!」
まぁ、ゲームの中でも、女装……もっと言えば、女性になって行動した事もあるし、この程度は案外何て事無いか




