怠惰の香睡
「んー……良い匂い」
「起きた!」
ホフマンさんから少し分けてもらっていたスパイスを使ったカレー。これがまた良い匂いがするんだよなぁ……やっぱり寝てる人でもこの匂いには抗えないな
「おはよう」
「ん、おはよー」
寝ぼけ眼でむくりと起き上がった……多分男の子。もう判断基準は若干男の子っぽい声という曖昧な物。見た目が綺麗と言うか可愛いからある意味眠り姫と言っても間違いではない雰囲気。さて、これはどうなるかな
「カレー食べる?一応辛さは少し抑えてあるから寝起きでも一応は食べやすいかな」
「ん、食べる」
スプーンを渡してカレーを食べさせる。一応甘口にしてあるから食べやすいはずだ
「ん、美味しい。寝起きにも優しい味。合格」
「おっ?本当?良かった。多分寝てて何も食べてなかったと思うけど、美味しいのなら作った甲斐があったよ。皆も食べる?一応僕が食べる分で用意しておいたんだけど」
「「「食べる」」」
やはりカレー。カレーは全てを解決する
「美味しい…」
「美味いけどもうちょい辛い方が喰いごたえがあるな」
「私はもう少し甘くても良いなぁ」
わぁ皆違う。見事にバラけたなぁ……
「やっぱり全員が納得出来るカレーは難しいな……」
カレーは美味しいけど、やっぱり個人の丁度良い物に合わせるというのがかなり難しい。本当に料理は奥深いな
「ん、美味しかった。それじゃあおやす……」
「おっと!もう一度寝ちゃう前にちょっと良いかな?眠たい所ごめんね?」
「ん、良いよ。そういえばお礼もしてなかった。ごちそーさま」
うん、呪いだなんだ言われてるけど、癖が強いだけで普通にお礼も出来る良い子や
「君、ここに封印されてるみたいだけど、良かったら僕達と一緒に来ないかい?まぁ、ただ寝たい君からしてみれば封印されてる方が楽なのかもしれないけど……」
「んー……」
やっぱり悩むよな。ここは地下深くだから寝るのにはかなり適している。雑音も無ければ光もこのベッドを照らす魔石みたいな物しかない。この状況を投げ打って僕についてくるというのは中々に捨てる物の方が多いか
「どうかな?」
「ん、お昼寝。させてくれるなら良い」
「お昼寝?」
「ん、程よい睡眠はずっと寝るより、軽い昼寝と夜しっかり寝る事。ここだとそれが出来ない」
「お、おう……」
睡眠への意識高い系だ。昼寝を挟むと仕事の効率が上がるみたいな事は言われてるけど、睡眠の質を上げる為にあえて起きる事も必要とは中々分かってるな
「という事は昼と夜は呼び出しても寝てるけど、それでも良いならって事かな?」
「ん、そう」
なるほど、モノ達みたいに呼び出すにしても、昼と夜は寝ていると。でもこれ凶具自体の効果とかは落ちたりはしないよね?それとも、逆に寝ている間は凶具の能力が上がる可能性もあるか?
「君の方からなんか僕の事を試験したりはしないの?」
「な、なによ?」
ストリの方をチラッと見ながら言うけど、あれは試験とはちょっと違うか。単純に僕に魅了を掛けようとして失敗しただけだし
「ううん、何でもないよ」
「ん、無理に起こそうとしなかったからそれで良い。合格」
「えぇ……それで良いの?」
まさかのカレー式起床法で起こしたのが良かったみたいだ
「ん、寝てる人を不快無く起こせるのは良い人。それで充分」
多分だけど、凶具の中でもトップクラスに優しい部類なのではないだろうか?これはかなり優しい条件だ。ある意味一番最初の凶具入門的な立ち位置なのでは?
「分かった。それじゃあこれからよろしく頼むよ。僕はハチ。君は……予想だけど怠惰関係の凶具かな?」
「ん、そう。怠惰の香睡」
「香水?」
そういうのも呪いのアイテムになったりするんだ。でも、装備する時はしっかり装備枠を使うんだろうな
「それじゃあ、これからよろしくね」
「ん」
『怠惰の香睡 を装備しました』
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怠惰の香睡
レアリティ カラミティ
HP -10%
MP +20%
DEF -10%
AGI -10%
MIND +20%
耐久度 破壊不可
特殊能力 睡生夢死の呪い(この装備は外す事が出来ない。空腹度の上限が25%マイナスされる。装備者は怠惰の状態異常になり、装備者に対し、攻撃を命中させた者にも怠惰の状態異常が低確率で発生する ※怠惰 全ステータス50%減少+アクティブスキル、魔法の使用が遅くなる)激情噴出(特定の行動をすると***が現れる)
何処かの頭がイカれた者により特殊な覚醒をした堕落の眠り香。何やら恐ろしい存在を感じる……永遠に堕落たい
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「ほうほう、とりあえず何とかなるかな」
うーん、なんだか呪いの効果と呪いがかみ合ってない様な……いや、さっき言ってたな。程よい睡眠は昼寝と夜寝る事って。健康的だなぁとは思ってたけど、その思いが出てきたのがこれか。怠惰なんて明らかにずっと寝てそうな感じかと思ったら、寝て、起きてを繰り返してるってある意味ブラック企業がいっぱいな世の中の事を考えると、ずっと寝ているより寝て起きてご飯だけ食べるみたいなニート的生活が怠惰って判定になるのかな?
「ん、これからよろしく」
「よろしく。そうだな……なら今日から君はイドラとかどうかな?」
「ん、イドラ。分かった」
僕が持ち主になったからか、イドラの髪が薄い水色の髪になった。色々あった候補の内、怠けてるをイメージした時に、車とかで止まってる時の「アイドリング」とかに使うアイドルと、4番目だからテトラを合わせた名前にした
「ん」
「ん?」
「ん」
「あー」
両手をこっちに向けて広げるイドラに一瞬何を要求されてるか分からなかったけど、動くの面倒だから背負って欲しいのジェスチャーだと思ったので背中にイドラを背負う。この感じ……やっぱり男だな!




