国境警備
「これで、終わりですね。それでは行きましょうか」
最後のゾンビ達を片付け、3人の前に立つ
「へ?行くってどこに……」
「決まってるでしょう?貴方達のアジトですよ。私は貴方達を助けました。なら、何らかの見返りを求めても構いませんよね?」
ここで拗れても面倒だし、この人達の拠点に連れて行ってもらえれば情報なり、もし特に何もなかったとしても捕らえて街の警備をしている人にでも突き出せば信用を少し稼いで街に入りやすくなるかもしれない。どう転んでも、君たちは僕の役に立ってもらうよ?
「分かった。ついてこい。俺達のアジトに案内する」
「「良いんですか!?」」
手下が驚いている。となるとこれは本当に珍しい事なのかもしれないな
「ありがとうございます」
んー、なんだろう?なんかこの人達からは演技臭い何かを感じる。僕もロールプレイしているからなのか分からないけど、何か演じている雰囲気みたいなのをこの人達から感じ取った。今だって手下の2人はターンする時に、若干回れ右みたいな動きをしたような……気のせいかな?
「1つだけお聞きしても?」
「なんだ?」
こういう状況下であり得そうな事は……
「貴方達は元騎士か、現在秘密裏に動く為にこういう生活をしている騎士団の方達でしょうか?」
「「「なっ!?」」」
おっ!どっちか当たりっぽいぞ!
「はぁ、なんでバレちまうかな」
「秘密は出来るだけ知られない様にって話っスけど、この人に勝てる気しねぇっす!」
秘密作戦か何かの為に態々騎士が山賊みたいな事をしているのか?随分不思議な事をしている気がするけど
「もう良いか。そうだ。我々はナーセイブの街の騎士団だ」
わお、中々な面子だなぁ……と言うか騎士団がこれって大丈夫か?
「なぜそのような恰好を?」
「まぁ、あんたになら話しても問題ないだろう。国境線っていうのは中々気難しい所だ。騎士団所属の奴が勝手に国境を越えて何かしようものならそれは戦争行為に当たる可能性もある。だからこうして、盗賊の様な姿で活動している」
「あぁ、言い逃れの為ですか」
ガチガチの騎士の恰好をした者が国境付近で暴れるのと、山賊とか盗賊みたいなのが国境付近で暴れているとでは、国同士での緊張感みたいな物が全然違うのだろう。そこで隣の国を刺激しない様に態々盗賊みたいな恰好をしているって事か
「先日、シクサームに居る我らの仲間から1人異様な軍人を見かけたと連絡が入った。どこの軍かは分からないが、侵略される危険があるとの事でこうして監視網を作っていた訳だ。もしそういう奴を見かけたら情報提供してくれるなら報酬も出るぞ」
あれぇ?なんか聞いた事ある人な気がしますねぇ?
「……まぁ、色々大変でしょうけど、お疲れ様です」
さっきのシクサームに現れた軍人の話がこの警備に繋がってるって事は、この山賊スタイルな防衛網……さては僕のせいだな?
「我々もこの警戒網を維持する為に配給も怪しまれない様、食事を極力減らす為に自給自足状態に片足を突っ込んでいたからな。珍しいシロクマの姿を見て、売れば金になるのではないかと考えてしまったようだ。この警戒網が終われば大分楽になるんだけどな……」
あぁ……これどうしようかなぁ
「そうですね。情報があると言えばあるかもしれないですが……」
「本当か!?なんでもいい。教えてくれ!」
この生活が終わるかもしれないという情報を得られるならそりゃあ聞きたくもなるな
「そのシクサームに居た方からのその軍人の評価ってどういう評価ですか?敵性存在、危険分子もしくは特に危険視していないとか……」
自分で言っててあれだけど、こんだけ警戒網敷いてて危険視してないはないか
「情報通りならその軍人は帰って行ったらしいから既に警戒はしなくても良いとは思うんだが、何処かの国が暗躍しているかもしれないという情報は危険だ」
なるほどなぁ。あの時は僕はただ情報収集する際に僕の存在を隠す為に軍人にしたけど、それがまさかこんな所で繋がるとはなぁ……とりあえず誤解を解くかな
「確かにそうですね。でしたらその軍人の容姿とかの情報はありますか?」
「あまり、こういった事は話すべきではないと思うが、君は軍人について何か知ってそうだから特別に話すとしよう。さっき我々も守ってもらった事だしな」
単に僕自身の訓練の為に敵強化してたのにお礼を言ってくれるのか。これはマジで申し訳ないな……
「今の所どこの所属かは分かっていないが、黒い軍服に身を纏い、小柄ながらも凄まじい威圧感があり大人も怯む程だったとか、髪は黒に白いメッシュが入っていて、丁度今の君の様な髪だな。目の下にタトゥーが入っていたらしい。そうそう、今の君の顔にもある様、な……」
「おや、どうしましたか?」
「い、いやぁ?ちょっと嫌な予感がしてな?」
そう言えば顔に出てる紋章の一部とか、白髪のメッシュとかも何とかしておかないとこういう時にバレちゃうか。今後気を付けようかな
「もしかしてその軍人って……こんな姿じゃなかったか?」
折角なので目の前で変わってあげましょう。これで国境線の警備の仕事も終わりだね!




