クタルファ
「全く、あの馬鹿者は貢ぎ物とゴミの区別もつかんのか。馬鹿な信者を持つと困るな……」
「おちょちょーい!ストップ!ストーップ!またれーい!」
でっかい吸盤の足で潰されそうになったので、大きい声で止める
「なんだ?今回のゴミはいつもの奴とは違うな?」
「この尊大な態度と存在感……やっぱりニャラ様と似てる気がしてならない……」
「ん?おい、今お前。何と言った?」
「ニャラ様……ニャラートホテプ様と似てるって言いました」
「ほう?奴の知り合いか!」
おっ、これは……どうなんだ?好感触と言うべきなのか、なんかマフィアみたいに、「ハハハハ、殺せ」みたいなタイプか?
「【ジェミニ】」
このタイミングで使えば出て来てくれないかな?
「おやおや~?これはこれは……海底のヒッキー君じゃ~ん?」
「深淵のヒッキーが何を言っている?」
わぁ、僕の呼び出した【ジェミニ】がぐにょぐにょと形を変えてあまり大きくは無いけど、ニャラ様の姿になって、タコを煽り始めた……と思ったらタコも煽り返して来た
「「ほーん?」」
わぁ、バチバチだぁ……これヤバいかもしれない。こんな状態になったら即戦闘になっちゃうんじゃないかこれ?
「おい、そこのお前」
「はい。ハチと言います」
「ハチ。お前はそこのニャラの眷属か?」
「いえ、違いますけど?」
「何?」
あぁ、僕がニャラ様を呼び出した様なものだからそれで驚いてるのか
「単純に友達と言いますか、特訓とかしてもらってる仲ですね。それにたまに力を貸してもらったりもしますが……」
「はぁーーー?人間に手を貸すゥ?お前がぁ?」
めっちゃタコが驚いてるし、攻撃しようとしていた手も止んだ。一旦何とかなったか?
「タコ頭には分からないだろうけど、こいつは超面白いからなぁ?何度も勧誘はしてるんだけどなぁ~?全然靡いてくれないんだよなぁ~?うりうりー」
「いや、離してくれません?」
可愛らしく言ってるみたいだけど、黒い触手が絡み合った人型のモンスターに頭を掴まれて耳とかから触手を突っ込まれそうになってるかなり悍ましい見た目になってる気がするんですが?
「ほう?」
「普通の人間じゃまずこの段階で終わってるはずなんだけどねぇ~?」
「普通の人間じゃ終わる様な事しないで欲しいんですけど?」
多分終わってるって発狂するとかそういう事だよな?そんな事を平気でしてくるのが本当に加減を知らない神っぽい所だと思うけど、僕の首を捩じ切ったりはしない力加減は出来てるから何とも言えない……
「ほほう?肉体の耐久値はゴミ並みだが、精神の方はニャラに攻撃されても平気か……ふぅむ」
ニャラ様の知り合いで、タコで、海底都市の真の支配者……ひょっとしなくてもこのタコはあの神話生物みたいな存在だよな?
「おいハチよ。我、クタルファの眷属になれ」
「え、嫌ですけど……」
「あっはっは!こっちの誘いを蹴ってるのに、お前の眷属になる訳無いじゃ~ん!やっぱバカじゃね?」
「なんだとぉ!お前も眷属に出来ない癖によぉ!」
この2人はお互い煽らないと気が済まないのかなぁ?
「何でそんなに眷属にしたがるのか良く分からないんですが……」
「いやいや、あんな色々繋がりを作ってるハチ君がそれ言っちゃう~?」
「……」
そう言われるとちょっと弱いな。確かに色んな繋がり……僕の場合は友達とかだけど、ニャラ様クラスになると眷属って考えが普通になるのかな?
「ま、面白いおもちゃに自分の名前を書いておくって感じだけど」
「いつか絶対にニャラ様の事ぶっ飛ばしますね」
ニャラ様を楽しませるつもりは有るけど、ニャラ様のおもちゃになるつもりは無い
「おっほ、これこれぇ!この状況でこれを言える反逆精神!ん~たまんねぇ~!」
まぁ、確かにこの状況ならいつでも簡単に首捩じ切る事も可能だとは思うけど、それをするニャラ様ではないだろう
「単なる命知らずか?」
「いやいや、ハチ君はそんなモンじゃないのよ~。追い込めばドンドン成長するからこれが楽しくてさぁ!」
「ちょ、いきなりは止めてくださいよ!?ゼロ距離対応は結構難しいんですから!」
撫でていた触手に力が入るのを感じたので、即座にその触手を手で払いのけたり、深淵で受け流す
「おい……今何を……」
「これが出来ちゃうのがハチ君なんよ~」
「今のは……どう見ても人の技では無い……地上にはこんな奴らが沢山居るのか?」
「いーや、それは無いね。ハチ君はやっと見つけたと言っても良い超貴重な原石さ」
そう言われるとちょっと嬉しい
「ふむ、となるとますますこの場から返す訳には行かなくなった。お前を我が手に収めれば海底都市は更なる繁栄が見込めるだろう」
これって、つまりクタルファさんが強制的に僕をこの場に縛り付けようとしてるって事か?
「ニャラ様?」
「ん?どしたんハチ君?」
「同居人欲しくないですか?」
「え、ハチ君?ちょちょちょい……何しようとして……」
「アビス様ー!新しい住人をどうか受け入れてくださいませー!【アビスフォーム】」
深淵を身に纏い、自分で出せる限りの深淵を出す。今ならアビス様と同化している様な状況だし、行けるんじゃないか?
「ぬぉ!?なんだこれは!?」
クタルファさんがまるで掃除機に吸われるみたいに深淵に吸われていく
「「やめろぉ!」」
おかしいなぁ……吸っているのは1体のはずなのになんでニャラ様も叫んでるんですかねぇ……




