アンナ
「先輩!また一緒に働けますね!」
「はぁ、全く。こんな事になるとは……」
うーん、ジェリスさんには悪い事をしたかな
「あの、もしかしてダメでしたか?」
「いや、この子は思い込みが激しいというか、刷り込みというか……」
最初に仕事を教えたのがジェリスさんで、それについてくる犬系の後輩って所か
「バルミュラ様も申し訳ありません」
「なに、気にするな。どうしても手が足りなければその時は新たに天使を派遣してもらうさ」
天界も会社みたいだなぁ……
「そ奴は好きに使うといい。何もしていないハチを牢に入れたのだから、そのくらいの覚悟でなければな」
「あっ……誠に申し訳ありませんでしたぁ!」
見事なまでの土下座。羽まで地面につけているから多分しっかり反省していると思う
「それじゃあどうしましょうかねぇ?何をしてもらいましょうか」
「ひっ!どうか!どうか先輩と離れ離れだけは勘弁してください!」
「うーん、仕事しないならどっちにしても……むしろジェリスさんの仕事の邪魔になりそうだし離した方が……」
ジェリスさんは既に僕の性格を見抜いているというか、この話が何処に着地するのか見当がついているみたいで、若干にやけている
「お仕事頑張りますからぁ!」
「じゃ、僕の言う事は絶対ですが、よろしいですか?」
とりあえず、こっちは派遣先だし、話を聞いてもらえないと仕事にならないだろうからちょっと過剰な言い方をする
「うっ、Hな物でも何でもドンと来いです!」
「あ、別にそういうのじゃないんですよ。ただ、覚悟があるかどうかの確認がしたかっただけなんで。それじゃあ、ジェリスさんと一緒に空島のパトロールで良いですかね?」
「分かりました。暴走しない様に気を付けます」
危ない。なんか変な勘違いをしてた。一瞬皆の目がこっちを睨んでいた様な気がしたので、ノータイムで否定したから事無きを得たけど、今の怖いなぁ……
「バルミュラ様、この子の名前は?」
「天使は地上に向かう者は活動の為に名を持つが、そうでない者は名を使わないから今はない。ハチが付けてやると良い」
神様だし、テレパシー的な連絡手段とかで個別に連絡とかしてたら名前とか要らないのかもしれない。地上は名前が無いと色々面倒だから一応は付けるって事か
「そうですね。じゃあ、アンナとかどうでしょう?」
「へ?名前?アンナ?それがこれからの私の名前ですか?」
「ふむ、ではアンナよ。お前をハチの下に派遣する。良いな?」
「わ、分かりました!このアンナ。は、ハチさんの所に派遣されます!」
上手く話が纏まったな。結果として、アンナはジェリスさんと一緒に仕事が出来る様になったし、ジェリスさんはたまにバルミュラ様の下に来て仕事の手伝いをする事になった。もし、何か天界でやり残した事とかあるならついでに終わらせてきても良いけど、これでうまくいけば天界の情報を入手出来る様になった訳だ。それにバルミュラ様のその後も見る事が出来た。1イベントのキャラだったけど、なんか感慨深いな
「これ、ワシらついてくる必要なかったんじゃね?」
「そうですね。万が一に備えて暴力で解決する用意はあったんですが……」
ウカタマと飯綱さんには申し訳ない事をしたな。せっかく僕を心配してきてくれたのに
「いや、少し待って欲しい。ハチの地上での話が聞きたいが、ハチ本人ではない所から聞きたいので丁度良い。他の神から見て、ハチがどういう者なのか、お茶でもしながら語らおうではないか」
「おっ!そういう事ならゆっくり話させてもらいましょ!ハチの事を話すのも聞くのも面白いからな!」
「私もご一緒させていただきます」
バルミュラ様が機転を利かせてくれてウカタマと飯綱さんとお話するみたいだ。バルミュラ様ありがとう
「じゃ、アンナさんはジェリスさんから仕事の概要を聞いてね。僕はほぼノータッチだし、ジェリスさんがパトロールの主任だから」
「は、はい!」
空島のパトロールとか空を飛べる天使はかなり適性が高い。それが2人になればまずないけど、悪い事を見逃す事も少なくなるだろう
「それじゃあ帰りましょうか。あの2人はバルミュラ様と話してるみたいですし、置いて行ってもゲートで帰ってくるでしょうから問題ないでしょう」
「はい、帰りましょう」
ジェリスさんが僕を持ち上げようとする
「先輩!ちょっとお待ちください!」
「「ん?」」
「先輩が抱えるとなんか脳が破壊されます!なので、私が持ちます!ここに連れてくる時も私が抱えて来たんで!」
脳が破壊されるってなんだ……
「よいしょ」
「あ、僕こんな感じで運ばれてたんだ」
そこまで身長が変わらない相手にお姫様抱っこをされて空の彼方に連れていかれるって傍から見たらどうなんだろう
「いや、やはり重さを2人で分散した方が良いだろう。こっちの方は私が持とう」
そういって、上半身側をジェリスさんに持ち上げられる。うん、なんというか火曜とかのサスペンスで2人で死体を捨てる時みたいだ
「流石先輩!これなら楽ですね!」
「まぁ、2人が楽ならそれで良いけども……」
その後、空島に2人の天使が死体を持ってきたとちょっとした騒ぎになるとは気付きもしない天使2人組であった




