ご注文の品
「もうちょっとだけ頑張ってくるかぁ。ご馳走さん」
「ハチさん。ご馳走様でした。今日はこれで失礼します。お陰様でウカタマ様がやる気を出してくれたので、なんとかなりそうです」
「そうなんですね。また何かご飯作った時は来てください」
何か知らないけどやる気を出したらしく、帰って行った二人を見送る
「さて、そろそろ僕も寝なきゃ」
「おやおや?寝ちゃうのかい」
「そうですね。あとはちょっと調整をして本番に備えるので寝ます」
今日の所はこの辺にしておこう。周りに居る皆に挨拶だけして、ログアウトする事にした
「はぁ、疲れたぁ……」
すっかり忘れていた。学校に行ったら文化祭の話が上がり、自分達の所は何にするかという話で中々決まらずに結構大変だった。まぁ、まとめ役にならなかっただけマシだと思うけど、中々皆やりたい事とか言いまくりだからあれを纏めるのは大変だったろうなぁ……改めて今までのは僕が統率して指揮とか執ったというより、皆が勝利の為にそこまで自分勝手に動かなかったから最低限の指揮で済んだというのが大きいだろう。学校の、ましてや文化祭で自分達の出し物なんて、何がやりたいのか方向性なんてバラバラだ。それを纏めるのが僕じゃなくて良かったというべきだろう。もちろん、決まった物に文句は言わないのはお約束だ
「にしても、女装喫茶かぁ……まぁ、クラス的にも女子の方が人数が若干多いからそういうのが通りやすいのは仕方ないとは思っていたけど……」
ゲーム内で女装はしてるというか、もはや女性にもなれちゃうけども。現実で、しかもクラスメイトの前で女装かぁ……流石にちょっと恥ずかしいなぁ
「メイク関係とか自分でやった方が良いかな?一応出来なくはないけど、女子生徒の誰かにやってもらった方が良いかな?」
一応両親が化粧品メーカーで働いているお陰か、化粧に関しては多少知っている。だからある程度自分で化粧する事は出来るけど、誰かに任せるかどうか……一応家には化粧用のボックスもあるから念の為文化祭当日は持っていった方が良いかな?
「あとは文化祭の準備期間に入っちゃうから大変だな。テストもあるし、現実とゲームと大忙しだなぁ……」
ゲーム内のイベントに焦点を合わせて色々してたけど、普通に学校の行事だって大事だ。体も普通に動くんだし、文化祭だって楽しみたい。どちらか一方を切り捨てるではないけど、これは一生に一度の今の学年での文化祭というビッグイベントの方を少し優先した方が良いかもしれない。まぁ、イベントの方も準備らしい準備はほぼ整ってるし、あとはメロにゃんさんからの服の完成の一報を受けたらもう開始出来ると言えば出来ちゃう
「どのくらい人が来るか分からないけど、今持てる力でやるだけやってみようか。よし、それじゃあ文化祭の準備の為に必要になりそうな物を出しておかないと……」
ある程度は用意されているとはいえ、こっちでも用意出来る物とか自分で使いそうな物の用意をしておかないと、いけないだろう。確か押し入れかどこかの棚の中にあったはず……
「うーん……やっちまったねぇ?これ」
仕舞ったはずの物を取り出すので色々別の物を出してたら後片付けが盛り上がり過ぎて模様替えみたいになってしまった。こんなにやるつもりなかったのに、なんかやってしまったなぁ……
「部屋は綺麗になったけど、今日はもう疲れちゃったな……」
いつも家は綺麗にしてるけど、いざ仕舞った物を取り出すとなると散らかす事になってしまうし、勢いでそのまま模様替えレベルの事をしてしまったから流石に疲れた。勢いって怖いねぇ?
「あえて今日はログインしない……いや、ちょっと様子見するだけにしておこうか」
流石に今日何かやるのは厳しい。なので、ちょっとだけ入ってもし、メロにゃんさんが服を仕上げてたりしたら受け取りに行くくらいが丁度良いだろう。流石に昨日の今日で出来てるとは思わないけども
『ご注文の品。超特急で仕上げたわよ~。時間がある時に取りに来てねぇ~?』
「あの人マジで凄いな……4着オーダーメイドみたいな物だよ?」
ゲームに入ってみたらメロにゃんさんからメッセージが来ていて、4着分の服をもう仕上げたらしい。現実だったら、こんな早さで仕上がったと言われても、なんか既存の服に適当に布を付けてそれっぽくしたんじゃないかとか疑ってしまうけど、メロにゃんさんなら4着分を超特急でと言ったら、本当に良い仕上がりの服を4着作っていそうだ。これは早速行ってみよう
『ありがとうございます。今から向かいますね』
メッセージを書いて、早速メロにゃんさんのお店に向かう事にする
「皆、新しい衣装が出来たみたいだから見に行ってみよう」
「分かった」
「服なんかなんでも良いだろうが……まぁ、気に入ったら着てやるよ」
「あら、もう出来たのね?」
「ん、寝やすいのが良い」
一応4人とも仕上がりは気になっているみたいだ。どんな風に仕上がっているかなぁ?
「メロにゃんさん、居ますかー」
「来たわね。4人は?」
「ここに」
4人とも人化してもらって、店に入った。あぁ、奥に何かカーテンみたいなので隠されてる物がありますねぇ?
「さぁ、これが私の作った貴方達の衣装よ!」
バサァッと勢いよくカーテンを引き剝がすメロにゃんさん。そして、そこには和風テイストな4着の黒い衣装が飾ってあった
 




