礼節
「では場所を変えよう。この場で戦うのはあの子達の迷惑になるだろうからな」
「良いでしょう。僕もあそこで授業を受けている人達の前で変態を捕まえても暴れてあられもない姿を生徒達が見る事になったら生徒達が可哀想ですから」
最後の抵抗みたいな感じで、ローブを脱ぐかもしれないから、ここは慎重に動きたい。誰も居ない教室みたいな所でもあれば、良いんだけどね
「それならば、今はあちらの第五教室が空いている」
「あるんだ……」
「ん?何か言ったかな?」
「いえ、道中逃げ出さない様に後ろからついて行きます。どうぞ先に進んでください」
この学園の事はそこまで詳しくないけど、第五教室が今空いてるらしい。多分、教室とは言ってるけど、戦う事を想定してるなら教卓とかが置いてるんじゃなくて、普通に戦闘出来る場所かな?
「ここだ」
「……」
通された部屋を見渡す。凡そ、10mから12mくらいの立方体の様な部屋、窓無し、入口はここ一か所のみ、仕掛けとしては防護用の結界が張られているようだ。他に仕掛けや抜け道は……角に1か所だけ床を開けていけそうな隠し通路があるな。となると、入口を施錠したら密室な様に見せかけてあの所だけ出られる訳か
「さて、君の実力は如何程かな?」
「なぜそんなにやる気に満ちているかは分かりませんが、あなたが僕に捕まったら終わりなのではないでしょうか?盗んだ物を返せば一応不問にする……のも良くないかなこの場合は。なので、僕があなたを捕まえたら人生終了の様な物だと思うのですが」
軽くけん制して、これで盗んだ物を返還してくれれば良いんだけど……一応入口の扉を施錠しておくか?
「ははは、この学園で私を捕まえるなど出来んよ」
もうここまで来たら関係者は確定だろう。それに絶対これはあの角の秘密の出口がある事を考慮して言ってる
「ではここにあなたを閉じ込めて他の先生を呼んできます。おとなしく待っていてもらいましょうか」
ここはあえてあの出口の事は触れずに背を向けたまま入口に向かう
「おや?さっきまであんなに威勢が良かったのに逃げるのかい?」
「……」
おっと、なんだぁ?
「どうやら口だけだったみたいだねぇ?さっきのもただ強く見せたかっただけかな?」
何が目的か分からないけど、これはちょっと他の先生を呼びに行く計画はやめようかな
「先生を呼ばなければ何も出来ないんじゃダメだねぇ?」
なんか滅茶苦茶煽ってくるな?これ先生を呼ばれると困るって事かな。まぁ、ピンピンしてる状態で先生の所に連れて行ってもなんか失敗しそうな気はするし、ここは一度しっかりとダメージを与えてからの方が良いかも
「分かりました。では1つ。良い事をお教えしましょう」
「ん?」
急に僕が喋りだしたから少し警戒してる変態だが、ちょっと遅かったねぇ?
「礼節が、人を、作る」
安全性と言うか、結界発動のトリガーなのか分からないけど、扉に3つ鍵が付いていたので、それを掛けていく。酒場での失礼な客と戦う英国紳士の映画のワンシーンを再現するかの如く、3つの鍵をかけ終えて相手に向き直る
「っ!【アストラルランス】」
星空の様な色合いの槍が空中に出て来て、それが僕に向かって放たれる。これは普通に避けておこう。なんとなくMPとか持っていかれそうな気がするし、少し体を倒して最小限の動きで躱す
「ほう?これを避けるか!ならば!【アストラルウェイブ】」
今度は範囲攻撃で横幅4mくらいの星空の波で攻撃してきた。この魔法良いな。盾を展開しながら前に進める様な物じゃん
「さぁ、来い!」
相手が待ち構えているという事はこの波を飛び越えればまたさっきのランスみたいなので撃ち落とすつもりなのだろう。越えなければ波にやられるし、左右に避けてもランスで撃たれる。となれば
「【イリュジオ】【ジェミニ】」
「なっ!?」
なら3方向から飛び出そう
「くっ!」
おー、何とか3人に向けてランスを放って止めるつもりだろうけど、地上の2人は問題なく回避出来るし、一応空中の一番隙だらけなのが【イリュジオ】で出した幻影なので、撃たれても何も痛くも痒くもない。左右から飛び出した後は相手に向かって迫るけど、しっかり左右で挟めるように別れてから距離を詰める
「中々やるじゃないか。【アストラルバースト】!」
今度は自分中心の範囲攻撃か。良い攻撃魔法いっぱい持ってるねぇ?羨ましいよ
「【ディスラプトマイン】」
まぁ、消させてもらうけど
「何!?」
「「魔法使いはしっかり体も鍛えているのかな?」」
「ぐほっ!?」
左右から頭部と腹部を狙った蹴りを【ジェミニ】で出した分身と共に放つ。もちろん頭部への蹴りは後頭部からで、腹部への蹴りは正面からのギロチンの様なキックだ
「まずは自分の罪の重さを知るところから」
蹴りを喰らって倒れた所に立ち上がれない様に背骨を押さえる様に踏みつける
「【バリアント細胞】起動」
「ぐあぁぁあああ!」
【バリアント細胞】を使って体を大きくして、背中に掛ける圧を更に上げていく。これが罪の重さ(物理)だ




