ゴミ拾い
「それではもうそろそろ帰る。また会おう!」
扉をバーンッと蹴破る様に飛び出て行ったエールマシアさん。本当に騒が……忙しそうな人だなぁ
「ふぅ。何とか躱したな。危ない危ない」
連れていかれるのは嫌だけど、でもお陰でいざという時の退避先は出来た。後でクロウ団長にエルフの国の場所は聞くとして、多分今って僕の情報がこの国の王の耳に入ってるかどうかって所だろう。街に入る時は仮入隊で、中に入ってしまえば外部協力員みたいな扱いで、指揮系統から若干外れている存在にはなっているとは思う。だから、もう少しくらい働いていざという時に庇ってもらえる様に手回しをしておいた方が良いかな?
「お前って奴は全く……」
「ん、すみません。あの、ゴミ掃除の依頼は?」
「話聞けよ……」
なんか団長が話しかけてきそうだったけど、それよりも気になった物があった。依頼が張ってあるクエストボード的な物の隅っこに残っているゴミ掃除の依頼。なんかこれだけ紙の質感がぼろっちいと言うか……
「あぁ、それか……」
「見た感じ誰も受けてないみたいですけど?」
「それは報酬無しのクエストだ。一応俺達も国の騎士って扱いではあるが、そんなに給料がある訳じゃねぇ。食っていく為にも報酬は必要だ」
まぁ、それはごもっともな意見だけど……
「そもそも、その依頼。出した人がもう死んじゃってるのよね……」
「なるほど……」
依頼主が既に亡くなっているのであれば、報酬も支払われないのもある意味納得だ。この感じを見るに、別に放置しておいても大丈夫って判断なのかな?
「じゃあ、これ僕がやっても問題無いですか?」
「まぁ、問題は無いが……報酬無しだぞ?本当にやるのか?」
「お金とかどうでも良いんで、ただこの街のゴミ掃除っていう街の地理を覚えるのにも丁度良さそうな物なんで、やってみようかなって」
実際、街中の情報を得るのにゴミ拾いとか言い訳として丁度良い。それに、ゴミの中にだってお宝が眠っている可能性だってある。他の人にはゴミかもしれないけど、僕にとってはお宝なんて今までいくつあった事か……
「やっぱりお前大分物好きだなぁ?」
「おっ?って事はやっても良いんですね?よっしゃ!言質取りましたよ!こうなったらゴミ拾いにかこつけてこの国の機密とか抜いちゃいますよ~?」
冗談で言ってみたけど、出来ない訳では無いと思う。本気になれば城に潜り込む事も可能かな?
『特殊クエスト 無償のゴミ拾い を開始します』
あれ?これ特殊クエストなんだ。まぁ報酬が無いのは確かに特殊と言えば特殊かも
「……おい、誰かアイツについて行け。じゃないとマジで機密を抜く可能性があるから」
「んー、別について行っても良いけど、報酬がなぁ……」
「流石にねぇ……」
「ちょっとさっきの動きを見てついて行ける気がしねぇんだが?」
「んじゃ私が行く。今日はいっぱい儲けたから。1回くらいタダ働きしても良い」
やっぱネムさんが一番この中で一番話が分かるな
「じゃ、ゴミ拾い行ってきまーす」
「今から?」
「はい、今からです。面倒なら運びますよ」
見た目はゴミ拾いっぽい恰好をするならデカい籠を背負っても不思議ではないだろう。深淵を使って籠を作る。その中にネムさんが入っていても問題は無いかな
「こんなんでどうですか?」
「おっ、これなら楽ちん」
一応ポン君の補助も加えておくか。そうすれば動きやすさも特に変わらないし
「鬼退治……はしませんが、ゴミ掃除にいざ!出発!」
まぁ、籠とは言った物の、普通にここから深淵触手を出して攻撃やらゴミ回収やら出来るし、単なる籠ではない
「おー、乗り心地も良い~」
一応乗れる所は振動を抑える様にしてあるから酔う事は無いと思う。ついでにネムさんに街の紹介とかしてもらえるとありがたいな
「あの辺、サボるのに丁度良い」
「へぇ」
「あっちもサボるのに丁度良い」
「なるほど」
「あそこは昼寝するのに丁度良い」
「な、なるほど……」
さっきからサボりポイントばっかり教えてもらえる。ゴミに関してはしっかり集めてるけど、インベントリに仕舞えるのが大分ありがたい。何十とあるゴミを全部ひとりで持っていけるのがデカい。これで一応やるべき事は出来る。中々色んなゴミがあるなぁ?生ごみだったり、金属のゴミだったり、普通に壊れた家具みたいなゴミもある。これも集めたら何かに再利用出来るかもしれないな
「おっほ、これは凄い……ゴミが家みたいになってる」
「ここ、こんな事になってたんだ」
街を歩いていたら凄いゴミだらけの所に辿り着いた。街の端だからどうしてもそういう事になってしまうだろうけど、これは掘り出し物があるかもしれない。どうかな?ここの住人みたいな人は居るかな?
「すいません。誰か居ますか?誰も居なかったらこの辺片付けさせてもらいますねー」
周りを見渡したり、声をかけてみたけど返事は無い。こういう所はなんか自分の場所みたいに言ってくる人が居るかもしれないと思ったけど、どうやらその手の面倒は無くて済みそうだ




