はかる為に
「な、なんだこの魔法は……」
【バリアント細胞】は魔法じゃなくてスキルだけど、そんな事をわざわざ説明してやる義理も無い
「まずはあなたが何者か喋ってもらいましょうか。本当の事を話してるかウソの事を話してるか分からないんで、なんか嘘っぽいなと思ったら重さを増やします」
【バリアント細胞】の事を知りたがってるみたいだし、重さを加えるって事でもっと理解してもらおうか
「わ、私は、この学園の教頭……ぐあぁぁぁ!?」
「あ、すみません。もう一度言ってくれますか?あなたは何者ですか?」
「ほ、本当だ!証拠らしい証拠は出せないが、信じてくれ!」
ここまで必死に訴えるって頃は本当に教頭先生なのかも。まぁ、何を言い出しても最初の一回は圧を掛けるつもりだったからこれでいい。これで自分が変な事を言ったら苦しくなると理解してもらう所からだ
「まぁ良いでしょう。で、その教頭がなんで盗みなんかしてるんです?」
「これも……我が校の為。頼む。少しだけ軽くしてくれないか?肺が、潰れそうだ……」
「ならこうしますか。肺が苦しくなければ良いでしょう?」
肺が潰れそうという事なので、背中から足を離し、その代わりに両手足に先ほどよりも重量を増した状態で【ジェミニ】の僕と一緒に押さえる。これで逃げだそうなんて考えてたら両手足は粉砕する事になるだろう
「ぐあっ!?わ、分かった……すぅー、はぁー……」
肺が圧迫され辛かったのだろう。深呼吸しているし、さっきの圧の掛け方は中々に効果的だったのかもしれない
「最近、我が校は変わった……今までの伝統に則ったやり方で、沢山の生徒を指導してきた。が、今変わろうとしている」
ん?これはもしかして魔戦会の事を言っているのだろうか?元を正せば僕が原因だろうけど、実際に変えたのはルクレシアさんだ
「今は個々人の能力がどのくらい上がっているのか調べていた所だったんだ」
「そんな変態みたいな恰好で?」
「……人は、正義のこん棒を持った時に力を発揮する。あの子を守る為とか、こっちがやられたんだから正当にやり返す。変態をとっちめる。なんて時は特にな」
まぁ悪い奴は袋叩きなんてどっちが悪者か分からなくなるのはあるな。戦隊ヒーローとか正義じゃなきゃ怪人1人相手に5人で囲んで殴るだろうし。その正義を引き出す為にあえて分かりやすい悪という事で変態的な恰好をしているって事かな
「今の君もそうだろう?正義の為にやっているじゃないか」
「え?いや、別に正義の為じゃなくて調査を依頼されたからやってるだけですけど。こういうの逃げられたら面倒じゃないですか」
「……」
まだ手足とかを完全に潰した訳では無いから行き過ぎた正義という訳でもないだろう。生徒の能力を探る為にあえて攻撃されやすい恰好をしている。というのがこの人の言い分か
「では、逆に君の事を私が雇うという事も可能なのか?」
「まぁ出来る出来ないで言えば出来るでしょうけど、もう既に約束しちゃってるんで今からその依頼を裏切る様な真似は出来ませんね」
依頼を受けたからにはやる。これもある意味正義かな?突っ込まれたらその時考えれば良いか
「確かに、依頼をした相手を裏切るのは自分自身もその後が苦しむか。目的は話したし、解放してくれないか?」
「いやいや、何を言ってるんです?僕にとって重要なのは犯人が誰なのかを知るよりも、盗まれた物が何処に行ったかの方が重要なんです。どこ隠してるんです?」
下着を盗まれたらしい男子生徒のパンツとかその辺の物が何処にあるのかとか聞いてみる
「それに関しては今しっかり洗濯をしてコッソリ戻すつもりなんだ。今までの生徒達にもそうやって返して来た」
「つまり盗んだ物は後日返していると?」
「そうなんだ。あ、手足の感覚無くなって来た」
手足に荷重を掛けているからそっちの方がうっ血しそうになっているのかも
「文句が多いですねぇ?」
まぁまだ下りないんだけどね?
「どうだろう。ある程度は話したと思うが、まだ解放はしてもらえないだろうか」
「学園の強さがどの程度なのか調べる為に変態怪盗になって、追いかけてくる相手と戦って力量を計るって事を考えた訳ですね。まぁ……正体を明かさずに調べるのならそういう発想もあるか」
納得出来るかはおいといて、教頭と正面から戦うってなったら恐縮しちゃうけど、男の下着泥棒みたいな変態相手なら全力で勝負に行けるから理には適っている。まぁそれも教頭の方に絶対に負けないという自信が無ければ実行には移せないな。だって捕まったらそれこそ教頭としてはやっていけないくらい名誉に傷がつく諸刃の剣だ。それを実行に移せるこの人は中々凄い人だな
「まぁ、そういう事をしたいならまずは他の先生にも協力ないしは、事前にこういう事をして生徒の力量を計りたいとか伝えておくべきなのでは?敵をだますにはまず味方からとも言うとは思いますけど……」
「こんな事は秘密裏に行わねばならない。それに秘密と言うのは知っている人間が少なければ少ない程漏れない」
まぁ、先生経由でバレるのは一番避けたいか。ん?待てよ。という事はこれをダシにこの教頭先生しか知らない様な情報とか聞き出せるのでは?




