限界突破
「そ、そうだハチ君。あのイベント後に入手した職の【ウェポンコンダクター】。あれはとても強いぞ?」
ロザリーさんが第二の職を選んだ後、僕に話しかけてきた。若干ぎこちないというか何というか……いや、仕方が無いんだけどさ?あの時だけで全てが収まるとは思っていない。あの場では菖蒲さんが許したから自分も許す……とは言ったものの、根っこの部分ではまだ許せないという可能性もある
「ど、どんな感じなんでしょう?」
いけない、僕もぎこちなくなってしまった
「武器を操って攻撃する事が出来るんだぞ?」
「それって普通の事なのでは……?」
武器を操って攻撃するのはどんな職でも一緒では?あ、僕は武器らしい武器は使って無いけど
「こういう事だ」
ロザリーさんが剣を3本、鞘から引き抜く。そしてその剣が空中に浮く
「うえっ!?凄い!」
3本の剣が三角形の形になったり、Yの字、川の字と空中で色んな形をとる
「これで攻撃出来るんだ」
「旅人様?その辺にしていただけないですか?それ以上暴れられるとハチ様に直していただいた長椅子等がまた壊れてしまうかもしれないので……」
僕達の会話を聞いていたシスターさんが一度こっちの方にやって来た。そしてロザリーさんを静かに叱る
「す、すみません!」
「ごめんシスターさん。ちょっと見せてもらってただけで……壊れちゃったらまた素材を取って来て直すよ」
「そう言う事では無いんですけどね……教会の中は基本的にはお静かに」
「あ、そう言う事ですか……ごめんなさい」
壊れたら直せばいいと思っていたけど根本的な所で教会の中で騒いでいた方で怒られちゃったか
「でも、凄いですね?自在に3つも剣が操れるなんて」
「本気を出せば5本は操れるが、【ウェポンコンダクター】は魔法が使えなくなるんだ。だから【マジックフェンサー】で行くか、【ウェポンコンダクター】に乗り換えるか迷っていた時にこの話だ。ステータスが変わらずにスキルが使えるのだからメインを【マジックフェンサー】でサブに【ウェポンコンダクター】にする事で魔法攻撃とこの剣でより多数を相手取る事が出来る。君には感謝しなければ」
イベントで見た範囲攻撃魔法とレイピアの攻撃に加えてこの浮遊剣とか僕はもう攻撃を捌き切れる自信が無い。誤解……?は解けたから多分イベントの事を怒ってはいないと思うけど、もし無自覚の内にロザリーさんの逆鱗に触れちゃった場合は……うん、考えない様にしよう
「私は【妖術士】を取ってみました。魔札が必要になりますけどこれで遠距離にも対応出来ます!」
アイリスさんの第一の職が何かは知らないけど刀を使って攻撃していたし、札を使って魔法を使うあたり東洋の魔剣士的な?結構良いかも
「急にセカンドジョブが解放されたら何を選ぶべきか悩むな?今の所は【戦士】にして大剣も扱える様にしてみたが……」
ハスバさんは【戦士】を第二の職にして大剣も扱える様にしたと言った。つまり四王剣の全てを使いこなそうって事なんだろう
「俺自身に攻撃力が足りてないと思っていたからな。サブジョブはありがたい」
皆結構第二の職の言い方が違うんだね。ダイコーンさんは何を選んだのか分からないけど戦闘職を取ったんだろう
「あぁそっか。第二の職に生産系の職を入れれば出先で武器の修理とか生産とかも出来るのかな?」
生産系の職を入れれば、今まで自分が作った物よりももっと良い物を作る事が出来るかもしれない。そう考えると生産系の職を入れるのも考えても良いかも?
「皆さん無事に第二の職に就けたようですね?」
「「ありがとうございますシスター」」
「「感謝しますシスター」」
4人とも膝をついてシスターさんに祈りのようなポーズをする。第二の職に就けた事がかなり嬉しいんだなぁ……
「では皆様、他の教会にこの手紙を持って行ってくれますか?」
「「「「御意!」」」」
なんだこの空間……
「そういえばシスターさん?なんか第二の職に就くのに条件があるみたいな事言ってませんでした?」
「あ、ハチさんのお友達さん達は既に条件を達成していたので伝えるのを忘れていました」
テヘペロと言わんばかりの表情をするシスターさん。可愛いけどさ?
「で、その条件って?」
「職の第一限界を突破している。です」
「第一限界を突破している……30レベルになった時の☆マークが付いたのが第一限界?」
「旅人様だと確かに30レベルで一旦限界が来ますね?でも安心してください。第一限界は教会で突破する事が出来ます!」
「おぉ、それなら突破して欲しいかな?」
「寄付が必要になりますが……」
がっくりと床に手をつく。ここでお金が必要になるのか……
「ハチさんはこの教会の掃除や修復をなさって下さったのでお金は頂きませんよ」
自然にがっくりと地面についていた両手を上に持ち上げガッツポーズ。やったよ!教会の修復クエストをやっていたお陰で僕も限界突破出来るよ!
「ありがとうシスターさん!」
僕も他の皆がやっていた様に、祈りっぽいポーズをしてシスターさんに感謝する。ありがたやー