黒歴史?
「そうだハチさん。教会としての役割を果たすまでもう少しですよ。お願いを聞いていただけますか?」
「おっ?後少し?」
これで教会の復旧が終わった途端に結界が張られて外に弾き出されたら泣く自信がある。流石にそんな事は無いと思うけど……
「はい、【職の本】という物なのですが……それが無いと旅人様の転職が行えないんです」
『【職の本】の回収』
なるほど、そういえば教会で転職が出来るって言ってたな?その本が無いからここでは転職が出来ないと……
「あっ、ちょっと待っていてください」
モニクが外に出て行く。なんだろう?
「あの、【職の本】ってもしかしてコレではないですか?」
モニクが大事な本と言っていた本を持って戻って来た。そういえば教会から持ち出されたとか言ってたっけ?
「あー!?それです!いったい何故貴女が?」
「ロザリオもそうですが、廃坑に住み着いた時に中に居た魔物が一度何処かに行ったと思ったらロザリオと本を持ち出して来てしまったみたいで……」
モニクが悪魔だったから廃坑に居た奴らがボスとして祀り上げた……的な?献上品を集めに教会に襲撃しに来た……と。これはまた凄い因果だなぁ?
「ごめんなさい!この本お返しします!」
悪魔がシスターに土下座するとか滅多に見られる物じゃ無いぞ?
「本当にこの子悪魔なんですか?」
シスターさんがこっそり小声で僕に話しかけてきた。その気持ちは分かるなぁ……
「称号で悪魔憑きとか貰ったんで悪魔なのは確かだと思います」
称号として【悪魔憑き】を獲得しているのでモニクは確実に悪魔である事に変わりはないハズだ
「なるほど……モニクさん?この本は読んでみましたか?」
「はい!結構面白かったです!」
「職の本って面白いの?」
職業案内的な内容でも掛かれているんだろうか?
「面白い……ですかね?でも返してくれてありがとうございます」
シスターさんが疑問形なのか……
「ページが欠けたりは……あら?」
シスターさんの前に職の本が浮かび、ペラペラとページが捲れる。そうしてページの破損や欠落が無いか確認していると一枚の紙がひらひらと落ちた
「これは……」
「あっ、それは」
モニクが落ちた紙を拾おうとするよりも先にシスターさんの念動力か何かの力で紙が浮かび、シスターさんの目線の高さに止まる
「……これはモニクさんが?」
「はい……私がその本を見て、考えた内容を纏めた紙です……恥ずかしいので燃やしてください」
顔を覆って恥ずかしがるモニク。燃やしてくださいって黒歴史的なアレだろうか?
「なるほど……これは、燃やせませんね?」
「な、何故です?」
「これは新しい可能性の塊です!私もこの理論の理解を深めれば転職以外の事も出来るかもしれません!モニクさん!協力してくれますか?」
「は、はい!」
何やら話がドンドン進んでいるけど僕は置いてけぼりだ。会話を邪魔するのも良くないだろうし、黙って行く末を見守ろう
「職の本とロザリオが戻ったので教会としての機能は戻りました!ですが、新しい風が吹き込んでいるのでハチさん。少々時間を頂けないでしょうか?」
僕に向かって時間をくださいと言ってくるシスターさん。ただ教会としての機能が戻っただけじゃなくて何か追加で起きるみたいだし、待ってみようか
「それって職関係で何か新しい事が起きるって期待しても良いのかな?」
「はい!」
「じゃあ人を呼んでも良いですかね?」
何か起きるって言うならフレンドを呼んでみるかな?
「ハチさんだけでは心配なので出来れば呼んでくださった方がありがたいですね」
「酷くないです?」
時折シスターさんが僕に厳しい
「ふふっ、ハチさんのお友達さんを見てみたいというのが本音です」
「あぁ、そういう……」
大丈夫かな?呼んでも来てくれるか分からないけど、2人は綺麗だけど残りの2人はインパクトが……
「とりあえずフレンドを呼んでみます。外で待ってますね?」
「分かりました。ではモニクさん?お手伝いをお願いします」
「はい!」
2人に手を振り、教会の外に出る。早速皆にメッセージを送ってみよう
『棄てられた教会という場所でイベントを進めていたら何か職に関する報酬?みたいなのが発生するみたいで僕のフレンドを呼んで欲しい的な事を言われたので良かったら来てくれませんか?位置データも載せておきますのでお暇ならよろしくお願いします』
「こんな感じで良いかな?よし、フレンド全員に送信っと」
『棄てられた教会』の位置データと共にメッセージをフレンドの4人に送る
『今すぐに向かいます』『待っていてくれ。直ぐに向かう』
アイリスさんとロザリーさんがもの凄い速さで返信してきた。職に関する事だからだろうか?
『また君は何か見つけたのか……行くよ』『職に関する報酬?というのが気になるが……せっかくだから行っても良いだろうか?』
ダイコーンさんがあの見た目でかなり控えめなのがちょっと面白い。ハスバさんはこっちに来たら糸で吊るそうかな?
「よし、じゃあ皆が来るまで休憩するかな?」
一旦ログアウトしてトイレとか済ましておこう。それでも時間に余裕があれば【バインドハンド】の性能チェックをしても良いかも