帰宅したい
「ごあっ!?う、腕が……」
「うるさいんでちょっと寝ててください【レスト】」
腕の関節を外して明確な痛みを与えたので、これで多少はうるさくなくなるだろう。【レスト】も使ったし、起きたら腕も治っているはずだ
「よいしょっと。あ、別に殺した訳じゃないですよ?今は寝てるだけです」
「「「「……」」」」
皆めっちゃ警戒してるなぁ。まぁ、いきなり腕を10回や20回折っても大丈夫とか言って反応的に腕を折った様に見えるからそりゃあ警戒はするか。その後やられた側は寝てるし
「ん-と、じゃあ後……10秒待ってください」
とりあえず【レスト】の効果時間が終わるまで待ってもらうしかない
「っと!信用出来ないのは分かりますけど、無言で矢を撃ってくるのはちょっと……」
「は?」
僕の背後の木々の影から誰かが矢を撃ってきた。もしかしてここに居る人で全員じゃなかったのかな?いやまぁ、1人地面に倒れていて、他の人が僕を見てるけど距離を取っている所を見たら、仲間ならまず撃つ場面か
「おい、今見ないで矢をキャッチしたぞ……」
「なんだ今の……」
「どんな視界してんだアイツ……」
「独立部隊ももう終わりっす……」
あー、また変な方向に話が行ってしまう……
「うっ、うぅ……なんだ?さっき腕をやられたと思ったが、体が滅茶苦茶軽いぞ?」
「あ、やっと起きましたか。ほら、死んでないって言ったじゃないですか」
これで誤解が解けるな。一応他の人が確認しやすい様に少し下がって、待って居よう
「お前腕は!?」
「本当に生きてるんすか!」
「私が貸した金の事覚えてるわよね!」
「大丈夫だ。むしろ前よりも気分が良いくらいだ。それと金を貸したのは俺の方だろうが!別に記憶がどうこうなった訳じゃねぇぞ!」
「ちっ……」
誰かどさくさに紛れてお金の貸し借りをなかった事にしようとしてたな
「それよりも、ソイツ何者?」
「あぁ、俺らが探していた例の軍人の正体だ」
「なるほど納得、どうりで強い」
森の中から出てきたさっき僕に弓を撃ってきただろう相手も合流したけど、特にそれ以上会話も無く、スタスタと多分自分用のテントの中に戻っていく
「さぁ帰ろう!標的確保!もう帰ろう!」
あぁ、さっさと帰りたかったからその支度をしてたのね……
「まぁ、僕としても早いところナーセイブの街に行きたいんで、急ぐのは賛成です。さっきみたいに絡まれても困るんで、あっ別に連れて行ってもらうなら騎士団とか関係なく1人と一緒に行っても問題ないですよね?帰り支度が済んでるならさっさと行きましょうか」
「君、中々良い性格してる、気に入った、即時帰宅!定時帰宅!」
この騎士団と一緒に向かうのはなんだか時間が掛かりそうだし、その中でも早く帰りたいというこの人について行った方が早く行けそうだ
「おまっ!またかよ!」
「ほら皆急いで支度するわよ!」
「アイツ……しっかり軽い物だけ持ってやがる……」
多分団の持ち物を分担して運ぶみたいなルールでもあったんだろうけど、それを守りつつさっさと帰る為に軽い物を選んで帰っている。この人面白いなぁ
「じゃ、行きましょう。あ、良かったらその荷物持ちますよ」
「ん、君優秀。もっと気に入った」
そして、多分早く帰る為に持っただろう軽い袋入りの物を僕が代わりに持つ事でこの人が更に楽して帰れる様にアシストする
「あ、やべぇぞ!今回は追いつけるかどうか……」
「イレギュラーがヤバいな……」
「なんか今の俺、いつも以上に片付けが早い気がする!」
後ろで急いで片付け作業が始まってるけど、団長はあっちに居るし、ほんとこの独立部隊って自由だな
「君は、ついてこれるかな?」
「えぇ、まぁその位であれば」
「っ!?やるね。じゃあもっと早くしよう!」
急に走り出したので、僕も走って追いかける。なんだろう?追いかけっこかな?
「これで、どうかな!」
「まだ行けますね」
「じゃあ、これなら!」
「ちょっと厳しくなってきたかもしれません」
速度を上げていくので、僕も【オプティアップ AGI】とか使わざるを得ない。ただこれ以上となると流石に【リブラ】を使うしかないので、それを使っちゃうと急激に速度が上がっちゃうからちょっと危険だ
「なら、全力で行く!」
「あぁ、じゃあ僕も上げますね【リブラ DtoA】」
DEFを下げてAGIを上げる。これにより爆発的に僕も速度が上がり、少し前を走っていた早く帰りたいさんをぶち抜き、駆け抜ける
「なっ!?追いつけない!?」
「これは魔法の力です。貴方にも掛けますけど、気を付けてくださいね?【リブラ MtoA】」
多分走っている間にMINDを使う事はないと思うから下げて、AGIを上げる
「うわっ!?なんだこの力!?」
驚きながらも追い抜いた僕を追い抜き返す。この人結構足早いな?
「これならもっと早く帰れる!」
「喜んでいただけて何より」
2人で街道を駆け抜けて、ついに壁と街が見えて来た。が、なんだ?跳ね橋みたいなの閉じようとしてないか?
「あの、入口って入れるんですか?」
「跳ね橋、降ろしてもらわないと帰れない。ここで足止めは痛い……」
「それじゃ、飛び越えちゃいましょうか!」
「え?」
さっさと街の中に入っちゃおう!




