立ち位置
「じゃあ行くわよ!」
「いつでもどうぞ」
寸止めするって言うのなら、多分いつもの超接近戦を仕掛ければ即座にこの人を無力化出来るだろう。でも、まずは相手の実力を知りたい
「さぁ、これでどうかしら!」
細身のレイピアで攻撃してくる。レイピアで寸止めって割と分かりにくいけど、ちょっと大きめに躱しておくか。じゃないと僕はギリギリで避けられると分かっていても、寸止めしようとしている側は攻撃が当たると勘違いして攻撃の手を緩めてしまうだろう。とりあえず動きやすい場所に移動して、反撃のタイミングを待つか
「どうしたのかしら!避けるので精一杯?でも、私の攻撃を避けるんだから流石ね!」
「あ、どうも。そろそろ良いですかね?」
「へ?」
胴体付近へ、当てるつもりのない牽制の様な突きにこっちから突っ込む
「ちょ!?」
牽制に対して突っ込まれた事でビックリしたみたいで、引っ込めようとするその手を掴んで【ディザーム】でレイピアを奪う。そして、逆に相手の首筋に当てる
「こんな所でしょうか?今回は寸止めという事を最大限使わせていただきましたが」
「「「「「は?」」」」」
実戦だったらあの突っ込みに怯むというか、当てたらマズイなんて思わないからそのまま攻撃するだろうけど、さっきのは当てたらダメという心の隙を突いた行動だ。実戦ではまず使えない物だな
「あ、お返しします」
「ど、どうも……」
レイピアを返却し、相手の手を掴んでを立たせる
「ほぼ突きしか来ないとなると、的を絞るのも結構簡単なので、避けれました」
「武器無しでそれが出来るのが異常よ……」
構えとか目線でどこに攻撃しようとするか割と分かるんだけどなぁ……
「あの、言っちゃ悪いが、ソイツまだだいぶ手加減してそれだからな?実戦だと初撃を見切った時点でお前もう蹴りの一発は貰って即退場だぜ?」
ほう?団長さん意外とちゃんと見てたんだな。案外見逃すかなぁと思ってたけど、意外と見る目あるのかな
「そもそもの話、コイツはこんなに大きく避けねぇ。多分寸止めがあるから当たるかもと思わせない様に態々あんな大きな回避をしていた。コイツなら体を捻るだけで躱すぞ?」
なんか理解してもらえてる感じでちょっと嬉しいけど、他の人がさっきとまた同じような感じだとまだ時間掛かるんですけど……
「団長。さっき人攫いじゃなくてこの子が例の軍人だっていったかしら?」
「あぁ、実際の戦闘を見たし、話も聞いた。間違いないと俺の直感が叫んでいる」
「そうね。今の戦闘でも完全に力の差を理解したわ。一瞬で私が武器を奪われるなんて……先程は失礼したわ」
どれに関して謝っているのか分からないけど、別にこの人僕に謝る事とか無いと思うんだよな
「私達はナーセイブ騎士団……」
「の中の独立部隊っす」
独立部隊とはまたカッコいい肩書だなぁ?
「独立部隊って言っても体の良い何でも屋って所だがな……」
あぁ、「あっち人手が足りないから行って」とか「遠いから独立部隊が行って来て」みたいな感じの扱いか
「能力はあっても騎士団ってなるとちょっと人様に見せられる様な物ではないかなって……」
「ん-、あれですかね?騎士団の中で能力が尖ってる人達が集まった感じ?」
言葉を選ばずに言えば爪弾き者の寄せ集め集団って事になるんだろうけど、そういうのが団の中で一番強いとかあるよなぁ
「まぁそんな感じだな」
「とりあえず僕はどうします?貴方達に捕まった状態で大人しく行った方が良いですか?それとも全員屈服させて僕を担いで街に行きますか?」
前にキリエさんがゴブリンを屈服させて神輿みたいにされてたという事を思い出して、捕虜じゃないけど、大人しく連れていかれるのではなく、この人達に担いでもらって街に入って行けばなんとなく面白い事になりそうだなぁと思った。こういう独立部隊の人は街の人に好かれてるか嫌われてるか結構二極化が激しいタイプだと思うから、こういう事をして街に入ればどうなるかなぁ?
「おうおう、コイツ活きが良いなんて言葉で収まらねぇな?」
「俺達を屈服させて担がせるとか面白れぇな!」
「ここはこの子を連れ帰ればもう必要ないんでしょ?連れ帰るにしてもここも片付けなきゃいけないし、その荷物の上に乗せて帰るって考えれば問題はないんじゃないかしら?屈服云々は抜きにしても、私は別にどう連れていっても構わないわ」
なんだか割とオッケーみたいな雰囲気が出てるけど、それで良いのか独立部隊……
「いーや!俺は反対だね!」
「うわ……」
「またか……」
「もうこういうのも何回目かねぇ?」
「さっきのは寸止め前提だったんだろ?だったら今度は当たっても大丈夫な木剣でやりゃあ良いじゃねぇか!」
わぁ、ぶっ飛び理論……
「えっと、それじゃあ怪我すると思うんですけど……」
「ハッ!ビビってんのか?俺達は独立部隊だ。回復魔法を使える奴だってちゃんと居らぁ!」
「そうですか……」
「しゃ!覚悟しろ!お前のせいで俺は子猫ちゃん達と夜のにゃんにゃんタイムを……」
「あ、そういうのはあまり好きじゃないんで【イリュジオ】」
「ほぁっ!?」
木剣を持って突っ込んで来た髭面の男の正面まで走ってから【イリュジオ】で幻覚の僕を正面に飛ばし、間合いを誤認させ、振り下ろした男の手を足で蹴って木剣を落とし、そのまま背後を取って関節を極める
「いででででっ!?」
「あ、実は僕も回復魔法は使えるんですよ。骨が10回や20回折れても治しますから安心して折られてください」
と、折ると脅しながら腕の関節を外した




