後輩
「よし、まずは情報収集だな」
牢屋の中だとしても、廊下とかは見渡せる。少しでも情報を得るチャンスだ
「ふむ、多分地下かな」
牢屋の中にも通路にも窓らしいものも無い。明かりも何やら魔石っぽいから酸素が薄くて息が苦しいとかそういう物はないけど、結構ジメジメしている。石レンガチックな物でくみ上げられているけど……多分これは壊せないな。空島の建物の不破壊系の扉とかとなんとなく似ている気がする。見張りとかは居ない
「うん、やっぱり逃げ出さない方が良いな」
廊下が左右に伸びているから多分選択をミスったら出られずに行き止まりに行ってしまうだろう。見回りが来るとは思うからその見回りがどっちに戻っていくかだけでも確認してから脱出した方が良いだろう
「でも誰がどうやって僕をここに連れて来たんだ?空島だから戦闘行為の類は出来ないと思うんだけど……いやまぁ、連れ去る行為は戦闘行為ではないと言えば無いか……」
戦う必要も無ければ、ただ運ぶだけなら正直ゲーム内の人間なら誰でも出来ると言っても過言ではない。僕に懸賞金でもかかってたのかな?
「やっと起きたか。ほら飯だ」
へぇ!?あの白い翼に頭の上に光る輪は……
「天使さん?」
「気安く話しかけるな」
「あ、すみません。いただきまーす」
食事を持ってきてくれたのはまさかの天使さん。貰ったパンはちょっと固いけど、噛み応えがあってこれはこれで良いかもしれない。でもまさか天使さんが看守とは……凄いな?話かけた時に翼がちょっと感情に連動して少し動いていたから作り物の翼とかではないのかもしれない
「ふぅ、ご馳走様でした。食事終わりました!」
一応、少しでも心証は良くしようと食事を食べ終えた後で宣言していつでも片付けても大丈夫だと教える。まぁ、どっちに持っていくか認識する事で逃げる時に行く方向を知るって事に繋がるけど
「ふん!喰うのだけは早いみたいだな?」
「あ、ありがとうございます」
「褒めてない!」
なんだか大分ツンツンしてるなぁ……普通の監視ならもう少し感情を押さえてると思うけど、この天使から話を聞けないかな
「あの……少しだけ質問しても良いですか?いきなりこんな所に連れてこられて僕もよくわかってないので」
「1つだけだ」
1つだけかぁ……さて、どう聞くべきかなぁ?
「じゃあ、ここはどこですか?ただの牢屋じゃなくて、どこにある牢屋なのか教えてください」
これでどこにある廊下なのか聞ければ多少は楽になるかな?
「ふん、良いだろう。ここは天界だ」
「はぇ~。ビックリ……」
まさかの天界に連れてこられたみたいだ。というか天界にも牢屋とかあるんだ
「先輩を連れて行ったお前は絶対に許さないからな!」
「先輩?あ、もしかして……」
天使で先輩とか呼ばれそうな人に1人だけ心当たりがありますねぇ!
「先輩が仕事を教えてくれて、天使として沢山仕事を頑張って来たのに、その先輩は急に天使をやめてしまった。お前が先輩をおかしくしたんだ!」
「……」
これは……ジェリスさんの後輩が暴走して僕を捕まえたって所だよな……聞いてた話では大分天界もブラック企業的な感じだったんだけど、まさかジェリスさんを連れ戻す気か?
「先輩はなぁ!ここの天使の中でもかなり凄かったんだぞ!」
「それは分かる。強いし、優しいし、綺麗だし、何より自分の仕事にはしっかり責任を持ってる人だ」
「お、おぅ……分かってるじゃないか」
空島のパトロールをやってくれているし、困った事とかあったらすぐに手助けとかしているみたいだからジェリスさんは正直、今の空島から出て行っちゃうのは困る
「君の先輩は確かしっかり神様に許可を貰ってここから出て行ったと思うんだけど……」
「そ、そうだけど!でも先輩だって辞めたくて辞めた訳じゃないはずだから復帰出来るとなったらすぐにでも復帰するはず……」
「うーん……僕の所でも出ていかれるのは困るんだけど」
「私は困らない!先輩が帰ってきてくれるなら私は嬉しい!」
天使も中々傲慢なのでは?
「えっと、ちょっと連絡しても良いかな?」
「どこにだ?」
「君の言う先輩に現状を話せば天界に戻るかどうか決めるんじゃないかなぁって、まさか先輩の意思を無視して自分だけ良ければいいなんてそんな傲慢な…悪魔みたいな事を天使のあなたが言うはずありませんよねぇ?」
「なっ!?」
天使ならここで悪魔の単語でも使っておけばある程度コントロール出来るだろう
「どうなんです?自分の思いだけで他人を全て踏み躙るとかそんな悪魔的な事は天使のあなたならしないですよねぇ?」
「ぐっ……」
ふっふっふ、ここで僕の連絡を許さない選択肢は既に無いぞ
「まぁ、連絡したら迎えに来てくれるかも……」
「何!早く連絡するんだ!」
多分この人はジェリスさんに会いたいんだろう。その口実が欲しかっただけなのかもしれないけど、これ呼んでも良いのかなぁ?ちょっと心配になって来た。とりあえずここは神様のウカタマ経由でジェリスさんを呼んで、一緒に来てもらえればそれなりに安全性を確保出来るかな




