勝機の目
「おっと、多分ここがそうかな?」
雪の中を歩き、ようやくそれっぽい洞窟の入口の様な所に出てきた。ボスエリアに繋がる白い霧があるけど、周りの雪がカモフラージュみたいになってちょっと見付けにくいな。でも、道らしい所を通って来たから多分ここがボスで正解だと思う
「ここを行けばいよいよボスか。ふぅ、それじゃあ早速準備しよう」
ご飯を食べたり、【レスト】で休んだりして完全にHPとMPの回復とステータスをアップさせておく。一応、4人にもご飯を食べさせたり【レスト】を掛けてみた(イドラは除く)けど、効いたかどうかは分からない
「皆、行けそう?」
「もちろん」
「行けるに決まってんだろ?」
「まぁ、大丈夫かなぁ」
「ん、ねむねむ~」
大丈夫かなぁ?まぁ、いつも通りと言えばいつも通りかな
「分かった。それじゃあ行ってみようか!」
霧を超えてついにボスエリアに侵入する
「おぉ、結構神秘的だな」
いわゆる氷の洞窟的な所の様だ。天井には鍾乳石の代わりに氷柱が結構ある。急に落ちてきたら結構危ないな……
「よし、抜けれた。さて、どんなボス……」
「アオォォォォン!」
「ほほぉ!でっかい狼か!相手にとって不足なし!」
短めの洞窟を抜けると、ボスとの戦闘エリアのドーム状の所に出てきた。今回のボスは巨大な白オオカミだ。雪の中で狼のボスか。これは中々楽しそうじゃないか!
「雰囲気的にははんぺん君とウカタマを足して2か3で割ったくらいだな」
体のサイズはウカタマで、見た目がはんぺん君みたいな感覚だ。でもこっちはもう容赦はしないと決めているので、全力で当たらせてもらう
「では早速お手並み拝見っと!」
開幕は指をクイクイとして、かかってこいと相手を挑発する。すると「その挑発乗ってやるよ」と言わんばかりに牙を剥き出しにしながらこちらに向かって突っ込んで来た。ん?よく見たら体の周りになんか気流みたいな物がある……
「よっと」
ちょっと危険を感じたので少し回避する距離を多めに取る
「おわっ!?距離取っておいて良かった……」
シロクマコスチュームの左手部分が少し範囲から避けるのに引っ掛かってしまったのだろう。表面がパリパリした氷に覆われている。ぐっと握ればすぐに砕けたけど、これはもしかして相性最悪か?
「接近戦を仕掛けたら凍りついちゃうとなると、これはマズイな……」
表面が凍っただけだからダメージは無かったけど、間違いなくアイツに届きうる一撃を喰らわせようとしたら僕の腕が丸ごと凍ってしまって持っていかれる可能性があるな……物理攻撃が通るとしてもそこまで届く攻撃手段がない。大剣とか槍があれば攻撃が届くんだろうか……
「くっ、歯痒いな」
あの体を纏う氷のバリアを何とか出来れば倒せるんだろうけど……
「おっとと、む?なんか光って……あっ!」
振るわれた尻尾を上体を逸らして躱した時にドームの天井に巨大な氷柱が光って見えた。なんであの氷柱が光って見えるのかと思ったけど、1つだけ心当たりがある。【戦略的勤勉】の効果で戦闘で有利なポジションとかアイテムが発見しやすいみたいな説明があったと思うけど、それを考えるとあの氷柱が戦闘を有利にする物……そういうことか!
「となると、必要になるのは……」
この戦闘でリーチがある武器を持ってる人はリーチギリギリでボスと戦う事も出来るし、遠距離の攻撃を持ってる人はあの氷柱に対して攻撃して落とす事も出来ると思う。でも、これだと片手剣とかのリーチが短い物理攻撃系の人がほぼ何も役割が無い。となると、絶対何か別の何かがあるはずだ。探せ……絶対に何かある。ここで短リーチ武器とか持ってる人の生きる道がどこかにある……
「どこだ、どこにある」
【戦略的勤勉】で何かないかもう一度探すんだ!
「ウォォォン!」
「「「ワンッ!」」」
急に吠えたボスオオカミに合わせてその辺の地面から3匹の白オオカミが飛び出して来た。おぉ、戦闘中に雑魚敵呼び出すのそれっぽいなぁ
「光が増えた……そういう事か!」
雑魚オオカミが増えて少し厳しいかと思ったけど、オオカミが増えた事で光が増えた。有利ポジションとして2か所の氷の柱っぽくなっている所が新しく光った
「へぇ、ずっと僕にビビッてたせいで知らなかったけど、こいつらそんな攻撃してくるのか」
【狂気圧】はどうやらこのボスエリアで効かないみたいで雑魚オオカミが普通に攻撃してくるけど、その攻撃方法が一旦潜ってこっちに近づいて来てから飛び出してくる攻撃を仕掛けて、またそのまま潜っていくという物だった。ボスの近寄っちゃいけないバリアに追加でこの雑魚オオカミの攻撃により回避するなら見る場所がとても多い
「でも、これが勝機を手繰り寄せる勝ち筋か!」
一見辛そうな場面でも、100%ひっくり返せないという事はない。相手を追い込む為に用意したその『場』に何かをもたらす為の『要因』が増えればその分、不確定な要素が増える。コインの表が出るか裏が出るかの賭けをしている最中にコインを増やせばチャンスは増える
「お前は僕から勝負の為のコインを奪って勝負させないのが一番の勝ち筋だったのに、態々袋からコインを追加してくれた。それじゃあ僕が勝つかお前が勝つか。運の絡んだ一勝負と行こうじゃないか」
カッコつけて言ってみたけど、このギャンブルを超えなきゃ、僕はまだ戦闘する為のフィールドにすら立てていないんだ




