超純度魔金属の一歩
「よし、それでは!ピュー!」
口笛を吹いたヘックスさんの元に走ってやって来たオートマトンさん。犬かな?
「お呼びでしょうか?」
「あぁ、ハチが提案していた島ごとオートマトン化計画の心臓部が完成した。お前達が良ければこれをやろう。そして新たな仲間を1人増やす事になるだろう」
「なるほど、まさか本当に完成するとは……それでしたら是非とも新たな仲間を増やしたいです」
「ハチ、良いか?」
「勿論ですよ。で、さっきの金属の話は……どうしましょう?」
とりあえず島ごとオートマトン化の話は進めるとしよう。そうなると、さっきの魔石というか、魔金属?の話が立ち消えになってしまうと困る
「あぁ、そうだったな。これはやろう。但し、今ハチがやっている新しい金属を生成するという目的は完遂しろ。これが完成すると、確実にお前達のプラスにもなるだろう」
まぁ、上手く行けば今までにない新金属が生まれるだろうし、それを使った武装とか設備の可能性も増えるだろうから、中止はしないでもらいたい
「了解いたしました。現状はどういった状況なのでしょう?」
「そうだな。簡単に言ってしまえば魔石よりも魔力を更に濃縮すると言えば良いか?」
「魔力の濃縮……ミスリルとは違うのですか?」
「ミスリルではまだ純度が足りない。魔力そのものが形となるほどの純度でなければならない。99%ではまだだ。99.999%。とにかく限りなく100%に近い物を作るのだ」
何だろう。小数点以下の数がそれだけ並ぶと半導体の高純度フッ化水素みたいな物が頭に浮かぶ。なんだか思ってた以上に凄い事になってた
「なるほど。魔力の純度を上げても崩壊しない様に濃縮する……分かりました。ですが、それではまだ足りません。99.9999999999%程度までを目標に挑戦します」
「ほう?」
見た目は変わってないけど、闘志に燃えているというか、やる気を感じる
「ど、どうなっちゃうんだろう……」
やろうと思えば本当に出来ちゃいそうだから僕はこれに首を突っ込まないで任せた方が良いかな?
「素晴らしい。やはりそうでなくては!であるならば、協力は惜しまない」
「ありがたきお言葉。では我々のミスリル生成技術も流用出来る部分は流用してみましょう」
「あぁ、技術というのは交流する事で発展するからな」
まぁ、自分達の根幹みたいな技術を隠したい気持ちも分かるけど、こうやって協力出来る状態になった技術者は強い。武術だって他流派の者と戦ってより洗練されたりするし、交流は大事だ
「協力出来る事は協力しちゃいましょう。僕も何かあったら協力しますから」
これが完成したら凄く楽しい事になりそうだな?協力出来る事が有るか分からないけど、ここは勿論協力体制は作っておかないとね
「であれば、完成するまでもう少し日数を伸ばしてくれ。純度を更に高める為に1日では足りないかもしれん」
「分かりました。爆発とかしない辺りで頑張ってみてください」
純度を高めると言うのなら待ちましょう。これで現物が出来たらあの五鍛冶の人達に見せに行っても良いかな?
「了解しました。安全面に気を付けて濃縮をします」
「そうだな。この濃縮作業はこの魔力炉の性能を最大に活かせるだろう。上手く使えれば、更に能力を高める事も出来るかもしれないからな。追加パーツを作るなんて事もあるかもしれないな」
使い方が分かってきたら限界値アップとか、必要に応じた追加パーツを作ったりすることもあり得るってそういった強化も出来ちゃうのか。これは良さそうだな
「追加パーツですか。そんな物が作れる事になったら大変な事になっちゃいそうですねぇ?」
「あぁ、どうせハチが主導で事が進んでるんだ。世界をひっくり返してしまえ」
わぁ、凄い事言うなぁ……
「世界は別にひっくり返さなくても良いんじゃないかな?バラさないで僕らだけが楽しむ物で良いんじゃないですかね?こんなの普通の人じゃ作れないと思いますし」
まずこんな手の込んだ物を作ろうとする人が居るかどうかだよなぁ……元からある伝説の金属の装備を入手して満足って感じだろうし、自分で武器の素材を作ると言っても魔物の素材とか位だろうな……こんな新素材作成なんてしてる人他に居るかなぁ?
「まぁ、そうだな。これはそもそも知られなければ問題無いだろうし、知られたとしてもここを制圧でもしない限り作る事は出来ないだろう。ここを制圧しようとするのであれば、確実にハチと敵対する事になるだろうし、それがどれだけ不利益をもたらすのか分からない人間がここまでやって来る事もまず無理だろう」
まぁ、僕と敵対はする人が居ないかどうかは正直微妙な所だと思う。色々と僕に恨み?とかある人が居ない訳では無いだろうし、やっぱりここの防衛力を上げる為にも……堂々巡りだこれ
「それじゃあ、新金属の開発はお任せしますよ?」
「分かった!」
「任されました!」
冥界で作った色々合わせた合金ではなく、新しく最初から作る金属……これは完成が楽しみだ!




