教会へ
「おや?霧が出てきたなぁ?」
荒野を進むと段々と霧が出てきた。ボスの時の様な先も見えない濃い霧ではなく、自然な霧。それに木もちらほら生えている。何だか雰囲気変わって来たな?
「うーん……見えないって訳じゃ無いけどこのまま進んだら絶対迷子になるよなぁ……」
砂漠とか、雪原とか、霧の中みたいに目印の無い所をずっと歩くと利き足の違いで左右の歩幅がズレて自然に円を描く様に歩いてしまう。なんだっけな?……そうそう!リングワンダリングだ。それになってしまう可能性があるからせめて何か目印を見つけてから霧の中に入りたい……けどどうやって目印を探そう?
「迷子になるの覚悟で進むのは……ちょっとなぁ?」
最初の頃は別に失う物も何も無かったから棒を倒して進む方向を決めたけど、今は色々貰ったりしたから少しは慎重になっちゃう
「んー、あっ!位置データ!」
ドナークさんから貰った位置データを改めて見てみる。すると『ガイドを開始しますか?』という文字とYESとNOの選択肢が出てきた
「お願いしますっと」
YESの選択肢を押す。すると僕の足元から青白い線が霧の中に伸びる。この方向に行けば良いんだね?
「良かった、これなら安心して進める」
この線を追って行けば『棄てられた教会』まで歩いていく事が出来るはずだ。よーし!行くぞー!
霧の中を走り、青白い線を追いかける。目印があるだけで進むスピードは段違いだ
「こういう時はガイドがあると助かるなぁ?」
謎解きとか攻略は手探りで進むのが楽しいけどこういう目的地に向かう途中で足止めを喰らう系のは結構ストレスが溜まっちゃう。だけどガイドのお陰でスイスイ霧の中を進めるからとってもストレスフリーで素晴らしい
「ここが……棄てられた教会かぁ」
霧の中を走る事約10分。所々崩れている教会が僕の目の前に現れた。ガイドの青白い線もあの教会を示しているから間違いないだろう
「さて、入れるかなぁ?」
セカンドラの街の教会は結界によって弾かれてしまったけど、ここは既に棄てられたのなら結界とかも無いはずだ
「お、おぉ?おぉ!入れたー!」
結界らしき物は無く、何の抵抗も無く教会の中に入る事が出来た
「うわぁ……結構埃っぽいなぁ?」
教会の中に入ってみると長椅子とか祭壇とかがあるけど全体的に埃が被っていたり、少し壊れていたり……
「おや?何か居る?」
教会の中でごそごそと何かが動いている。警戒しながら柱に張り付き、上に登る。何だ?
「アァァァ……」
「あれは……ゾンビ?」
なんか久々に見た……っていうのも変か。んー、ゾンビが居る教会かぁ……
「結界が無いから中に入り込んだのかな?」
正直ガイドの線だけ見て教会まで来たから周りを見てないんだよね?もしかして周りに廃村とかあるのかな?
「どうしよう?やっちゃうべきかな?」
ゾンビだし倒しても良いかと思ったけどここ教会だしなぁ……とこの場で倒すのも何か嫌だなぁと考えてしまう
「…………さい」
「あれは?」
天井からゾンビを観察していたら祭壇付近にいつの間にか人が立っていた。シスターの恰好をしているって事はもしかして件の幽霊シスターかな?
シスターが何かを呟き、祈りのポーズをしたと思ったらゾンビの上から優しい光が降り注ぎ、ゾンビが消滅した
「聖魔法……って奴かな?」
「誰ですか!?ひっ!?」
天井を見上げたシスターさんは天井に張り付く僕を見つけて腰を抜かしていた。あ、足元が透けてる
「あぁ、勝手に入ってしまってごめんなさい。脅かすつもりも攻撃するつもりも無いんです」
天井から降りる為に柱を伝って降りる。あ、【ゲッコー】の力で張り付いてるせいでスルーっと降りられないのか。柱を走って降りるのも埃が凄そうだから四つん這いで降りよう
「ひえっ!?」
「よっと!えっと、こんにちは?」
「こ、こんにちは……」
僕柱から降りてきただけなんだけどな……めっちゃ怖がられてるなぁ
「ここって、棄てられた教会って場所で合ってます?」
「え、えぇ……今は既に棄てられた教会になってしまいました」
「おぉ、合ってた。いやぁ教会に入ってみたかったんですけど結界で弾かれちゃって入れなかったんで入れそうな教会がここだって聞いて来てみました!」
うーん、でもこのままじゃ教会じゃなくて廃墟だよねぇ?
「そうだったんですか……それは可哀想に、教会のステンドグラスはとても綺麗なので一度はご覧になって欲しいのですが……」
「あの、シスター?」
「はい、なんです?」
普通に受け答えしてくれた。良かった
「ここ、掃除しても良いですかね?」
「へ?」
「ちょっと埃っぽいのが気になっちゃって……掃除道具ってあります?」
壊れた長椅子とか直せるかは分からないけどやるだけやってみよう。そうだ。前にゾンビを倒した時に入手したボロ布をしっかり洗えば雑巾にはなるんじゃないかな?
「古い物しか無いので使えるかは分かりませんが……あの中に」
「はいはい、おっ、これなら大丈夫そうだ」
掃除用具入れを見てみるとバケツとかモップとかが入っている。モップはちょっと怪しいけどバケツは使えそうだ
「よし!それじゃあ掃除しちゃおう!」
気になっちゃった物は仕方が無い。掃除スタートだ!