勝負の時
「さて……」
とりあえずローブは着てるけど、その下は何も着ていないって事はバスローブだけ羽織ってるみたいな状態だとして、ソイツを追い詰める為にも色々考えないといけない。まずはどこに現れるのかに関しては、正直100%ここという確証のある場所が無いので、そこはランダムになってしまうが、学園に現れる、男子限定、下着を狙うとなると、まぁ、そこそこ絞れそうな気はする
「今日ってこれからどこかで魔法の実践練習みたいなのあります?」
「それなら、攻撃系魔法の授業が1回残ってます!」
攻撃系魔法の授業……これなら出てくる可能性あるか?
「じゃあ、その授業がやってる最中に来るかな?」
「えっと、それならその攻撃系魔法の授業に出るかい?今ならまだ間に合うと思うけど……」
「いやいや、その授業に出ちゃったら、ソイツが現れた時に捕まえようと動いたら察知されて即座に逃げられちゃうでしょう?だからここは授業に出ちゃダメなんですよ」
もっともらしい理由を付けて攻撃魔法の授業に出ない様にする。だって攻撃魔法使えないし、そんな状態で授業に出ても怪しまれて敵が出てこない可能性が高い。一応相手目線に頑張って立ってみると、下着を盗むとかそういう事を考えるとするなら、盗む相手が居ない所が良い。となると、相手が攻撃魔法とか教室ではない所で授業している最中にそういった物を取りにいくのがセオリー?になるのか?
「いや、待てよ……恰好が恰好だからハスバさんみたいに何らかの変態なりの矜持みたいな物か謎のプライドとかあっても不思議じゃないな……」
バスローブの変態(仮)という情報が出回っているという事は、そういった姿を見られたい可能性がある。普通に考えて後ろめたい事をするのならそんな恰好をする事はまずないだろう。ただ、見られる事にも快感とかを得るみたいな、倒錯的な相手だった場合は、あえて姿を晒すことも充分に考えられる。ハスバさんならどうするかで脳内でバスローブ姿のハスバさんでシミュレートしてみたら攻撃呪文の授業をしている最中に客席みたいな所に現れて高笑いしながらローブを開くハスバさんの姿が想像出来た。こんな想像するんじゃなかった……
「もうここはその路線一点読みで良いか。授業するところが見えて、逆にそっちからもしっかり存在が確認出来る様な場所って何処かあります?」
「それなら構造的にこの辺かと……」
いつの間にかボサ髪先生が取り出していた学園の地図で怪しい所を指差していた
「変態のお立ち台としては申し分ない場所なんじゃないかな。分かりました。それじゃあ一応2人にもその変態がいつ出るか分からないんで、警備を手伝って欲しいんですけど……」
「非常に申し上げにくいんですが、私はその時間授業が……」
「私も、実は……」
「え?じゃあ今こんな話してる場合じゃないじゃないですか。授業の方が大事ですよ。それじゃあ僕は1人になっちゃいますが、頑張ってやってみます」
まぁ、変態とは色々縁があると言えば縁があるから僕1人の方が敵が出てくる可能性が上がるかもしれないし、対策とは言っても、1人の教師がそこまで時間を割ける訳も無い。ここは僕が頑張ろう
「【ファイヤーボール】」「【ストーンランス】」「【ウィンドシュート】」
色々な攻撃魔法が的に対して放たれていたり、正確性と素早さを鍛える為なのかクレー射撃みたいな、的が飛び出てそれを魔法で撃ち落とすみたいな事をやっている。まぁ、こういう事をしておけばいざそういう撃ち落とす場面とかが来た時にタイミングを合わせるとか出来るかもしれないな
「よし、それではそろそろ対戦形式でやってみようか。皆しっかり防具は着ているな?」
「「「「「はい」」」」」
いつぞやの攻撃に反応してヒットしたら光る防具を皆着ているから安全性は保たれつつ、戦闘と言うか、対戦の経験を詰む授業だ。これならお互いに高め合いつつ、安全に出来るから結構良いかもな
「ほうほう、これは中々良い勝負だ」
変態を探さなければならないが、この魔法での試合というのも結構見ていて楽しい物だ。連続的に魔法を撃って相手の退路を狭めて攻撃したり、自身に風魔法でもバフでも付与しているのか、軽やかな動きで敵の魔法攻撃を躱しながら逆に攻撃をしてみたり、見ごたえがあって意外と楽しい
「あの子たち。素晴らしいだろう?」
「えぇ、動きも結構無駄が少なくて良いと思います」
「ほう?君からみたらまだあの動きでも無駄があると?」
「確かに安全性を考慮するなら今の攻撃をジャンプで避けるのは良いと思いますが、次の一手の事とかを考えたら、地面スレスレで炎の玉をくぐって躱した方が良いですね」
空中機動が出来るなら上に逃げるのは全然アリだと思うけど、空中でジャンプとか落下位置を変化させる事が出来なければ上に逃げるのは悪手だしなぁ……
「ほう?それは随分と自信に溢れた一言だ」
「そうですね。まぁ、あそこで授業を受けている人達の物を盗むような人相手には負けないくらいの自信はありますよ」
後ろから話しかけられたから普通に話していたけど、このタイミングで誰か現れると言ったらもう1人しか居ない
「ほほう?これは久方ぶりに本気を出さなければならないみたいだ」
腕を組んで立っていたバスローブみたいな物を着た変態がそこに居た
 




