運営のスタンス
「こういう能力が後々役に立つんだろうなぁ」
走って逃げまわるんじゃなくて足を怪我して動けないとか、腰を抜かして動けないみたいな人に対して発動するとその人を狙う攻撃を全部逸らす事が出来る。そんな場面にそうそう遭遇する事は無いだろうけど、そういう場面への対処の手段が増えた事が重要だ。そういうクエストが出て来ても今の僕なら敵にダメージを与えなくても対処出来る。相手に攻撃をしたせいで評価が変わるみたいな事があってもお互いにノーダメージで事を終わらせる事も出来る
「検証手伝ってくれてありがとうオーブさん」
「いえいえ、改めまして、第二限界突破おめでとうございます」
「はい!ありがとうございます。もうこの職業でどこまで行けるのか試してやろうじゃないかと思って、他の職への転職は辞めました」
「思い切りが良いですね?」
「変わっていくのも良いけど、職業の名前的にもこれが一番汎用性とか対応力があるかなって。まぁ武器を使えないのは相変わらずですけどね……」
ここまでずっと付き合って来た武器を装備出来ないデメリットも、ある意味僕のアイデンティティとなっているから僕と言えばこうみたいなイメージの部分で武器を持っていない素手の攻撃。だからさっきの魔法で守っているから攻撃が届かないと思っていても僕が誰かをパンドーラで召喚して遠距離攻撃をするだけで不意打ちも出来る。僕自身を囮にした遠距離攻撃が出来るというのは中々強いよなぁ
「ところでハチ様。最近何かゲーム内で何か起こっているのでしょうか?」
「というと?」
「色々な方々が何かに対して準備しているように見えたので何かしているのかなと」
「あぁ、今旅人達だけで個人イベントみたいなのをしようとしていまして、その一環で僕も頑張ってた所です」
一応オーブさんにも話しておけば何かあるかも
「そうでしたか、随分と皆様対近距離ファイターを意識しているのか、遠距離攻撃を主体としたパーティが最近増えているらしく、何か旅人様のトレンドが変更される理由でもあるのかと思考していたのですが、個人イベントの為に参加される方々が対ハチ様を想定した結果。遠距離攻撃を主軸としたパーティが最近のトレンドという事なのですね」
「そうなりますかね」
オーブさんも何か考えているのか思考しているみたいだ。何をするんだろう?
「ハチ様、そのイベントですが我々が直接運営として関与するのは流石に問題になるとは思いますが、宣伝等に関しては我々も協力する事は出来ます。もちろん、協力する為に様々な許可が必要にはなると思いますが……そちらの個人イベントの主催の方をお教えいただくか、ハチ様が直接その方にコンタクトを取って私をメッセージ等で呼んでいただければすぐに手配できますので」
「そういう事だったら、チェルシーさんという方が主催ですね。情報屋として色々活動されてます」
とりあえずそういう事ならチェルシーさんの情報を渡しても良いだろう。これでチェルシーさんの方に運営が宣伝とか協力しますよ?って提案してチェルシーさんがそれを受ければ運営はラッキーだろうし、チェルシーさんとしても譲れない事があって協力を拒否するにしても、それは直接言った方が良いだろうし、どっちにしても、僕は一参加者に過ぎないから大事な事を決めるのは主催の人に丸投げしよう
「今後個人でイベントを開きたい方が出てきた際に、我々が協力する為のノウハウを得る為の試みとでも言うべきでしょうか。我々以外が行うイベントを知りたいのもありますので、もし他にも個人イベントを開きたいという方がいらっしゃった場合にはご一報いただけると幸いです」
「ノウハウを得るって運営というか、オーブさん個人がって事?」
「運営と言いましても、我々の様なAIに情報を蓄積して個別対応する事が出来る様にというのが正直な所です」
なるほどな。確かに個人でイベントを開きたいと言っても、その規模は闘技場を貸し切って1日戦闘三昧だ!みたいなイベントがあったり、草原で出てきたウサギとか皆で愛でようみたいなイベントだってあるかもしれない。それを宣伝無しで成功させるのはまず無理だ。そういったイベントを成功させる為に協力したいといった人だってイベントの存在を知らなければ協力も出来ない。だから運営のAIがその辺の個人のイベント情報を集めて他の人に宣伝する事で個人のイベントを成功させる事が出来るかもしれないからまずはその足掛かりとして今回のイベントに協力したいって事なのか
「そういう事なら多分大丈夫だと思いますが、念には念をでチェルシーさん宛ての手紙でも書きますか」
運営が今後色々発生するだろう個人イベントの為の足掛かりとして今回のイベントに協力したいという事。それが成功する事で他の人が個人イベントを組みやすくなる事。そういった理由で出来るだけ断らない方が良いみたいな内容を手紙で書いて、オーブさんに渡す
「多分この手紙を見せれば渋ってても受け入れてくれると思うので、チェルシーさんの所に向かう時はこれ使ってください」
そう言って3通の手紙を渡す
「なぜ3つなのでしょう?」
「最初の1枚目は出来れば受けてくださいみたいなお願い文。2通目は受けないと今後チェルシーさん責められるかもしれないっていう警告文。3通目は受けないと僕出ませんとかあまり良くない事が起きるかもしれないっていう脅迫文です。チェルシーさんの態度次第で渡す手紙を変えてみてください」
「ハチ様、普通はそういう事はしないと思いますが……」
「いやぁ、なんか一回やってみたかったんだよねぇ脅迫文を書くって!」
「そういう事でしたか……」
呆れられちゃったかな?




