悪魔の最終兵器
「僕にも許せない事はある。小っちゃいって言われるのはまだ許せる。だが、チビと言うのは許さん」
人の身体的特徴を馬鹿にするのは良くない事だ。なりたくてなった人も居れば、なりたくなくてもそうなってしまった人だって居る。ゲームだから姿を変える事も出来るだろうけど、リハビリも込みでやってる僕は自分の姿を変えるつもりは無い。ありのままの自分の姿で居たい
「だ、大丈夫だ……勝てる……!アレさえ使えば!」
「謝るか、ボコボコにされてから謝るか、選びな?」
奥の手があるみたいだけど、これだけ弱気な相手ならレベルが高かろうと負ける気はしない。今回は油断は無しだ
「だ、誰が謝るか!貴様こそ今度はボクの前にひれ伏す番だ!【ダークスフィア】!」
玉座の裏から杖を取り出し、魔法を発動する。僕の周りを取り囲むように暗い紫と黒っぽい色の球体が出てきた。これは喰らうと結構ダメージを喰らいそうだけど……
「【リインフォース】」
脚力を強化して取り囲んでいた球体を飛び越える。飛び越えた後、チラッと後ろを見てみたら僕を取り囲んでいた球体達は僕が居た場所に集まって爆発していた。ふぅ、危ない
「なっ!?」
「じゃあ僕の番かな?」
「う、うるさい!【ダークレーザー】!」
杖の先から黒いレーザーが出てきて横薙ぎに攻撃される。それを僕は上体を後ろに反らして回避する。ちょっと下がるけどこのままバク転して体勢を戻そう
「さっさと謝ってくれればそれで良いんだけど?」
「【ダークランス】!」
空中に槍状の黒い物が生成される。あれはこっちに向かって飛んで来る物だろう。なら、さっさとケリを付けよう
僕はそのまま前に走り出す。【リインフォース】が掛かっているのであっという間だが、しっかり槍は僕に向かって来ていた
「なぁっ!?」
【電磁防御】で黒い槍は弾かれて僕に眼前まで迫られた悪魔。あれ?よく見たらちょっと胸がある?ひょっとして女の子だった?まぁ良いか
「【ディザーム】」
杖を取り上げて後方に放り投げる。すぐには取りに行けない距離だ
「と、とりゃっ!」
「ていっ」
杖を取り上げられた僕に向けて右ストレートを放って来るけど……やっぱ魔法を使うのが主力だったのかへなちょこパンチだ。左手で受け流し、右手でデコピン。【リインフォース】で強化されたデコピンは痛いぞぉ?
「痛ったぁ!」
頭を押さえて僕から距離を取る悪魔
「何か……もう別に謝ってくれなくて良いからロザリオだけ返してくれたら良いかな……」
なんだか弱い物いじめをしている気分だ……魔法使いって杖が無くなると全然ダメなんだな……
「ま、まだ負けてない!これでも喰らえっ!」
悪魔が何の策も無い突撃のようにこっちに走って来た。コケると危ないし受け止めた方が良いんだろうか?
とりあえず本当に危なそうな攻撃だったら側頭部に蹴りでも入れれば問題無いだろうし、何をするのか見極める事にした
「これで貴様もおしまいだっ!僕の最高傑作を喰らえっ!」
そう言うと悪魔は僕に手枷と足枷の様な物を投げつけてきた
『愚戦奴の呪枷が装備されました』
「ん?」
装備されましたって事は呪いのアイテムか?
とりあえず悪魔と距離を取る。悪魔は別に僕に追撃を仕掛けてくる様子は無いが小さく笑っている
「ふっふっふ!僕の最高傑作の呪いのアイテムだ。攻撃しても全然効かない事に震えるが良い!」
とりあえず確認する時間はくれるみたいだから装備の確認をしてみよう
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愚戦奴の呪枷
レアリティ カースド
STR -90%
INT -90%
耐久度 破壊不可
特殊能力 質悪数多の呪い この装備は外す事が出来ない。物理攻撃に追加攻撃が発生し、MPを使用する際、消費MPが50%カットされるが、STRとINTが恐ろしく大きく下がる
とある悪魔が最終兵器として作りだした呪われたアイテム。戦う為だけの奴隷に付けられていた枷をあの手この手で呪いを掛け、完成したこの枷を装備した人間はとてもでは無いが戦う事は出来ないだろう
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「…………」
「どうだ!貴様の打撃はもう怖くないぞ!」
どうだ!ってこれ……
「な、なんだ?どうして無言でこっちに寄ってくる!?」
「ていっ!」
また悪魔にデコピンする
「痛ったぁ!?痛ったぁ!?」
追加攻撃が発生してデコピンが2発分悪魔の額に当たる。この反応から見るにやっぱり僕の攻撃はさっきと同じくらいの痛みはあるみたいだ
「な、何で威力が減ってない!?」
「僕、君の事天才だと思うよ。こんな良い装備タダでくれるとか君は僕にとっての救世主か何かかもしれない」
「そ、そんなー!?」
呪いとしてはとんでもないSTRとINTの90%ダウン。これを装備したのがもし、ロザリーさんみたいな物理攻撃(STR)と魔法攻撃(INT)を使いこなすタイプだったらもう目も当てられないレベルの弱体化だっただろう。でも僕、物理攻撃(DEX)だし、攻撃魔法が無いからINTが減っても関係無い。呪いのデメリットがほとんど機能して無くて追加攻撃とMP消費50%カットのメリットだけ享受出来ちゃうんだよね……