ヤミィ
「あぁ、これは丁寧にどうも。えっと、この島の代表?で良いのかな。ハチと申します」
「あ、あなたがそうなんですね!初めまして。私は闇を操る精霊のヤミィと申します」
あれ?想像していたのと違う存在がやって来たな?目が赤いからてっきり吸血鬼の方が来た物だとばっかり思ってたけど、闇を操る精霊か。影の精霊のスピさんは人型じゃなかったからまだ、目の前の人が精霊だとは信じきれないんだよな。今は村の方に居るだろう光の精霊のエアラさんだって、小さくて羽根とか生えてたし。僕が精霊の事を知らないと踏んで、吸血鬼の人が闇の精霊と言ってるだけの可能性もまだ拭い切れない
「因みに、精霊って皆あなたみたいに人型なんですか?それだと一般社会に紛れ込んでいても分かりにくいだろうなぁ……」
ちょっとだけカマを掛けてみる
「いえ、そんな事はありません。私は精霊と人の子なので人に近い姿です。普通の精霊は多分もっと小さかったり人っぽくない姿とかしてると思います」
ふむ、筋は通ってる。それに、間違った情報という訳でもない。流石に初見の人が城まで来るとちょっとだけ警戒しちゃうな
「まぁ、あまり怪しんでも良くないか。いやぁ、ごめんね?実は精霊とは会った事があるから姿は知ってるんだけど、いきなり僕が知ってる精霊像とは違う人が来たからちょっと怪しく感じちゃって……それで、何か御用ですかね?」
とりあえず怪しんだ事に頭を下げて謝罪して、なんの目的で来たのか聞いてみる
「え?精霊を知ってるんですか?」
「スピさん。ちょっと来て」
影のスピリットであるスピさんを呼ぶと、僕の影から出てきた
「こんな感じで一応精霊さんとは知り合いですね。もう一体居ますが、そっちの方はちょっと今すぐには会えないので」
「本当に精霊と知り合いだなんて……やはりあなたなら……」
スピさんを呼んだお陰でなんか会話が進んだみたい。でも、変な事に巻き込むのやめて欲しいなぁ
「私は吸血鬼達の国から来ました。ハチ様。どうか私のお願いを聞いていただけないでしょうか?」
『特殊クエスト 真っ暗い闇の底から を開始しますか?』
ん-、クエスト発生しちゃった……城で黙っていたら問題無いと思っていたら向こうからなんかやってきちゃった
「まずはお話だけ聞かせていただく事は出来ますかね?」
僕に出来る物か出来ない物か、今すぐなのか少し時間に余裕はあるのか。その辺を聞かないと返事は出来ない
「はいもちろんです。私、吸血鬼の国に長い事居たのですが、最近人が増えて来た事もありまして、だんだんと街から真っ暗な所が減っていまして……」
最初はお化け屋敷的な感じだったのに今は眠らない街みたいになって暗くならないって事が不満なのかな?
「そんな折、新しい所と繋がったという話を聞いて、これは一度そちらの方を確認してみようと思い、まずはこの空島の情報を集めてハチという人に辿り着けば何とかなるかもしれないと思った所存で……」
つまりは吸血鬼の国は眠らない街と化してるから眠れる所が欲しいのかな?んー……どうしようか
「えっと、1つ聞きたいんだけど、暗い部屋が欲しいだけなら吸血鬼の国でも充分用意出来ると思うけど、そういうのとは違うんだよね?」
単なる暗い部屋なら正直どこの街でも用意しようと思えば出来るはずだ。それでも吸血鬼の国以外に行きたいとなるなら単なる暗い部屋ではダメなんだろう
「そうなんです。何というか、闇を感じるというか陰の波動が……居心地が良さそうなのはこっちの方な気がして……」
なんか僕が闇を抱えてる陰キャみたいな事言われてないか?
「もしかして喧嘩売ってる?」
「いやいやいや!そういうつもりでは無くて……」
「じゃあ一体どういうつもりでそんな事を言ったんだい?」
「それは、私も分からないんですが、なんだかすごく安心出来る闇の気配を感じるんです」
わからん……なんだその安心出来る闇の気配って?
「ん-……スピさんの影の中とか?」
「いや、流石に他の精霊さんの中にお邪魔するのは……」
まぁ、スピさんだっていつでも中に誰か居る状態は嫌か
「いや、もっと濃密な何かを感じたんですけど……」
「え、じゃあ深淵くらいしか……」
「むむむっ!その濃密な闇は!」
これやっぱりなんか変なの来ちゃったかなぁ……
「この素晴らしき闇!触ってみても!?」
「ど、どうぞ……」
深淵に自分から突っ込もうとしてくる人は初めてだなぁ
「んんんん!これは良いですよこれぇ!こんな澄んでいるのに濃密な闇に触れたのは初めてです!」
「澄んでいるのに濃密な闇……今まで触れて来た闇ってどんなのだったの?」
とりあえずその表現が気になったので聞いてみる
「闇って基本ドロドロしてるんですけど、これは透き通ってる様な透明感もありつつ、濃密な闇の力を感じます。これはかなり良いですよこれぇ……元々食べたりするのはあっさりしたのが好きなんですけど、中々無くて……」
うーん、聞いてるだけだとまるで闇がラーメンのスープみたいな印象になってしまった。基本の闇はこってりしていて、僕の闇はあっさりしている。そして、あっさり系が好きな人が僕の前に居ると。状況を簡単に整理したらこうなる訳だ
「じゃあ、一回入ってみますか?」
深淵に精霊さん1名ご案内でーす
 




