見つからなければいい
「こいつぁ、高く売れるぜぇ?」
「慎重に扱え。落っことしたらここら一帯纏めて吹っ飛ぶぞ」
「「へい!」」
おいおい、もしかして隠密で持って帰りたいって言ってたのはあのガラスの円筒ケースに入ったあの魔石か?もう完全に映画とかで出てくるテロリストに持たせちゃいけない爆発する奴じゃん
「んー!ん!ん!」
「……」
「んっ!?」
ついて来た人の口を右手で掴んで無理やり黙らせる。やっぱり連れて来るべきでは無かったかな
「なんだ?今なんか聞こえた気がするが……」
「おいバカ!急に止まるな!落とすだろ!?」
「あぁ、わりぃわりぃ」
危なかった。この人がん-んー騒ぐせいでバレる所だった。どうにかやり過ごせたみたいだけど、あれをコッソリ持ち帰る事が今回のミッションだとすると、かなりヤバいのでは?完全に扱いが爆発物じゃん。そんな物を持ち帰ってどうするんだろう?まぁ、燃料として使う物であればそのくらい繊細な物の可能性はあるけども……でも、そんな物を独立部隊の一団員に任せるか?なんだろう。なんとなくだけど、直帰さんも実は実物がどんな物か知らない可能性が出てきたな
「うし、そんじゃあ奥に運ぶぞー」
「おし!これ運んで女の所に行こうぜ!」
今隣に居ますねぇ……
「「……?」」
「……」
ゲスな話をしているから直帰さんが怒っている。突っ込んで行きそうになった直帰さんの腕を掴んで止める。今動いても良いけど、保管場所まで持って行ってもらってから動いた方が安全に回収出来る気がする。この洞窟を拠点にしている盗賊達が全員戻ってきている前提の話だけど、もし、全員戻ってきているなら入口から全員無力化していく事で実質静かに帰る事が出来る。今やっても良いけど、確実にあの2人を攻撃したらあの魔石を落とす事になるだろう。あれをもしインベントリに仕舞えたとしても何かしら起きそうな気がするから今は何もせずに安全な所にある状態で無力化していく方が良い気がしてきた。なんなら隠れて隠密で持ち出すのではなく、静かに制圧した方が安全に帰る事が出来そうだ。全員無力化してしまえば見つからないから実質隠密だ
「おーい、開けてくれ」
「お、ちょっと待ってろ」
洞窟を進んで行くとまた扉が出て来て、その扉の前に門番が居た。そして、その門番が扉を開けた所を遠巻きに見ていたけど、中に結構な人数の人が談笑していたり、剣を研いでいたりしていた。あそこの広場が中々の鬼門になりそうだ。まずはあのほぼ意味の無い門番を倒してからだが、見えた範囲では広場の先に3方向の道が見えたので、そのどれかが保管場所なんだけど、閉じるまでの間に右の方に向かって一歩踏み出してたと思うが……まぁ、まだ他の人と会話をしようとしてた可能性があるから右の扉とは決まってないんだよなぁ
「「なんだ?なんか笛の音が……う~ん」」
やはりこれが一番。シンフォニアで【レスト】を使い、あの門番にのみ聞こえる様に範囲指定をして眠らせる。これで即座に2人を拘束して腹を蹴飛ばして叩き起こす。わざわざ回復もバフも必要ないからね
「「んーーー!?」」
「ん!?んーんー!」
天井に張り付けて動けなくした2人を見たついて来た女の人がなんか驚愕の表情をしていた。さぁ、どんどん口を縛られた人の割合が増えていくぞぉ?
「……」
「……」
ここは自分にまかせて欲しいとちょっと適当なハンドサインを出してみたら頷いてくれたので多分分かってくれたみたいだ
「~♪」
これで門の前で少し待ってから扇状の範囲【レスト】で広場に居る人を眠らせる。あの魔石を運んでいた人達が【察気術】で広場を出ていくのを待たなければ、そのまま眠って魔石を落としてドカンとなったら大変だし……よし、一応無力化は出来たからここからは急いでやろう。深淵触手も使って数人を纏めて、魔糸で縛って天井から吊るす。さながら人間シャンデリアだ。全員吊るしたらさっきまで研いでいた武器とかを下に立たせておけば気が付いた奴から暴れるのは止めるだろう。まあ、まず魔糸を千切られる事は無いだろうけど、念の為だ
「「……」」
後ろを向いたら棒立ちした2人が扉の前で待っていた。あぁ、深淵のせいか。でも今はどうでも良いからハンドサインで魔石を運んで行った奴らが行った方向を指で示す。【察気術】でオーラを見ていたけど、どうやら、右に行ったと思ったが、椅子に座ってた奴と会話っぽい動きをしてから左の扉に入っていたので、左の扉を示す
「ん!んんんん!?」
直帰さんはちょっと体が硬直したようになってからすぐに左に進みだしたが、こっちの女性はそうもいかなかった。やっぱり深淵触手の衝撃が大きかったのか完全に後退りして、しかもその場から動こうとしない。手を掴んで行こうとしたけど、抵抗する。これマジでヤバいなぁ……絶対コイツを置いて行ったら面倒事を起こすに違いない。けど、【レスト】で寝かせても運ぶのが面倒なだけだし……
「にゃん?」
ん?猫の声?猫のオーラなんて掴まなかったハズだけど……
「え?」
そこには僕の深淵がデフォルメされた猫の姿でちょこんと座っていた




