心理戦?
「ほっほっほ。いきなり来てしまってすまんな」
「いえいえ、大したお出迎えも出来ずにすみません」
なんだか前にあった時と少し雰囲気が違う。お堅い感じが無く、ホントに旅行に来てる人みたいな……
「「おじいちゃん!」」
「おぉぉぉ、よしよし。ここは楽しいか?」
「「うん!勉強も出来るし!」」
「ほぉ!それは素晴らしい!」
孫にデレデレのおじいちゃん。完全に視察とかどうでもよくて孫に会いに来ただけじゃないかな……
「ちなみにどんな人に勉強を教わっているんだ?」
流石に今後を担う孫の教育となると少し真剣な感じになる吸血鬼のおじいさん。まぁ、変な相手に勉強を教わっているとなるとおじいさん的にも心配になるか
「えっと、ルクレシアさんと」
「ダンタリアンさん!」
「ほぉ?2人もおるのか」
あ、やっべ……そういえばその辺の事すっかり考えてなかった
「その2人はどのような人物なのだ?」
「ルクレシアさんはマジナリア魔法学園の学生で凄く頭が良い人!」
「ほう!マジナリアか。あそこは確かに良い人材が多いな」
流石ルクレシアさん。というか、マジナリア魔法学園って吸血鬼にも有名な学校だったのね?
「して、もう1人の方は?」
「ダンタリアンさんは勉強の悪魔さんです。物凄く知識豊富で分からなくて聞いた事は全部答えてくれる様な人です」
「ほう?悪魔とな?」
あー、お客様困ります。そんな目でこちらを見ないでください
「ハチさんを責めないでください。本当にダンタリアンさんのお陰で勉強が楽しくて好きになってるんです!」
「そ、そうか。まぁキチンと勉強する事は偉いな。うん」
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「悪魔に勉強を教えてもらうとは……そんな人材まで居るのか」
「えぇ、まぁ天使に悪魔、一応豊穣の神様やらロボット。ドラゴンとか吸血鬼もいらっしゃいますから、お互い協力したりしてますよ」
こういう時は人間との共存に成功したという成功体験を聞いているので、それに則った形で島の現状を話していく
「やはり想像以上だな。外界との繋がりを遮断しているからか?いや、単にそういう訳では無いな……なんだ?何の要因が大きい……」
おっとさっきまでの孫にデレデレモードのおじいちゃんではないな
「個人的な見解としましては、この空島に関しては通貨の受け渡しがそこまで多くない事など一因なのではないかと思っています」
「通貨?いや、外の街で普通に物の売り買いをしているのを見たぞ?」
「はい、その者達はほぼ旅人です。厳密なこの空島の住人というのは金銭と言うよりは、お互いに協力しあって自身の生活の質を上げているので、互いの結びつきが強いのかもしれません」
もちろん、姫様とかセッカさんみたいに旅人相手に商売をしてお金を得ているのも居るけど、それが使える相手が旅人だけだから空島の住人としては単なるオマケ程度だろう。そういう経験もしてみたいというまさにお手伝い感覚だ
「なるほど、ある意味原始的な生活の方が互いに助け合うからこそ他者との結びつきが強くなると……金で雇った傭兵と長年背中を預けた仲間の様な関係性とでもいうべきか」
まぁ、間違いではないか。ちょっとした事を頼むにしても金銭授受が発生する傭兵と飯一回奢りで冒険について来てくれる仲間みたいな……ダメだ。モルガ師匠が頭をよぎったけど、あの人絶対ご飯だけ食べてついてこないイメージしか湧かない
「ま、まぁそんな感じです。ただ通貨を使ったやり取りがあると他の国とも交流が出来るのでそこはトレードオフでしょうね」
他国との繋がりを大事にするなら金銭を使った外交が良いだろうし、国内の繋がりを大事にするなら物々交換的な行為の方が良いだろう。どうするのが一番良いのかは僕も分からないけどね
「確かに。国家運営は大変だな」
「ここを国家と言っていいかは分かりませんがね……僕の中での認識では色々皆で集まって、持ち寄ってより良くしていく遊び場みたいな所のイメージなので……」
「なるほどな。やはり面白い者の所に優秀な人材は集まるようだ」
面白い人の所に優秀な人材が集まる……織田信長的な?確か黒人の部下とか居たんだっけ?
「楽しい事をしたいって思うのは皆そうじゃないですかね?その楽しい事が出来そうな所に行きたいかどうかをその人が、その存在が選ぶだけで、選ばれたのが僕だっただけかと」
「なるほどな。そういう考え方か。やはり君の元に孫を行かせて正解だったようだな」
こんな楽しい事したいだけの奴に孫を任せて本当に良いんだろうか?あの2人がどうなるか僕も分からないけど、ルクレシアさんとダンタリアンさんとの勉強のお陰で学力だけはかなりの物だと思う。なんてったって悪魔が家庭教師だからね
「やはりこちら側にならないか?君になら孫を取られても惜しくない」
「それに首を縦に振ってしまうと他の皆に恨まれるかもしれませんので、失礼を承知でお断りさせていただきます。ですが、こちらに遊びに来るのはいつでも歓迎しますよ?もし吸血鬼向けの日光対策とかあるのでしたら知りたいですし」
「はっはっは、君には敵わないな?」
「僕はこの空島では色んな存在と仲良く楽しく過ごしたいので、敵意が無い方はいつでもウェルカムです」
情報も貰えると更に嬉しいけどね?




