第四の凶具
「ふぅ、凄いな……」
チンッと到着を知らせるベルの音が聞こえた。さっきまであんなに火花を散らしていたのに、僕がエレベーターを降りると何事も無かったかの様にまた昇って行った。誰か上の人がボタンを押したんだろう
「ハチ」
「おっと、モノか。どうかした?」
急に出て来てビックリしたけど、何かあったのかな?
「この先、居る」
「居る……もしかして!」
呪いのアイテムが封印されていて、急に出てきたモノ。そしてこの先に居るという事はこれかなり期待できるのでは?
「流石にモンスターとかは居ないみたいだな。まぁ学園の地下にモンスターとか居たらそれは大問題だよな」
授業中に地下からモンスターが溢れて来たなんて事になったら大変だし
「一本道だけど、結構長めかな」
エレベーターで降りたけど、なんとなく一本道を進んで行くと更に下に向かっている気がする。階段は無く、落石とかいっぱいの多分下り道だ。ちょっと分かりにくいけども、一度止まってから自然に任せてみたら僕の足は歩みを進めたので、今は降っているのだろう。登山の帰り道で力を抜いて下山する時みたいだ
「どれだけ下に向かえば良いんだろう?」
10分くらい歩いてるけどまだ着かない。でも、特に何かの干渉を受けたとか感じないから普通に安全性を考慮してこれだけ離しているんだろう
「おいおい?長過ぎじゃねぇか?イライラすんなぁ?」
「まぁまぁ、でも何か来たら一緒にやる?」
「良いねぇ!たまには発散させろぉ!」
レジーも出て来て何か敵が来たら倒そうという会話をしつつ進んでいるから全然つまらないとは思わない
「私もこんな感じで封印されてたのかしら」
「うーん、多分こんな感じだったかも。ストリの所も正式な道を進んだらこのくらいあったのかなぁ?」
指輪が封印されていたあの場所も多分、大教会からの入口があったのかもしれないけど……まぁあの時はね?
「ホント、あの時はいきなり体バラバラにするぞって脅されて怖かったわぁ……」
「あの時はごめんって。なんか反抗的と言うか、試されてるみたいな感じだったからどうしてもイタズラしたくなっちゃって」
「ドッキリだとしてもあれはやり過ぎよ!」
「だよね。ごめん……」
「ちょ、そんなに深刻に……」
「ストリ?」
「ひゃい!」
ストリとの出会いの話をしていたらまたイタズラしたくなってワザと深刻そうに答えたらモノが乗って来てストリを冷たい声で責めた
「ぷっ」
「あ、レジーちょっと早いって……」
「だ、だってよ……ぷはっ」
「あー!またアンタ達やってくれたわね!」
レジーがなんとなく察して噴き出したのでイタズラ終了だ
「ストリは結構表情がコロコロ変わるから見ていて楽しいんだよ」
「そ、そんな事で誤魔化されないわよ!全くもう……」
誤魔化されないという割には腕を組んで怒っている風にしているけど、悪魔っぽい尻尾が結構くねくね動いている。まぁ、言わないでおくか
「私は?」
「モノはその逆でいつも表情があまり変わらない分、モノを見たら僕も冷静になれる。レジーは豪快だから何かした時に僕もスカッとするんだよなぁ」
ストリを褒めたからなのか、モノが自分はどうなんだと聞いて来た。だからモノを褒めるついでにレジーも褒めておいた
「なら、良かった」
「っしゃ!んじゃあ今度からもやる時が来たらやってやるぜ!」
よしよし、変に不機嫌になるとかじゃなくて良かった
「あ、もうそろそろじゃない?」
ストリが前を指差して言う。確かに、道の先にはなにやら台座っぽい物が見える。何が台座の上に置いてあるかは道の角度的に見えないけど、何かなぁ?
「とーちゃーく!っと……これは?」
途中から楽しみの為に、前は見ないで進んで台座に辿り着いたので何が乗っているのか見てみたら、台座の上には人が1人眠っていた
「あれまぁ……この子がそう?」
「「「うん」」」
3人に確認を取ってみたら3人ともそうだと言ったので、つまりこの子は凶具という事なのだろう
「すぅ……すぅ……」
「寝てるなぁ」
会話しようにも寝てたら会話も何も出来ない。これどうしようかなぁ
「無理に起こすのは良くないよな。僕もぐっすり寝てる時に叩き起こされたら不機嫌にはなるし」
別にこっちから会いに行くとか予定を組んでいた訳でもないし、休日でしっかり寝て休んている最中にお話しする為に起こしましたは人によってはブチギレしてもおかしくない
「何とか騒がない様に自然に起こすには……」
適当に棒状の糸と帯状の糸を組み合わせて作った簡易うちわを用意する
「これで、起きてくれるかな?」
風は当てない様に、でも匂いは届く様に小刻みにうちわを動かして城で作ってきた自作カレーの匂いを嗅がせる。別に臭い訳では無いし、起きれば食べても良い。起きなくて食べなかったら僕の胃に収まる事になるだけだし
「すぅ……すんすん…すぅ……すんすん」
おっ?なんだか匂いを嗅いでいるな?ほれほれ~風力アップじゃー!
「すんすん……すんすんすん……」
もう寝息が聞こえない。さぁ起きろ!




