新装
「おぉ、これが……」
飾られているのは服だけのはずなのに、どれが誰の服かすぐに分かる感じ……これは流石としか言えないな
「この甚兵衛はそこの眠そうな子。この胸元を開けた花魁風の着物はマゼンタの髪の貴方。そこの大きい貴方は元の服装からあまり変えてない袴とサラシだから動きやすさは変わらないと思うわ。そして、そこのあなたにはこの和風ゴシックな服装にしたわよ。ハッちゃんの要望として前衛になる二人の服装は可能な限り形を変えない様にして、戦闘になったとしても違和感が無い様に、でも、他の子との統一感も取れる様にしてみたわよ。これで全員が別の色で着色しなきゃいけないとかだと、まだ数日かかったかもしれないけど、統一感が欲しいって事で刺し色はあれど、基本は黒で統一してるから何とか今日中に作り上げる事が出来たわぁ」
ホントに出来が良いなぁ……若干四人もウズウズしてる気がする
「試着室は……」
「あっちよ」
「いってらっしゃーい」
四人とも飾ってあった服を持って、試着室に入っていく。さぁ、どうなるかな?
「にしても、急な大仕事で焦っちゃったわ!」
「すみません。でも、お陰様でイベントはすぐに出来そうです」
「あら、そうなの?なら観に行っちゃおうかしら?」
「是非是非。全員蹴散らしちゃいますよ!」
どうしよう……ここまで良い衣装だと、普通に色んな人に見せたい気分もちょっと出てきた。まぁ、観戦席みたいな所とか、脱落しても映像とか見れるとは思うけど、生で見せたい……いや、やっぱりあそこまで生き延びた人へのご褒美だと思おう。うん
「ハッちゃんなら全員蹴散らすと言っても本当にやれそうな雰囲気があるのよねぇ?」
「メロにゃんさんが作ってくれたあの衣装も出来れば目立たせるつもりなので!」
「そうね。せっかく作ったんだからしっかり目立たせて全員蹴散らしちゃいなさい」
「はい!」
と、そんな会話をしていたら着替えが終わったみたいで試着室のカーテンが開いた
「中々、良い。動きやすい」
「文句つけてやろうと思ってたけど、文句の付け所が無くてムカつくぜ」
「どぉ?ハチ。私、似合ってる?」
「ん、ゆったり、寝やすい……」
ベースは黒い服装だけど、そこに各々のイメージカラー的な差し色が入っていたり、花柄……ではなく、ワンポイントなアクセント程度の百合とか牡丹っぽい花の絵が入っているのが結構カッコいい。シンプルに纏めているのが僕的には非常にポイント高い
「皆似合ってるなぁ。やっぱり元が良いのと、服が良いので相乗効果がデカい……」
これだけ粒ぞろいだと、普通に僕が上裸の和装をしたとしても、霞んじゃいそうだな……
「これだけ出来が良いと、皆で主役の取り合いになりそうだなぁ」
まぁ僕が霞む事が悪い事ではない。四人が輝けば僕が目立たなくなる。そうなれば、僕が連携に入る事も出来るし良い事は多い。主張するのも良い事だけど、引き立てるのだって大事だ
「えぇ、皆がより輝く様に気合を入れて作ったわ。その甲斐あって、今ここで着てもらって私の努力はキチンと報われたと思えるもの。どう?少し違和感があるとかならすぐに直すから言って」
自分の作った服を着た四人の姿をしっかり見るメロにゃんさん。でも、すぐに直す場所があるなら言ってくれと、仕事に対して本当にひたむきな人だ。こういうストイックな人は嫌いじゃないなぁ
「それで、ハッちゃんはそのままって訳では無いんでしょう?」
「そうですね。それじゃあ折角なんで少し相談に乗ってもらっても良いですかね?」
「良いわよ。なにかしら」
「こんな感じで……」
一応のラスボス用の服のイメージを喋って、こんな感じでやろうと思っているとメロにゃんさんに相談する
「こういうのでラスボスとして、この四人と一緒に立とうかなって」
「なるほどね。ん~、こんな風に盛りたい気持ちも分かるけど……ハッちゃん金剛力士像は分かるかしら?あのくらいシンプルな方が良いんじゃないかしら?」
「あぁ、確かに。なんか上は脱ぐつもりだったので、下を何か盛った方が良いのかなと思ってましたが、そうですね。別に見た目を盛るんじゃなくて、勝負の内容が良ければ良いんですから」
ちょっと動きにくい恰好を想定していたけど、シンプルこそ最強!って事で、金剛力士像の服っぽい物をイメージする。あの羽衣っぽい物とかどうしようかなぁ。あっても無くても良いけど、それの調査は明日にしておこう。色々あるアクセサリーもレイヤー魔法でタトゥー化してしまえば上裸状態でも問題無いし
「本当にありがとうございました。お陰様で色々また出来そうです」
「えぇ、こっちもハッちゃんが良い素材をくれるからドンドン技術が上がってるわ。私の方も色々出来る事が増えて嬉しいのよ」
良かった。ちゃんと相互に利益があるみたいで。後はメロにゃんさんがチェルシーさんから料金を徴収するだけだ
「あ、ちゃんとチェルシーさんからお金は受け取ってくださいね?今回はチェルシーさん。イベントで一儲けするらしいですから、ちゃんと適正な技術料や素材費用を受け取ってください。流されちゃダメですよ」
「ええ、そこは商売だから手は抜かないわぁ~」
「良かったです。それじゃあありがとうございました」
四人分の新衣装と、ラスボスの服装案を頂けたので、ここで失礼しよう。あとはチェルシーさんが多分すぐに動くだろうから、明日に最終調整時間があるかどうかって所かな




