裏報酬作り
「皆さんお久しぶりです。このフィフスターのお陰で何度もピンチを切り抜けたり、困ってる人を助けられました。こんなに使える道具は初めて握ったかもしれません」
「あぁ君か、キチンと使えているみたいで何より。だが、その顔はまた何か別の物を求めている顔だね?」
エルフの鍛冶師さんはやっぱりリーダー格なのか僕がまだお礼を言っている段階なのに、何かを求めて来た事に気が付いている。それなら回りくどくいかずに単刀直入に言ってしまった方が良いだろう
「はい。実は大量の人間と戦う事になってしまって、そっちが勝った時の為に報酬の武器を1つ用意したいなと思ってまして……」
「おいおい、どういうことだそりゃ?まるで魔王にでもなったってか?」
「あー、間違いとも言い切れないですね。ちょっとお祭りの一環で、僕対挑戦者って形で勝負するんですけど、ドラゴンの攻撃をかいくぐり、トラップをかいくぐり、最終戦第一段階を突破した人の報酬はあるんですけど、隠しの第二段階を突破した人の報酬はまだ用意してなくてですね……」
図に書いてどういう事をしようとしてるか説明する。ここの人達は話すよりも図に書いて見せた方が早い
「なるほどな。つまり隠し報酬的な物を作ろうとしたい訳か」
「そうなりますね」
実際最後の場所に剣は地面に刺してあるから最悪の場合は僕との戦闘を避けて、非難を浴びる覚悟があるならその剣を取りに行くというのも悪い選択ではない。まぁ、僕に勝ったとしても取りに行ったとしても入手出来るのは1人だけなんだけど……こっちで勝手にMVPとか決めてその人には1日食べ放題とかそういう感じで報酬でも出すか。それなら別に用意とかしなくても良いし
「ほほ~、これまた面白そうな計画ナノネ~」
「遂に武器を作るのか!?」
「最近の若いもん凄すぎだろ……」
「ふむ、期日は?」
「今日、あるいは明日まで。こちらも参加が急に決まったので、どうせならこっちで何か用意出来る物はしていきたいと思ってまして。もちろん、無理にとは言いません。用意出来なかったらまた別の何かを探して報酬にします」
正直、フィフスターのお礼がここに来た主な目的だ。今日中に武器を作るとかかなり無理難題を吹っ掛けているのは分かっている
「今日中にそんな魔王を倒した奴に与える褒美の剣を作れと。そう言いたいんだな?」
「そんな名剣を材料も無しで作れと?」
「中々の無理難題を吹っ掛けてくるノネ~」
「若いもんが勢いがあるのは良い事だが、勢いだけでは良くないぞ」
「ただの剣であれば1日あれば打てるだろう。ただ、それだけの報酬だ。1日で打つのは不可能だろう」
やっぱり無理だよなぁ……
「「「「「並の鍛冶師ならな」」」」」
「え?」
ここで5人声をそろえて全員腕組みしながら立ってるのカッコよすぎないか?
「ここに居るのに並な奴は一人も居ねぇ。またスコップの時みたいに5人でやりゃあ、聖剣でも魔剣でも、1日で打てらぁ!」
「流石にインテリジェンスウェポンは意思がある奴が居るかどうかだから無理だけど」
「これから冒険に出るちんちくりんな勇者の為に聖剣を打てとか言われるよりずっと面白そうナノネ~」
「キチンと剣の価値が分かりそうな奴しか残らないだろう決戦を乗り越えた後に出てくる武器だしな」
「まずは形状から決めていこうか。最近の若いもんはどんな武器が好みかは知らんが……」
サクッと作業に入る5人。普通に作業を始めてるけど、僕まだお代とか何も言ってないんだけど?
「あの、僕まだ皆さんに何か払える様な用意が……」
「んじゃ、いつでも良い。現世の鉱物を持ってこい」
「今の世にある鉱石がどんな物かもっとみたいですからね」
「どうせ暇してるだけだ。暇つぶしの一環で一振りくらい若いもんに気まぐれの一本を作ったって別に誰も困りはしないさ」
「まぁ出来れば面白い話でも持ってきてもらえると良いノネ~」
「武器ぃ!武器ぃ!こんな機会は滅多に無いぞぉ!」
なんだかんだ自分達の要望が混じってるみたいだ。となると、また何かレアな鉱石とか見つけたら持ち込んでみるかな
「ありがとうございます。武器に関しては直剣というか、直刀に出来ますか?強い知り合いとか考えると、刀を使う人も居れば、剣を使う人も居るので、直刀ならある意味どんな人が取ったとしても使えるかなぁって……」
実際は直刀が使えるかどうなのかは知らない。でも、ボスを倒して刀が出てくるって、結構カッコいいじゃん?
「まぁ直刀なら、侍でも騎士でも使えるだろう。報酬としては良いだろうさ。でも作り始めてから言うなよ!?」
「まぁまぁ、元々マチェット的デザインにしようと思っていたけど、そちらの方が良さそうじゃないか」
「確かに、マチェットの方が丈夫は丈夫だろうけど、どうせ今から作る物はそんな丈夫さは細くなっても健在か」
「良いぞ良いぞ!もっとインスピレーションを爆発させろ!作っている最中にどんどん新しいアイデアを入れろ!仕様変更は素晴らしいぞ!」
「おいやめろ!お前のそれ実現出来ねぇこと何回もあっただろうが!」
「直刀なら装飾品としても価値があるから剣士以外が入手してもある意味使い道があるノネ~」
わいのわいの言いながらも作業する手は止まらない。やっぱりこの人達本物の職人だなぁ……




