詐欺気質の寛容
「な、なぁあれ……」
「はっ!?空飛ぶ人……いや待て!なんか持ってる?」
「人?いや、死体……か?」
「おいおいおい!えらいこっちゃ!」
「待て待て、落ち着けよ。あれは翼が生えてるから天使やろ?だからいつもパトロールしてるジェリスさんだ。真ん中で持たれているのはきっと何か悪い事でもした奴が捕まっただけだろう。もう一人の天使は……もう一人?」
「ジェリスさんは知ってるけど、もう一人は知らねぇぞ!?」
「どこかにあの人は居ないか!報告した方が良いんじゃないか!?」
空島で大騒ぎになっている事も知らず、空の上では3人が空島を見ながら呑気に会話をしていた
「にしても、この島が個人の持ち物とは……」
「誰しも最初はそういう感想を持つ。だが、次第とこの島に居るとそんな些細な事はすぐ気にならなくなるさ」
「面白い方沢山居ますからね」
皆色んな方向で面白いからなぁ……
「島が浮く以上にとんでもない事をしでかす奴が居るからな」
「なるほど……」
どうしてこっちを見るんです?
「お、あそこ人が集まってるからあそこに降りましょう。新しい島の仲間を皆さんに紹介したいですし」
「ふぅ、なぜだか、人間相手なのにも関わらず少し緊張します」
「なら1つ教えてやろう。このハチ以上に凶悪なのはまずこの空島に居ない」
「それなら安心です!緊張とか無駄ですね!」
「ジェリスさん?安心させる為とはいえ、それは無いんじゃ?」
流石に僕より凶悪なのが居ないって言ったら僕がこの島で一番の極悪人みたいに……
「人の羽根を引きちぎったり、天使の輪を砕いたりする人より凶悪な人が居る訳無いでしょう?」
あまりアンナには聞こえない様に小声で言われた
「おっしゃる通りです……その節は誠に申し訳ございませんでした」
こんな行為を凶悪と言わずに何を凶悪と言うのかと言わんばかりの事を言われてしまった。全く言い逃れ出来ないっす
「よし、まずは初仕事の挨拶だ。行くぞ」
「はい先輩!」
良い先輩後輩だ。相変わらず死体みたいに運ばれてるけど、空島の広場に降りて皆に説明しよう
「あ、ハチさんだ!」
「なんだあの人だったのか」
「天使1人増えてるんだが……」
空島の広場に降り立つと色々声が聞こえてくる。さて、じゃあ紹介しようか
「どーもどーも、皆さん空島に新しい仲間です。こちらの天使アンナさん。空島でパトロールをしてくれているジェリスさんの後輩です。どうか仲良くしてあげてください」
「やぁ人間諸君。私はアンナだ!悪い行為を見つけたらビシバシ指導していくぞ。覚悟しろ!で良いんですよね先輩!」
「皆の者、こちらの後輩が迷惑をかけるかもしれないが、よろしく頼む」
挨拶と意気込みをサクッと言ってる。中々やるなぁ
「あの!質問良いですか!」
「ではそこの者」
広場に集まっていた人の内1人が手を挙げると、ジェリスさんがその人に当てる。あれ?そういう質問制なの?
「そちらの方、アンナさんはどうしてこちらに来たんでしょうか!」
「元々は先輩を取られて取り返す為にコイツを攫ったが、話をして私がこっちで働く事で話が纏まった!」
「盗られた先輩を取り返す……」
「百合の波動を感じる……」
「天使のエデンがここに生まれそう」
「もしかしてこれからそういうやり取りを街中で見られるのか?しかも無料で……」
途端にざわつく人達。うーん……これはまだギリ無罪かな
「はい!」
「ではそこの」
「アンナさんはジェリスさんの事をどう思ってますか!」
「大好きな先輩だ!」
「「「「これは……」」」」
「「「「来たか……」」」」
悪い人達では無いんだろうけど、なんだぁこの一体感は?
「はい、では質問はここで終了とさせてもらいます。ジェリスさん。アンナに空島を案内してあげて」
「あぁ、よし。では行こうアンナ」
「はい!」
手を繋いで空に上がる2人
「「「「尊い……」」」」
「お布施しなきゃ」
「感謝ァ……圧倒的感謝ァ!」
「アッ……アァァ……」
それなりの人数が語彙力を失ってるなぁ。まぁでもこれでアンナもある意味全うな天使になっただろうし、まぁ良いか
『称号【寛容】を入手』
『称号【寛容】が【詐欺気質の寛容】にランクアップしました』
なんだろう。僕って詐欺師って認識なの?
『【寛容】 様々な罪がある者を許す事で入手 相手を許すのは罰するよりも難しいです 敵からの被ダメージを10%カットする』
『【詐欺気質の寛容】 様々な罪がある者を許し、利用する事で入手 相手を許しましょう(利用しないとは言ってない) 敵からの被ダメージを10%カットして、相手に正常なステータス状況を認識出来なくさせる』
またなんか凄いの来たわ。もしかして、今この場に居る人達を許した(と言って良いか分からないけど)お陰で入手出来たのかな。今までも色々許して来たのがここで形になったのかな
「相手に正常なステータス状況を認識出来なくさせる……でもこれ書き方的に相手から一撃貰わないとこの称号の能力は発動しないかな。うーん……こっちもダメージを受ける覚悟が無いと能力が出ないって事は相手の攻撃を受け入れる寛容さが必要なのかなぁ……」
この称号を活かすなら本当に紙一重で避けるというか、紙で指切るくらいの浅い傷を貰うくらいにしないと僕自身の運動性能に関わってくるから運用滅茶苦茶難しいかも




