剣を引き抜け
「あれ、どう思います?」
「剣……ですねぇ?」
「なんか刺さってますね。あれ、抜けるんでしょうか?」
2人とも天井に刺さっている剣が見えたみたいで、首をかしげている。あの剣は抜いても良い剣なんだろうか?
「うーん……」
「これは、サイズ的に片手剣くらいでしょうか?」
「ハチさんはどうお考えで?」
チェルシーさんが剣の周りを泳ぎながら映像を皆に届けている間にドクターがこっそり話しかけて来た。どうお考えで?と言われると……
「あの剣を抜くべきか否かですよね?正直な所、あの剣が刺さっているお陰でここにこの液体が漏れ出しているのか、あの剣が刺さっているからこの程度で収まっているのかみたいな状態かなと思ってます」
僕の予想だと、この呼吸が出来る液体は島の血液みたいな物なんじゃないかという予想だ。だからあの剣を抜いても良いかどうか分からない。人間の話だけど、太ももに鉄の棒が突き刺さって、動けない状態になってしまった人を助けようと周りの人が鉄の棒を抜いたは良いけど、鉄の棒で止まっていた血液が、抜かれた事で大量に出血。結果として状態を悪化させてしまったという事を聞く。そういう事を考えると、今は剣が刺さっているお陰であまり出血?せずに持っている状態なのかなぁと考えている。魔法だなんだがある世界だ。島に血が通っているなんて事があっても不思議ではないだろう
「あの剣を抜いちゃうと、ここに満ちている液体が更に漏れ出して島の生態系とか死ぬ可能性があるかなって」
「だとしたら、あの剣は抜けませんね……」
「いや、一応方法はあると思います」
あの剣を入手する方法はあるとは思う。ただ、その方法をするなら2人ともう一つ必要な物がある
「ドクター、映画は好きですか?」
「映画ですか?多少嗜む程度ですが……」
「じゃあ、アグレッシブな考古学者が大岩に追いかけられるの見た事あります?」
「あぁ、有名な……なるほど。そういう事ですか」
あのシーンを見た事あるのなら僕が言いたい事はなんとなく分かっただろう。問題は僕がこの作戦に縛りのせいで参加出来ない事かなぁ
「チェルシーさん」
「はーい!なんでしょう」
「チェルシーさん抜くのと刺すのどっちが良いですか?」
「えっ?」
「ん?」
何故か微妙な空気になってしまう。なんか変な事言ったかな?
「えっと、これからあの剣を入手しようかとドクターと話してたんですけど、想定としてあの剣を入手するには、あの剣と同じくらいのサイズの剣を代わりに刺す必要があると思ってるんですけど……」
「あ、あぁー!剣を抜くか、剣を刺すかどっちが良いって話ですか!なんだぁそういう事でしたかぁ!」
どんな勘違いをしていたのか分からないけど、とりあえずやりたい事は分かってもらえたみたいだ
「じゃ、じゃあ、私は剣を抜く方が良いです!」
「急に液体が噴き出す可能性もあるので、刺す方は私がやりましょう。ハチさん、もし筋力強化とか出来るのでしたらよろしくお願いいたします」
確かに、ドクターが剣を刺しこむ側で薬とか色々使って更に僕がSTRを強化すれば多分剣は差し込めるだろう
「ところで、剣って持ってます?」
「「……」」
流石に、持ってないよな……提案した僕も持ってないし、これはまた地上に戻らないとダメかな
「さっき、ハチさんが来る前に島に居たモンスターを倒したら剣がドロップしてたんですよね……」
「この片手剣なら突き刺すのに丁度良いかと」
僕が呼ばれる前に皆で集まっていた時に既に剣を入手していたのか。これはラッキーだな
「それじゃあやってみますか!」
剣があるなら早速やってみよう
「ものすごく力が漲ってくるのを感じます」
「よし、これでドクターに色々掛けたのでいつでも行けますね。チェルシーさんは準備良いですか?」
「はい、こっちもいつでもオッケーです」
「それじゃあ3カウントするので、チェルシーさんは剣を引き抜く、ドクターはその剣を空いた穴に差し替えるという事で、よろしくお願いします。じゃあ行きますよ」
3カウントで剣を引き抜き差し込む。一応ドクターは抜いたその場所にもう一度差し込むという事で精確な作業が必要だと思ったのでDEXも一応上げておいた。これでうまく行くはずだ
「3、2、1、今!」
変にタイミングをずらさない様にそのまま特に引っ張りもせずにカウントして作業をしてもらう。こういうので「ちょっと待って」とか言ってたら絶対ズレるからね
「「はい!」」
「お~、かなり良いタイミングだと思います。これは成功したんじゃないかな?」
引き抜きと刺し込みがほとんど同時に見えた。これなら島にも特に悪影響はないと思うんだけど……
「何か変化感じます?」
「いえ、とくには感じないですね。これ成功ですか?」
「剣もちゃんと刺さったままです。結構な抵抗があったのでまずいかとも思いましたが、割と深めに刺さったので問題は無いかと思います」
よしよし、これで剣は回収出来たと言っても良いかな
「この剣の所有者はハチさんで良いですか?」
「え?僕ですか?」
「実はですね。前々からやってみたい事がありまして、ハチさんにはそれに協力して欲しいので、その剣の所有者になって欲しいんです。それからの扱いに関してもちゃんとお話ししますから」
どうやらチェルシーさんにはチェルシーさんの考えがあるみたいだ




