お掃除
「よいしょ!よいしょ!よいしょ!はぁ!」
掃除をするために壊れていない長椅子も壊れている長椅子も一緒に外に出す。ついでに近寄ってきていたゾンビコヨーテもぶっ飛ばす
「あ、あの……」
「はい?何です?うぉぉぉ!」
シスターさんが話しかけてきたので雑巾掛けをしながら聞く。教会の裏手にあった井戸から汲んだ水でボロ布をしっかりと洗い、雑巾として使用すると案外使い勝手が良かった
「どうしてそこまでするんです?貴方には掃除をする義務は無いはずなのに……」
「んー、他の教会は入った事無いから分からないけど、多分綺麗な所だろうし、せっかく僕が入れた教会だから綺麗にして見返す?的な?」
誰に見返すのか自分でも分からないけど埃まみれの教会は綺麗にしたい
「えーっとこの祭壇は……」
「祭壇は大丈夫なので!」
祭壇の前に立ち塞がる幽霊シスターさん。前髪が長いから顔が見えないけどなんか恥ずかしがっている様に感じる
「でも祭壇もかなり汚れてますよ?」
「わ、私がやるので!」
幽霊シスターさんが焦って自分が祭壇の掃除をすると言っているが、使えそうな掃除道具はもう残ってないよ?
「とりあえず祭壇は触らない方が良いって事ですね?」
「はい、そうしてもらえると……」
そういうことらしいから僕は他の場所を掃除する。じゃあまずは天井からだ
「【魔糸生成】」
太い、弱めの粘着の2要素を糸に付与する。これを何本か作ってボロボロになったモップの先を外して代わり粘着糸を着けてみる。これで埃もゴミも纏めてくっつける寸法だ
「そーれそれそれ!うわっ!あっという間に真っ黒に……これは掃除のし甲斐があるな?」
粘着の要素のお陰でゴミと埃がごっそりとくっ付いている。これ、糸を消滅させたらゴミがブワッと空中に舞っちゃうかもしれないから流石に止めとこう
普通の粘着だとちょっと粘着力が強すぎて剥がせないだろうけど弱めの粘着にしたからゴミが良い感じで取れる。何と言うかカーペットクリーナー(通称コロコロ)を掛けてる時の楽しさと似てるな?
「あの、この黒い塊は?」
「天井の汚れです。一応当たらない様に気を付けてますけど当たっちゃったらごめんなさい」
「えっ!?こんなに汚れてたんですか!?」
糸を生成してゴミを取り、これ以上取れないとなったら糸を外して新しい糸を生成して……と繰り返し、天井を綺麗にしていく。この柱とか埃ががっつり積もってるけどこの掃除用の糸を使えばこの通り!と脳内でテレビショッピングの様なノリで掃除を進める。やっぱり綺麗になっていくのは見ていて気持ちが良いな!
「あ、そうか!【魔糸生成】」
幅広、弱粘着の要素を入れて、両手を合わせて糸を出してみる。すると今までの倍以上の幅広さのもはや糸かこれ?というレベルの糸(一応)が出来た。これを張り付けてぺりぺりー……あぁ!これは爽快感が凄い!
「おぉ!楽しい!」
掃除で何回も糸を出したりするので2要素で止めておかないとMPが回復するよりも先に使い切ってしまうから割と気を付けている。途中途中休憩も入れつつ張り付けてはぺりぺりと剥がし、ゴミが付いて取れなくなった糸は下に捨ててと繰り返して行くと教会の上部分はすっかり綺麗になった
「ど、どうしましょう?これじゃあ足の踏み場も……」
下は黒いゴミでとんでもない事になっていた。ごめんなさいシスターさん。それ幽霊ジョーク的な物にしか聞こえないです……
「一旦、外に出しますね?」
インベントリにゴミだらけの糸を回収して外の何もない所に出す。うわぁ、山だよ山
「あ、あの……」
「はい、あっそういえばシスターさんの事をシスターさんって呼んでましたけど大丈夫ですかね?」
「それで構いません。あの、私にもそのぺりぺりーって剥がすのやらせてもらえませんか?」
シスターさんがスゥ―っとこっちにホバー移動みたいな感じで近寄って来た。やりたいのならやらせてあげましょう!
「良いですよ?シスターさんがやるなら祭壇でやりますか?」
自分でやると言っていたけど全然綺麗になっていなかったので祭壇でやってみる事をオススメする
「さ、祭壇はちょっと……」
「んー、じゃあやりたい所を言ってくれればそこに張ります」
このままだと祭壇はいつまでも綺麗にはならないぞ?
「うわぁ!楽しいです!」
シスターさんがそこらじゅうに張った糸をぺりぺり剥がして楽しみながら掃除している。MPが尽きない程度に糸を張りまくり、シスターさんが糸を剥がしている間にこっそり祭壇に近寄ってみる。祭壇に触りはしないけど祭壇の上に乗っている物を見る。あれは……シスターさんが着ている服と同じシスター服?とりあえずシスターさんの所に戻ろう
「後少しで終わりですね?」
「お掃除は苦手なんですけどこれなら楽しく出来ます!」
シスターさん掃除苦手なんだ……
壁、柱、床。時間を掛けて掃除してたまにやって来たゾンビはシスターさんに浄化されて消されてを繰り返し教会内が見違える様に綺麗になった。一部を除いて
「さぁ、最後ですよ?そろそろ観念して下さい」
「いや、あの……」
これは無理やりにでも掃除しないと最後まで祭壇は綺麗にならないぞ?