告白
「い、いや……だがなぁ?」
「とりあえず聞くだけ聞いてあげましょう」
いや、なんでちょっと菖蒲さんピリピリしてるんです?
人の居ない少し奥まったところのトイレ前。そこまでやって来て遂に打ち明ける事にする
「ふぅ、よし!」
深呼吸をして心を落ち着かせる。何て言われるか分からないけどもうここまで来てやっぱやめたはやらないぞ!
「茨さんと菖蒲さん。いや、ロザリーさんとアイリスさん」
「「ん?」」
僕が呼び方を変えた事で頭に疑問符が浮かぶ2人
「僕、2人とゲーム内で既に会ってるんです」
「「既に会ってる?」」
疑問符が加速する2人
「エントリーナンバー815……それ、僕なんです」
「嘘……!!」「君が……?」
「2人に嫌な思いをさせてしまって本当にごめんなさい」
頭を下げて2人に謝る。ゲーム内の出来事とはいえ、現実で会って一緒に遊んだりしたから隠しているのはもう嫌だ
「1つ、聞かせてもらっても良い?」
菖蒲さんが聞いてくる
「はい」
「私との戦いの時、どうしてあんなやり方をしたの?」
心臓を抜いた時の事だろう
「あの時は出来る限り戦闘時間を短くしたくて、僕は装備の関係で相手の頭を踏みつける事で相手の防具を無視した攻撃が出来るんだ。だからあんなやり方をしました」
「そう……」
もう菖蒲さんとまともに話す事も無理だろうな……でもずっと秘密にするより良かったかもしれない
「私からも聞かせてくれ。決勝戦では何故自分から逃げた?」
茨さんからも追及される
「さっき、ホッケーで遊びましたよね?」
「あぁ」
「その時に説明したと思いますけど、予選2回戦くらいで僕も大分消耗してしまって脳の限界が近かったんです。後これはただの僕の心の弱さですが、感覚100%でプレイしていたので死ぬのが怖かったから逃げました」
そんな事は茨さんにとってはどうでも良い事だと思うけど
「なら何故棄権しなかったんだ?」
その質問はもっともだろう。体の不調があるなら棄権するのは普通の事だろう
「決勝戦が不戦勝で勝利。それが最初のイベントの最後だと誰が納得してくれるかなぁって……だから茨さんにはとても申し訳ない事をしてしまいました……」
「そうだったのか……」
僕が自分で負けに行った事については理解してもらえたみたいだ
「君が場外で負けた後、会場の人達は私の勝利を祝福してくれていた。だから影人君の予想通りの展開になっていたぞ」
「良かった……僕にブーイングされるのはいくらされても構いませんが、あの場でロザリーさんにブーイングされないようにするにはあの時の僕にはアレくらいしか思いつかなくて……」
「アレは私の為を思っての行動だった……という事だな?」
「はい。今はもう覚悟は決めているので殺したいと言うのであれば首を差し出す準備は出来てます」
ゲームの中だけどロザリーさんとアイリスさんに殺されるなら僕も死を受け入れられる
「影人君の覚悟は分かった。菖蒲はどうしたい?」
茨さんが菖蒲さんにどうしたいか聞く。こうなると僕がどうなるかは菖蒲さんの匙加減で決まる
「私は……」
今更ながらアイリスさんと戦った時の事を思い出す。禁じ手紛いの目潰し(のフリ)や髪を引っ張る等の行為をした上で頭を踏み、心臓を抜く……思い出しただけで極悪過ぎる。首を3つ4つ飛ばさないと怒りが収まるかどうか……
「私は、許しても良いかなって」
「え?」
許す?本気で言ってる?
「菖蒲、本当に良いのか?彼は覚悟しているらしいが?」
「お姉ちゃんも理由を聞いてもう許す気でしょ?妹なんだからお姉ちゃんの考えてる事くらい分かるよ」
「流石菖蒲だ。うんうん、お姉ちゃん嬉しいぞ?」
「え?僕許されたの?」
2人が笑ってるから本当に許されたんだろうか?
「許すけど一つだけ条件があります」
「はい、何でしょう」
ここで貴様の持っているアイテム全て差し出せとか言われてしまったらどうしよう
「私達とフレンドになる事で許します!」
「それだけで許してくれるんですか?」
「君は正直歪というか異端だからな。フレンドになっておけば少しは安心出来る」
あぁ、首輪的な?それなら納得かも
「えっと、今から家に帰ってアルターで……」
「おや?影人君は知らないのか?」
「え?何をです?」
フレンド関連のシステムとかメッセージくらいしか分からないぞ?
「スマホを登録しておけばスマホを使ってフレンドになる事が出来るんだよ」
「へぇ、そんなシステムがあったんですね?」
それは知らなかった
「まだ登録してないから一度家に帰って登録作業をしておかないと……」
「因みに連絡先からもフレンドになれるぞ」
「え?それってつまり……」
「はい、私のアドレス」
「これが私のアドレスだ」
とんでもない物貰ってしまった……これがクラスの男子にバレてみろ?僕はつるし上げられてもおかしくないぞ……?まぁスマホを覗かれる様な間柄の人とか居ないけど
「えっと、じゃあこれが僕のアドレスです……」
「やった!」
「良かったな?」
何だろう、何か釈然としないけど許してもらえたみたいだしいっか!