国交交渉
「私のせいで何かとんでもない事に……」
「いえ、あなたのせいではありません。これに関してはしっかり管理していた頃にそんな事は無かったはずです。なので、あなたから管理を奪った人達が悪いんです」
これ、この人が自分を追い込んでしまわない様にしないと罪の意識に潰されちゃうかもしれない
「もし、その魔法陣があなたの作った物だとしても、ちゃんと管理していれば問題無い。そうですね……今回の話を分かりやすく言い換えるとしたら、あなたは食事をする為の料理用の包丁を持っていた。でも、その包丁を借金のカタとして取られた。で、その包丁を取り上げた人達が正しい使い方をしないで人を傷つけた。これであなたは自分が悪いと思いますか?多分10人聞いてもあなたが悪いって言う人はまず居ないと思いますけど……」
とりあえず今思いついたあなた悪くないよ作戦でメンタルケアしよう
「そう言って頂けるとありがたいです」
「あの、言い難かったら構わないんですけど、もしかして、あのお店の元店主……だったりします?」
「おや、分かってしまいましたか」
そりゃあ、内容的に店を乗っ取られたみたいな感じだったし……
「多分、あの人達悪徳商法とかで摘発されると思うんで、ここ取り返せるかもしれませんね」
「本当ですかっ!?」
おっと、急に動くと危ないな
「確実とは言えませんが、一応色々こっちでも出来る限りやってみます。おっ、丁度迎えも来たみたいですし、行きましょうか」
「はい!」
取られたお店を取り戻せるとなったらこれからの活力にもなるだろう。これで事情聴取に結構協力してもらえるんじゃないかな?
「ありがとうございました。それでは!」
「お疲れ様でした」
事情聴取に行く元店主さんと別れたら、次は……あっそうだ。あのゴツいパワードスーツの人に報告しなきゃ。別のルートで独立部隊の所に帰ろう
「すみませーん。遅くなりました。そちらはどうなりました?」
「うおっ!?ビックリした」
天井の穴から団長さんの姿が見えたので、そこに向かって、天井から魔糸を使って逆さまになって目の前に降りる
「急にビックリさせんなよ……普通に剣抜きかけたわ」
「あぁ、大丈夫ですよー。で、一応多分これで終わらせる事は出来たと思います」
「は?」
「こっちで問題解決したんで、あとは向こうに影響が無いか経過観察ですかね」
「お、お前なぁ……」
まだ、ゴミ拾いのクエストのクリア報告が出てないって事は、あっちの様子も確認しないとダメって事か。となると、パワードスーツの人を帰すまでが仕事って事か
「で、今あの人は?」
「あっちでボロいけど書物とか読んでる」
指差された扉をコッソリ開けてみると、辛うじて残ってた穴あきの本とかを読んでるパワードスーツの人。「ほー」とか「へー」みたいな反応をしている
「つまり、魔法という技術が我々の場所にやって来た結果。我々に新しい力を与えてくれるかもしれない訳か。適応者は魔力の使い方が分かった人間。つまり、魔法使いになれる素質を持った者が特殊能力を扱えていた訳なのか……これは凄まじい大発見だ。もし、こちらが魔法という物を受け入れる準備が出来たら是非とも国交を開きたい所だ」
国の発展って考えるとその発想は間違ってないとは思うけど、それは中々難しいと思うんだよなぁ。特に市民の反発とか
「失礼します。今の話に関する話題なのですが、よろしいですか?」
「あぁ、君か。少しだが今我々が置かれている現状は大まかに把握出来た」
「なるほど、たった今、ネストに魔力ゲルというガスの発生源物質がそちらに行かない様にしてきたのですが、国交を開くかどうかという話をされていましたよね?それ、一度無しの方向性で頼みます」
「……そうか。これ以上ガスが発生しなければ、今以上に魔法を使える人間が増える事もないし、使える様になった者達も、いずれネストに残留していた魔力が無くなり魔法を行使出来なくなる。そうなれば国交を開かなければお互いに利益も与えないし、危害も与えなくて済むと言いたい訳だな」
いやぁ、言いたい事がスパッと伝わるって素晴らしいな
「そうです。今までは大変迷惑をかけてしまいました。なので、このまま提案を受け入れてくれとは言いません。こちらが要求するならそちらの要求も聞くべきだと思います」
まずは要望を聞いて、お互いの妥協点を探さないと
「我々は、今回のガスの件でかなりの設備や装備に大金を支払って来た。だから賠償金というのが一番手っ取り早いかもしれない」
まぁ、確かにこの状況で金は一番分かりやすい謝罪の形になるかもしれない。頭を下げてごめんなさいで済む問題ではないし
「だが、今回のこの問題。君はここに居る我々のみで解決しようとしているのだろう?そもそも事の詳細を知っているのは我々のみ。だから内密に済ませる事で国家間の争いを起こさずに終わらせようと」
「流石です。どっちが有利や不利など関係なく、無駄な血は流したくないのでこのまま内密に終わらせるのが一番良い終わりなのではないかと思案しますが……」
どうかなぁ。一度得た魔法の会得チャンスを逃すのは僕だって見逃せない。これをなんとかお互いに損しない様に終わらせるとか出来るかなぁ?




